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AI時代のビル電気設備の新たな役割とは
スマートライト株式会社様 [東京都渋谷区]
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スマートライト株式会社
代表取締役
日本KNX協会 理事
KNX協会認定講師
第二種電気工事士
中畑 隆拓 様 -
スマートライト株式会社
照明制御エンジニア
橋本 祐樹 様
スマートビル※の普及とともに導入が進むと考えられるのが、AIと連動するビル設備機器です。
AI時代のビル設備機器とはどのようなものなのでしょうか。電気工事会社様が知っておくべきポイントについて、
照明設備とIT系をつなぐコンサルティング業務などを行うスマートライト株式会社様に、お話を伺いました。
※1 スマートビルについて詳しくはこちらの記事をご覧ください。
https://www2.panasonic.biz/jp/terasu/trend/trendnews/70/trend_1.html
照明をネットワークで制御して
これまでにない表現を可能にする
中畑様は、外資系メーカー等で20年間照明機器事業に従事した後、独学でプログラミングやネットワーク構築を学び、2011年にスマートライト株式会社を創業。
主に照明を中心とした電気設備とIT系を結びつけるコンサルティング業務を行っておられます。
「最近の顧客は新しい技術に精通しておられ、独自のアイデアをお持ちです。例えば、『顔認証で鍵を開け、照明と連動させたい』『屋外でのインスタレーションに独自のロジックで照明をコントロールできないか』といったご要望です。照明が単なる光源ではなく、より深い意味を持つように求められています。当社は照明、プログラミング、ネットワークの専門性を活かし、『新しいことをやりたいが、誰に頼んだらいいのかわからない』といった案件をお引き受けしています」と中畑様は語られます。
AI時代のビル電気設備とは
長年培った照明およびITに関する知識とノウハウで、他社にはない事業を展開されている中畑様は、これからのビルに必要な機能について次のように語られます。
「これからのビルの電気設備には、市場ニーズが多岐にわたる中で、スマートグリッドの導入、IoTとの統合、エネルギー管理システム、再生可能エネルギーの統合、メンテナンスの効率化、セキュリティの強化、そして規制や標準化に対しても適切に対応することが重要になります。これにより、AI時代の電気設備を効果的に活用し、持続可能なエネルギー管理を実現することが大切だと考えています」。
では、AI時代の電気設備とはどのようなものを指すのでしょうか。「これまで、ビルの設備は人が直接スイッチを使って操作したり、事前にスケジュールを設定して自動運用してきました。しかし、これからはAIがリアルタイムで判断し、設備操作を行う時代に入ります。
AIとIoTの違いを簡単に説明すると、人体に例えるなら、AIは脳でIoTは神経です。神経は“暑い寒い”や“暗い明るい”を感じ取り、従来は人がプログラムして“暑いからエアコンの温度を〇℃下げよう”“平日の昼間は照度を〇〇ルクスにしよう”と調整していました。しかし、AIが加わることで、AIが自動的に考えて調整してくれるため、人がプログラムする必要がなくなります」。
設備機器とAIの連動の最大のメリットは「最適化」であると中畑様は指摘されています。しかし、「最適化」の定義はビル設備に関わる立場によって異なります。ビル設備には、①利用者、②ビルオーナー、③管理者の三者が関与しています。
利用者の立場では、光熱費を抑えつつ快適性を維持したいと考えています。一方、ビルオーナーの立場では不動産価値を高めるために、維持管理を最適化したいと望んでいます。たとえば、エアコンを頻繁にオンオフすると機器の寿命が縮むため、温度や風力の微調整によって快適性をコントロールすることがその一例です。
管理者の立場では、将来のスマートグリッドの運用を見据え、消費エネルギーをビル単位でコントロールすることを求めています。このように、各立場によって最適化のアプローチは異なり、それぞれのニーズに応じた全体的な調整が必要です。
それぞれの立場がある中で、今後非常に重要になるのが設備制御の標準プロトコルです。標準プロトコルが確立されることで、異なるシステムや機器間の相互運用性が向上し、効率的なエネルギー管理や快適性の向上が期待できます。関係者が共通の基盤を持つことで、最適化の実現がよりスムーズになるでしょう。
従来のビル電気設備では、メーカーが独自のシステムを提供し、そのメーカーの製品だけをコントロールしていました。しかし近年、ゼネコンや設計者は幅広い設備機器を使用し、より新しいことに挑戦する傾向にあります。その結果、メーカーを超えて制御できるシステムが求められ選ばれるようになっています。そこで不可欠になるのが、BACnet、KNX、DALI、Modbusなどのデジタルでオープンな通信プロトコル(通信の規約・手順)の存在です。
BACnet、KNX、DALI、Modbusにはそれぞれ特徴があり、対応する設備や得意とする規模が異なります(下表参照)。
電気設備はIoTに加えてAIも連携し、新しい役割へ
