更新日 2025年9月2日 バージョン1

【トルク管理の基礎】なぜ必要?手法や課題、解決策まで徹底解説 【トルク管理の基礎】なぜ必要?手法や課題、解決策まで徹底解説

製造業の締め付け作業では、オーバートルク(過剰締付)やトルク不足(締付不足)がよく問題になります。その原因は「アナログなトルク管理」にある可能性があります。

この記事では、トルク管理の概要や必要性を解説しながら、一般的なトルク管理の方法とその課題、課題解決の手段についてご紹介します。

トルク管理とは

ボルトやネジには「基準締付トルク値」が設定されています。これは、ボルトやネジが不具合なく正しく機能するために必ず守っていただかねばならないトルク値です。
トルク管理とは、ボルトやネジを基準締付トルク値で適切に締め付けるために、トルク値を管理することです。※1※2

トルク管理を徹底すれば、オーバートルクやトルク不足による部品の破損や落下、それに伴う事故を防げます。※1※2 また、不適切な締め付けが発生しても、早い段階で修正しやすくなります。
つまり、トルク管理は製品の品質を担保するため、そして作業者の安全を守るために必要な作業といえます。

トルク管理はなぜ必要なのか

トルク管理が必要な理由は「オーバートルクとトルク不足によるトラブルを回避するため」です。

オーバートルク(過剰締付)によるトラブル

オーバートルク(過剰締付)は、いわば「強すぎる力で締め付けている状態」です。※3 過度な力によってボルトや部品が変形・破損する恐れがあり、そうなるとボルトの軸力が失われて緩みにつながります。※4※5 ボルトの緩みは異音や振動を誘発する可能性があり、最悪の場合は製品の品質に悪影響を及ぼしかねません。
また、オーバートルクの場合、対象物に過度な負荷がかかり耐久性が損なわれる可能性もあります。※5 つまり、製品寿命の短縮が懸念されるということです。

トルク管理を徹底すれば、適切なトルク値で締め付け作業を行えるようになるため、上述したオーバートルクによるトラブルを防止できます。

トルク不足(締付不足)によるトラブル

トルク不足(締付不足)はボルトの緩みを引き起こし、部品の落下や重大な事故につながる可能性があります。※1※2 また、製品の品質が低下し、不良発生の原因にもなります。

トルク管理を徹底すればボルトを適切なトルク値で締め付けられるため、ボルトが緩む可能性が低くなり、上述したようなトラブルが起きにくくなります。

具体的な事例

トルク管理を行わない、または不十分な場合に起こるトラブルには、例えば「締付不良による出荷後のトラブル」が挙げられます。
具体的には、自動車整備工場でタイヤ交換時のボルト締めが不十分だったことにより、車両走行中にタイヤが脱輪するという深刻な事例があります。※1※4

このほか「ボルトやネジの緩みによる機械の誤作動や故障」も挙げられます。
不十分なトルク管理により機械稼働中にボルトが落下し、その影響で機械の誤作動・故障が発生していつもどおりの生産性を担保できなかったといったケースがその一例です。※4

このようなトラブルを回避するには、正確なトルク管理が必要不可欠です。

一般的なトルク管理の方法とその課題

トルク管理は一般的にトルクレンチを用いて行いますが、従来のこの方法にはいくつかの課題もあります。

トルクレンチを用いた管理

トルクレンチとは、作業者が「今ボルトやネジをどれだけのトルク値で締め付けているか」を確認できる工具です。※1 なかには、あらかじめ設定したトルク値に達しているかどうかを確認できるタイプもあります。※5

例えば「直読式」は、トルクレンチに表示されている目盛りや数値でトルク値を確認できるタイプです。※6 基準締付トルク値に対して今どれだけのトルク値で締め付けているのかを目視できるため、力加減を調整しながら適切に作業を行えます。
一方「シグナル式」は、あらかじめトルク値を設定でき、それを超えた場合は音や振動で通知してくれるタイプです。※6 通知にあわせて締め付け作業を行うことで、オーバートルクやトルク不足を防ぎやすくなります。

トルクレンチがあれば、基準締付トルク値にあわせてボルトやネジの締め付け作業を行えるため、トルク管理には欠かせないアイテムといえます。

トルクの手動管理の主な課題

上述したトルクレンチを用いた管理は、いわば「トルクの手動管理」です。これには課題もあり、例えば目視確認が中心な点が挙げられます。
トルク値のチェックを作業者自身で行う必要があり、それがよいか悪いかの判断は作業者の経験や感覚に左右されます。そのため、場合によっては締付不良を見過ごすことにつながる可能性があります。

