エンドエフェクタとは?種類・選び方・活用方法を解説
製造業界や物流業界などでは、効率化を図るためロボットの導入が一般化しています。そのロボットの一部として欠かせない部品に、エンドエフェクタがあります。
エンドエフェクタとは、ロボットの先端に取り付けられる装置や部品のことです。
実際に、ロボットによる作業のさらなる効率化を図るため、エンドエフェクタの導入を検討されている企業様もいるのではないでしょうか。
エンドエフェクタを導入する際は、種類別の特徴や選ぶ際のポイントを理解することが重要です。
この記事では、エンドエフェクタの概要や種類、用途別稼働台数、選定基準、導入のメリット、活用事例について解説します。
エンドエフェクタとは?仕組み・用途・種類を分かりやすく解説
冒頭でもお伝えしたように、エンドエフェクタとはロボットや自動化システムのアーム先端に取り付ける装置や部品のことです。※1※2※3
エンドエフェクタは、物をつかむ、切る、測定するなど、さまざまな操作を行うために使用されます。※1※2※3 ロボットアームが組み立て作業を行う場合、エンドエフェクタは部品をつかんで正確な位置に配置する役割を果たします。
エンドエフェクタの種類は、主に把持ハンド・吸着ハンド・特化型ロボットハンドの3つです。
把持(はじ)ハンド
把持ハンドとは、人の指のように物をつかむ役割を持つエンドエフェクタです。※1※2※3※4※5 主にグリッパーとして機能し、開閉する指のような構造になっています。さまざまな形状やサイズの物をしっかりとつかむことができるため、精密な作業や搬送作業に利用されます。※4
把持ハンドには、「電動式」と「エア式」があります。
電動式
電動式の把持ハンドは、モーターを使って開閉動作を行います。精密な制御が可能で、高速かつ安定した把持力を持つのが特長です。位置決めが正確で速度の調整も容易なため、複雑な作業にも対応できます。※5
また、電動式は空気圧や油圧に依存せず、メンテナンスが少なくて済む点も利点です。
エア式
エア式の把持ハンドは、空気圧で開閉動作を行います。シンプルな構造で、比較的低コストで導入が可能です。
空気圧を調整することで把持力を柔軟に変更でき、さまざまな形状の物体に対応できます。※5
吸着ハンド
吸着ハンドは、吸引力を使って物体を把持するエンドエフェクタです。主に吸盤を使用し、真空や磁力を利用して物体を吸着します。※3※5 表面が平滑であれば多様な形状の物体をつかむことができ、柔軟性に優れているという特長があります。
吸着ハンドには、「真空式」と「磁力式」の2種類があります。
真空式
真空式の吸着ハンドは、吸盤を通じて物体を吸引・把持します。把持ハンドではつかむのが難しいガラスや金属板の取り扱いに優れています。※5
また、真空を利用することで吸着・放出をスムーズに繰り返すことができるため、精密な操作が可能です。※5
磁力式
磁力式の吸着ハンドは、強力な磁石を利用して金属製の物体を吸着します。物体に多少の凹凸があってもつかめるのが特徴です。※5
空気圧や真空装置が不要なためエネルギー効率がよく、低コストで運用できる点も魅力といえます。
特化型ロボットハンド
特化型ロボットハンドは、特定の対象物や作業に最適化された専用タイプのエンドエフェクタです。※5 ネジ締めや配線、ハンダ付けなど、一般的な把持・吸着では難しい作業を自動化できる特徴があります。※6
用途に応じて構造が大きく異なり、高精度な動作や特殊素材への対応が可能です。
特化型ロボットハンドの代表的な種類には、「ハンドチェンジャー式」「ジャミング効果式」の2種類があります。
ハンドチェンジャー式
ハンドチェンジャー式は、ロボットの先端に装着するエンドエフェクタです。※7 通常は1台のロボットができる作業に限りがありますが、ハンドチェンジャー式を利用することで複数の作業を担うことができます。
特に自動型のモデルでは、ロボットが自動でツールチェンジできるため、人手を介さず連続作業が可能です。※7 人の手を介さないことで安全性や信頼性も高まるため、ロボット導入による生産性をより高められるといえます。
ジャミング効果式
ジャミング効果式ハンドは、柔らかい袋の中に細かい粒子を詰めた構造を持つロボットの手で、物体に押し当てた後に袋の中の空気を抜くことで粒子が密着し、袋全体が硬くなって物体をしっかり掴むことができます。空気を戻すと再び柔らかくなり、形を変えることができるため、複雑な形状や壊れやすいもの、食品のような柔らかい素材でも優しく把持することが可能です。モーターなどの複雑な機構を使わずに、柔軟性と適応性を両立できるこの方式は、従来のロボットハンドでは難しかった作業にも対応できる新しい技術として注目されています。※8※9
エンドエフェクタの選定基準|重要な6つのポイント
エンドエフェクタにはさまざまな種類があるため、どれを活用するか悩むこともあるかもしれません。ここでは、主にハンドリング用途のエンドエフェクタの選定基準をご紹介しますので、ぜひご活用ください。