電気設備は、IoTとAIの連携により、従来の役割から大きく進化しています。IoT技術によって、さまざまな電気設備機器がインターネットに接続され、リアルタイムでデータを収集・分析することが可能になります。このデータが蓄積されそれを基に、AIが学習を行い、最適な運用方法やメンテナンスのタイミングを提案することで、保全や予防措置における効率性が向上します。
あるいは、スマートグリッド技術を活用し接続することで、電力の需給バランスをリアルタイムで調整し、エネルギーの無駄を削減することができます。また、AIが故障予測を行うことで、事前にメンテナンスを実施し、ダウンタイムを最小限に抑えることも可能です。
このように、電気設備はIoTとAIの融合により、よりスマートで持続可能なエネルギー管理が可能となり実現されることで、新しい役割を果たすことが期待されています。これにより、私たちの生活はより便利で快適になり、環境への負荷も軽減されるでしょう。
照明もデジタルコミュニケーションの未来へ
パナソニックはDALI対応の照明器具を提供しており、AIとの連動が新たな可能性を開きます。AI単独ではビル内の照明機器の点灯状況や明るさを把握することは難しいですが、DALIシステムを利用することで、これらの情報を容易に取得し、メーカーの枠を超えてコントロールすることが可能になります。
DALIでは、ボックス制御盤にDALI信号線とLANケーブルを接続してネットワークを構築します。例えば、ワンフロアにボックス制御盤が10面あると、それぞれがネットワークでつながり、さらに上下の階とも縦関係で接続されます。このようなネットワーク構造を理解することが、電気工事会社様にとって重要になります。
電気工事会社様がDALIの据え付け工事だけでなく、配線工事や設定まで行えるようになれば、他社との差別化が図れる可能性があります。工事価格にも付加価値が加わり、新たなビジネスモデルを構築するチャンスが生まれるでしょう。
さらに、DALIをはじめとした共通プロトコルにAIが加わることで、照明器具とAIが連携する時代が近づいています。労働人口の減少に伴い、AIがスイッチの操作や点灯状況のチェックを代行することが当たり前になるでしょう。これにより、より人的な介在が少ない効率的でスマートな照明管理が実現することが期待されます。 共通プロトコルが当たり前の時代が近づいている今、中畑様は電気工事会社様が学ぶべきことは「ネットワーク」であると明言されています。近い将来、ケーブルのみを接続できる電気工事会社様と、DALI信号線も配線できる電気工事会社様では、後者が選ばれる時代になるでしょう。
従来の照明工事では、ビル内の特定エリアや時間帯のオンオフを制御することが主でしたが、今後はその日の天候に応じてオンオフしたり、地域の電力需要に基づいて照度を調整する指示がエリアから発信されることも考えられます。このような照明制御は、すべてネットワークを通じて個々の照明器具に指令を与えることで実現可能です。
電気工事業界もネットワークを学び、
AI時代に備えることが必須の時代に
電気工事会社様へのメッセージとして、中畑様は次のように力説されます。「30年ほど前にインターネットが登場したとき、『インターネットにつながらないパソコンでも困らない』という論調が一部にはありました。しかし、今やインターネットにつながらないパソコンなんて論外です。AIもそれと同じです。しかも遠い未来ではなく、近い未来の話です。電気工事会社の皆様には、ぜひAIを自社の事業に活用していただきたいです。『どうすればAIを活用できるのか』を日々考え続けた会社とお取り組みをしなかった会社では、10年後に明らかな違いが出るはずです。
DALIはその第一歩です。DALIも最終的にAIとつながることで、状態監視や機器制御が現場でも遠隔でもできるようになり、照明工事の景色が変わると思います」と、熱く語ってくださいました。
情報リンク
日本KNX協会へのお問い合わせはこちら
https://knx.or.jp/
スマートライト株式会社へのお問い合わせはこちら
https://smartlight.co.jp/
DALI学習キット(初級編)
https://smartlight.co.jp/product/dali-beginner-kit/
YouTubeで動画解説を配信しています。ぜひご視聴ください。
https://www.youtube.com/c/SmartlightJp
パナソニックではDALI-2対応照明器具をご用意しています
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個別制御
個別にアドレスを割り当てることができるため、器具の個別制御が可能。
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国際基準
国際規格(IEC 62386)で規定されているため、さまざまなメーカーが製品を販売しており汎用性が高い。
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双方向通信
双方向通信により点灯状態などの動作確認が可能。
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オープン規格
オープンプロトコルのため、DALI-2適合の製品は、メーカーを問わず接続可能。
詳しくはWEBサイトをご覧ください。
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