ヒューマンエラーによるオーバートルクやトルク不足も課題です。例えば、直読式トルクレンチを使用している場合、目視確認を怠ると締め付け不良が発生する可能性があります。※6※7
「シグナル式」の場合、音で通知するタイプは騒音環境では聞き取りづらく、オーバートルクやトルク不足を引き起こす可能性があります。※6※7 また、締め付けたトルク値が確認できないため、正確な管理が難しくなります。

さらに、基準締付トルク値や実際のトルク値を管理するにあたって、チェックシートへの記入や表計算ソフトへの入力などの手間が発生します。※4 記入漏れ・記入ミスなどが発生することも考えられ、その場合は業務に支障をきたす可能性があります。

課題解決にはトルク測定機器と自動記録システムの活用がおすすめ

手動トルク管理の課題は、デジタル化することで解決へ多く導くことが可能です。

デジタルトルクレンチ

デジタルトルクレンチとは、トルク値を液晶画面にデジタルで表示するトルクレンチのことです。※8 実際に締め付けた際のトルク値を把握できるため、作業者の経験や感覚に依存することなく、正確なトルク管理を実現できます。
また、リアルタイムでトルク値を確認できるためオーバートルクやトルク不足に気づきやすく、締付不良を未然に防げます。

トルク管理システム(自動化)

トルク管理システムとは、無線通信機能を持つトルクレンチと連携し、トルク値や締め付け本数をはじめとする締め付けデータを管理するシステムのことです。※9 トルク値を自動で記録できるため、記入漏れ・記入ミスなどのヒューマンエラーを低減できます。また、計測データを一括管理しエビデンスとして残せるため、検査表や報告書の作成および品質の確認がスムースに行えます。

締付トルクを記録できるPanasonic EYFMH1の特長と導入メリット

Panasonicの『充電インパクトレンチ トレースインパクト EYFMH1(2023年4月発売、以下 EYFMH1)』は、ボルト締め時に締付トルクを計測し、締付データとして管理ができるツールです。

デジタルトルクレンチとしてのリアルタイム表示機能

EYFMH1には、トルク値を測るセンサーが搭載されています。そのため、実際に締め付けた際のトルク値をリアルタイムで確認でき、オーバートルクやトルク不足を未然に防ぐことが可能です。
また、磁歪式センサーにより高精度の締め付けを実現するため、作業者の経験や感覚に左右されることなく安定した締め付け作業を行えます。

トルク管理システムとしての自動記録とエビデンス活用

EYFMH1は、無線受信機とつなぐことで、トルク値や作業ログなどのデータが自動で記録されます。記録されたデータはWebブラウザで閲覧できるため、手間なく品質確認や検査表・報告書の作成ができます。また、データはエビデンスとして残せるため、顧客からの問い合わせや記録提出要望があった際にも迅速に対応することが可能です。
既存の生産ラインや管理システムと連携しやすく、スムースに導入できる点も魅力といえます。

まとめ

この記事では、トルク管理の概要や必要性、一般的な方法・課題、課題解決の手段について以下の内容を解説しました。

  • ●トルク管理とは、ボルトやネジを基準締付トルク値で締め付けられるよう、トルク値を管理すること
  • ●トルク管理は、オーバートルクとトルク不足によるトラブルを回避するために必要
  • ●トルク管理は一般的にトルクレンチを用いて行うが、この方法には「締付不良につながる恐れがある」「データ入力の手間がかかる」などの課題がある
  • ●トルク管理の課題を解決するには、トルク測定機器と自動記録システムの活用がおすすめ

トルク管理は、オーバートルクやトルク不足によるトラブルを未然に防ぐために欠かせない重要な作業です。従来どおりトルクレンチで行うことも可能ですが、その方法には「締付不良につながる恐れがある」「データ入力の手間がかかる」などの課題があるため、デジタル化することをおすすめします。

Panasonicの充電インパクトレンチ トレースインパクト EYFMH1は、締付結果トルクを記録できるアイテムです。
デジタルトルクレンチのようにリアルタイムでトルク値を確認できるため、オーバートルクやトルク不足を防ぐことができます。また、トルク管理システムとしてトルク値や作業ログなどのデータが自動で記録されるため、品質確認や検査表・報告書の作成も容易です。

この機会にEYFMH1を導入し、効率的で正確なトルク管理を実現してみてはいかがでしょうか。

Panasonic』では電気・建築設備として、充電スクリュードライバーや充電インパクト、ACスクリュードライバーなどの工場向け電動工具を多数取り揃えております。
現場でのさまざまな作業ニーズに対応すると同時に、製品品質の安定を支え、生産性の向上に貢献します。この機会にぜひご活用ください。

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