把持力・吸着力
エンドエフェクタを選ぶ際は、まず、把持力・吸着力を確認することが重要です。
把持力が不足していると対象物を安定して保持できず、作業中に落下やズレが発生する可能性があります。※13 一方で、過剰な把持力は対象物を損傷させるリスクが考えられます。※13
対象物の重量や形状、材質を考慮して、適切な把持力を持つエンドエフェクタを選ぶことが重要です。対象物が滑りやすい部品の場合は高い把持力を持つエンドエフェクタを選ぶのがおすすめです。
吸着力も同様に、不足していると対象物を安定して保持できず、作業の精度や安全性が低下します。反対に、吸着力が強すぎても対象物に跡がついてしまう可能性があります。※1
把持速度
把持が速いほど、作業効率や生産性の向上につながります。しかし、対象物がズレたり衝撃によって損傷したりするリスクもあるため、適切なバランスが求められます。※2
高速の組立作業では素早い把持が求められますが、精密な作業では安定性を優先する傾向があります。対象物の重量や材質、作業環境、ロボットの動作速度との整合性を考慮して、「適度な速度で制御できるかどうか」を軸に選定することが重要です。
適切な把持速度のエンドエフェクタを選ぶことで、作業の正確性とスピードを両立が可能です。
可搬重量・ストローク
可搬重量とは、エンドエフェクタが安全に持ち上げられる最大重量のことです。可搬重量を超えると正しく作動しなかったり、ロボットアーム全体の性能が低下したりする可能性があります。対象物の重量に応じたエンドエフェクタを選定することが重要です。
ストロークとは、把持ハンドのエンドエフェクタが開閉できる範囲のことです。ストロークが不足すると対象物をつかめず、過剰だと無駄な動作が発生するため、精度やタクトに影響を及ぼします。
これらの点から、エンドエフェクタを選ぶ際は扱う対象物の大きさに適したストロークかどうかも必ず確認することが重要です。
適切な可搬重量とストロークを持つエンドエフェクタを選ぶことで、安全かつ効率的な作業が可能になります。
汎用性
汎用性の高いエンドエフェクタは、さまざまな形状や材質の対象物に対応でき、異なる複数の作業にも柔軟に適用できます。製造ライン変更や多品種生産にも柔軟に対応できるため、設備投資や運用コストの削減につながります。
この点からエンドエフェクタを導入する際は、特定の作業に適しているだけでなく、使用用途によっては複数の対象物に対応可能な汎用性の高いモデルを選ぶことが重要です。
扱う対象物の形状や材質に適した機能があり、調整が簡単にできるエンドエフェクタを選べば、製造ラインの変更にもスムーズに対応できるため、長期的な運用効率が向上します。※13
安全性
エンドエフェクタを選ぶ際は、シャットダウン機能や衝突防止機能など、安全を確保する機能が組み込まれているかどうかを確認することも重要です。
なぜなら、安全性の高いエンドエフェクタを使用することで、作業者の負傷リスクを低減すると同時に、設備の故障や製品の損傷を防ぐことができるからです。※1
例をあげると、作業者がロボットの作業スペースに入ると自動でロボットの稼働が減速・停止する機能があれば、衝突による事故を防げます。
メンテナンス性
エンドエフェクタを選ぶ際は、メンテナンス性も考慮することをおすすめします。なぜなら、定期的な点検や部品交換が容易なエンドエフェクタを選ぶことで、ダウンタイムを最小限に抑え、生産性を維持しやすくなるからです。
特に頻繁に稼働する製造ラインでは、素早く分解・清掃できる構造のエンドエフェクタが役立ちます。
エンドエフェクタ導入のメリットと導入効果を解説
では、エンドエフェクタを導入することには、どのようなメリットがあるのでしょうか。以下で代表的な3つのメリットを解説します。
品質が向上する
エンドエフェクタは精密な操作が可能なため、導入することで人の手による誤差やばらつきを減少させることができ、製品の均一性を向上させることが可能となります。※5
特に、正確な把持・配置が求められる組立作業や検査工程では、品質管理の省力化が期待できます。
生産性が向上する
ロボットによる作業の自動化は、人間の作業者では難しい高スピードの連続作業を実現します。※5 これによりサイクルタイムの短縮が可能となり、全体的な生産量の向上が期待できます。
また、人件費の削減にもつながります。
作業リスクの低減
危険を伴う作業や重量物の取り扱い、高温や有害物質の接触といったリスクの高い工程をロボットに担わせることで、作業者の安全性が高まり、労働災害の発生リスクを大幅に低減できます。※5
人が直接関与する必要がなくなることで、身体的負担の軽減にもつながります。
エンドエフェクタの活用事例|作業精度向上と省人化の成功例
エンドエフェクタを導入したことで、作業の自動化による作業精度向上と省人化に成功した事例をご紹介します。
