ネジかじりの原因と防止策|有効な対策のポイント
ねじ山の溶着が原因で、ネジの取り外しや締め直しが難しくなる「ネジかじり」。発生すると修理に手間と時間がかかるため、事前に防ぐことが重要です。
では、ネジかじりはどのような原因で発生し、どうすれば防止できるのでしょうか。
この記事では、ネジかじりの原因と防止策について解説します。
ネジかじりの発生メカニズム|5つの主な原因とは?
ネジかじりが発生する原因には、主に「摩擦熱」「熱膨張」「切粉の付着」「トルク過多」「素材」の5つがあります。
摩擦熱
ネジを締める際に発生する「摩擦熱」は、ネジかじりの主な原因の一つです。金属の表面が擦れることで摩擦熱が生じると、ネジが膨張しネジ山が密着してしまうとネジ山溶着につながるため、ネジかじりが発生します。※1※2
熱膨張
「熱膨張」とは、熱によって物体が膨らむ現象です。ネジの素材によって熱膨張率が異なり、締め付け時におねじとめねじの隙間がなくなると、ネジかじりが発生します。※3
切粉の付着
ネジ締めの際に発生する切粉も、ネジかじりの原因のひとつです。切粉が付着したままネジを締めることで、ネジかじりが発生します。※2※4
粉状の切粉や螺旋(らせん)状の長めの切粉など、さまざまな形状がありますが、いずれにせよ取り除かなければネジかじりの発生が懸念されます。※5
回転数過多
ネジを締める際に、締付速度(回転数)が過度に高いと、ねじ山同士の摩擦が急激に増加し、摩擦熱が発生しやすくなります。この摩擦熱が原因で、ネジかじり(焼き付き)が発生することがあります。※1※4
特に、ネジに不具合がありスムーズに締め付けられない場合や、電動工具による高速回転で締め付け作業を行っている場合は、摩擦熱の蓄積が起こりやすく、かじりのリスクが高まるため注意が必要です。
かじりやすいネジの素材は「ステンレス鋼」
ネジかじりを引き起こしやすいネジの素材は、ステンレス鋼といわれています。※1 これは、ステンレス鋼に「摩擦係数が大きい(鉄鋼の2倍)」「熱伝導率が小さい(鉄鋼の1/3)」「熱膨張率が大きい(鉄鋼の2倍)」という特徴があるからです。※1※2※3
滑りにくい上に熱を帯びやすく、その熱によって膨らむことから、ほかの素材に比べてネジかじりが起きやすくなります。
ネジかじりの環境要因|材質以外に影響するポイントとは?
ネジかじりは環境要因によって発生することもあります。※4※6
- ●直射日光があたっているような高温環境で作業を行っている
- ●ネジ山にバリがある、ネジ山が欠けているなど、ネジ部の加工品質が悪い
- ●電動工具を用いて高速回転でネジの締め付け作業を行っている
- ●タップと下穴の位置が合っていないまま、無理やりネジを締めている
- ●ネジを斜め締めしている など
高温環境ではネジが溶着しやすくなります。※6 ネジ部の加工品質が悪いと、締め付け時に過剰なトルクがかかり、ネジかじりの原因になります。
このように、ネジの素材以外にもネジかじりが発生する原因はあるため、併せて押さえておくことをおすすめします。
ネジかじりの防止策|5つの方法
ネジかじりを防ぐには、潤滑剤の塗布や表面処理されたネジの使用、適切なトルク管理が有効です。以下で詳しく解説します。
潤滑剤を塗布する
ネジかじりの原因である摩擦熱・熱膨張を回避するためには、過度な摩擦を防ぐ必要があります。そこでおすすめしたい防止策が「潤滑剤の塗布」です。※1※2※4※6
潤滑剤によって摩擦が抑えられ、熱が発生しづらくなり、ネジ山の溶着や熱膨張を防ぎやすくなります。これにより、ネジかじりも防止することが可能です。
かじり防止の表面処理を施したネジを使用する
ネジと一言でいっても種類は豊富にあり、なかにはかじり防止の表面処理を施したネジもあります。※2※6 締め付け時の摩擦とそれによる熱を抑えられるため、ネジかじりを未然に防ぐことが可能となります。
ネジ締めを慎重に行う
ネジかじりの主な原因のひとつは、締付け時の回転数が過度に高くなることで発生する摩擦熱です。これを回避するには、ネジ締めを慎重に行い、適切な締付速度で作業することが重要です。※6
ネジが入りにくい場合は、無理に締め付けず、一度抜いてネジ自身の状態を確認しましょう。ねじ山の損傷や異物の付着などが見られる場合は、ネジを交換することで、かじりのリスクを低減できます。
また、ネジ締めを行う前にネジ部を十分に掃除することも重要です。※6切粉やゴミが付着していると、それが摩擦の増加やかじりの原因となることがあります。ネジ部に異物がないことを確認してから、締め付け作業を行いましょう。
回転数管理を徹底する
また、電動工具で高速回転のまま締め付けを行うと、ねじ山同士の摩擦が増加し、摩擦熱によってネジかじりが発生する可能性があるため、締付け速度(回転数)の制御も重要です。さらに、かじり抑制機能を備えた電動工具を使用することで、効率的かつ品質の高い締め付け作業を実現できます。
かじり抑制機能の例
電動工具に備えられているかじり抑制・かじり検知機能には、例えば以下の3つがあります。
▼かじり抑制機能の例
| 機能 | 特徴 |
|---|---|
| ソフトスタート | ソフトスタートによって精密なネジ締めを実現し、斜め締めやかじりを低減する機能 |
| 斜め締め低減機能 | 最初に約360度逆回転させることでネジを誘い込み、ねじ山の噛み込みを低減する機能 |
これらの機能は、Panasonicの一部工場向け電動工具に搭載しています。
まとめ
この記事では、ネジかじりの原因と防止策について以下の内容を解説しました。
- ●主な原因は、摩擦熱・熱膨張・切粉などの付着・回転数過多・素材の5つ
- ●作業環境や使用するネジなどの環境要因が原因となることもある
- ●防止策は潤滑剤の塗布や表面処理を施したネジの使用、回転数管理の徹底など
ネジかじりが発生するとネジが動かなくなり、取り外しや締め直しが困難になります。無理に取り外そうとするとネジの折損や工具の破損につながる恐れがあり、最悪の場合は締め付け対象が使用不能になることもあります。
ネジかじりを防ぐには、原因を理解し、適切な対策を講じることが重要です。今回ご紹介した内容を参考に、ネジかじりを未然に防ぐための作業環境を整備していただければ幸いです。
『Panasonic』では電気・建築設備として、充電スクリュードライバーや充電インパクト、ACスクリュードライバーなどの工場向け電動工具を多数取り揃えております。
現場でのさまざまな作業ニーズに対応すると同時に、製品品質の安定を支え、生産性の向上に貢献します。この機会にぜひご活用ください。