例えば、自動車部品製造の企業は部品の取り扱いを自動化したことで、製造ラインの生産能力が20%向上しました。※14
食品加工を行う企業は、エンドエフェクタを導入したことで手作業の完全自動化を遂げ、生産量が30%増加しました。※14
このほか、電子部品の製造を行っている企業は、エンドエフェクタを導入したことで手作業では難しかった部品の取り扱いが可能となり、量産化に成功しています。※14
組立(ネジ締め・ボルト締め)もロボットで対応可能
ロボットを活用した組立作業では、エンドエフェクタによる精密なネジ締めやボルト締めが可能です。従来の手作業では、締め付けのばらつきや作業者の負担が課題となっていましたが、ロボットを導入することで均一な品質と安定した生産が実現できます。
自動車部品の組立ラインでは、高精度な電動トルクレンチを搭載したエンドエフェクタが採用され、ネジ締めの精度が向上し、不良率が低減したという事例があります。
Panasonicの『ロボテックインパクト EYFCA1WC060N』®は、ネジ締め・ボルト締めができるロボット用のインパクトレンチです。
インパクト式駆動で低反力なため、ロボットへの負荷が少ないのが特長です(※1)。これによりロボットが停止しにくく、作業中断によるタクトタイム低下リスクを軽減できます。
また、オイルレスなためオイル交換が不要で、メンテナンスコストを抑えることもできます。連続作業でもオイルのオーバーヒートがなく、連続作業に強いという特長もあります(※2)。
組立作業の自動化を検討している企業にとって、ロボットの導入は必要不可欠です。エンドエフェクタを活用することで、ネジ締め・ボルト締めなどの組立作業を自動化でき、品質や作業効率の向上を実現させやすくなります。
ロボット導入を検討している企業、産業用協働ロボットを導入されている企業様は、ぜひ『ロボテックインパクト』 EYFCA1WC060Nの活用をご検討ください。
※1・・・当社基準に基づく理論値によりダイレクトドライブ式ドライバーと比較した場合
※2・・・当社オイルパルスドライバーEZFLC1Aと比較した場合
まとめ
この記事では、エンドエフェクタの種類や選定基準、導入のメリット、エンドエフェクタの活用事例について以下の内容を解説しました。
- ●エンドエフェクタの種類には、大きく分けて「把持ハンド」「吸着ハンド」「特化型ロボットハンド」がある
- ●エンドエフェクタの選定基準は「把持力・吸着力」「把持速度」「可搬重量・ストローク」「汎用性」「安全性」「メンテナンス性」の6つ
- ●エンドエフェクタを導入することで、品質・生産性そして安全性の向上が期待できる
エンドエフェクタは、ロボットのアーム先端に取り付ける装置や部品のことです。手作業よりも正確で、作業の効率化や品質向上に貢献します。
今回ご紹介した選定ポイントを参考に、自社に適したエンドエフェクタをご選定ください。
『Panasonic』では電気・建築設備として、充電スクリュードライバーや充電インパクト、ACスクリュードライバーなどの工場向け電動工具を多数取り揃えております。
現場でのさまざまな作業ニーズに対応すると同時に、製品品質の安定を支え、生産性の向上に貢献します。この機会にぜひご活用ください。
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参照文献
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- ロボットハンド(エンドエフェクタ)とは? -種類ごとの特徴と選定時のポイントを解説-|SERENDIP
- エンドエフェクタとは?種類やおすすめ主要メーカー25選|FA Products
- エンドエフェクタとは?基本を解説。ロボットと連携し自動化効果を高めるポイントも|OMRON
- 把持ハンドとは?産業用ロボットのハンドツールを解説|株式会社JRC
- ロボットハンドの種類とは?各種類の特徴や選定ポイント、メリット|BRIDGESTONE
- エアーアクチュエーター型ロボットハンドの種類や仕組み|BRIDGESTONE
- ロボットのチェンジャーってなに?|COSMEK
- ロボットハンドとは?種類、構成要素、選定方法、活用事例を解説|BRIDGESTONE
- ジャミング転移および吸着による把持手法の選択が可能な汎用グリッパの開発|松原 廉・出村 公成
- ロボットテクノロジーが変える物流2030・2040|MRI
- 2023年度ロボット産業・技術振興に関する調査研究報告書|一般社団法人 日本機械工業連合会
- ロボットハンド、ロボットアームの選定方法・選定基準|FAロボット.com
- エンドエフェクタ|JET-Global
- エンドエフェクターの設計と製造で効率的な作業を実現する方法|newji







