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Special Column | LIGHTING STYLE Vol.7 | P.L.A.M. | 照明設計サポート製品を探す

LIGHTING STYLE Vol.7

Special Column

LEDによって実現した 中之島の歴史の「継承と進化」

宍道 学氏

宍道 学氏

株式会社朝日新聞社
大阪中之島新ビル建設 担当補佐 兼 室長補佐

1962年島根県生まれ。1985年東京大学法学部卒業。
株式会社朝日新聞社入社。
大阪・東京編集局、経営戦略室などを経て、2007年4月から中之島新ビルプロジェクトに携わる。

中之島で128年間の歴史

朝日新聞社が中之島に来たのは創刊6年目の1885年で、今から128年前です。宇和島藩の蔵屋敷を買い取って移って来て以来、中之島にこだわり続け、その間に建てた建築も、非常に高い評価をいただいてきました。今回の中之島フェスティバルタワー建設プロジェクトは、フェスティバルホールの建て替えと新聞社の移転、さらに2万坪のオフィスを構えたビルをつくるのがミッションで、こうした歴史の重みに加え、事業としての重みも含めて大変重い任務でした。これまでのビルに込められた思いを改めて勉強し、自分に何ができるのか悩みながらの6年でもありました。
その結果、朝日新聞ビルと大阪朝日ビルの丸みを帯びたデザインや、グレー系のオフィスビルが多い中之島にあって異彩を放つベージュ系の色使いといった朝日建築のDNAとも言える特徴は継承しながら、フェスティバルホールが持つ伝統と風格を表現しつつ、親しみを持っていただけるやさしいイメージのある建物を目指すことにしました。
中之島の風景として親しんでいただいたものは継承し、性能面など進化すべきところは思い切って進化させること。「継承と進化」というキーワードは、フェスティバルホールだけでなく、建物全体のコンセプトにもなっています。

中之島フェスティバルタワー

陰影をつくり、意匠を受け継ぐ

旧ホールもエントランスからホワイエにかけての照明は暗めでした。しかし、明るさが足りないのではなく、陰影を感じられる空間の中にカーペットの赤があることによって、荘厳さを感じられるようになっており、そういうよさはぜひ継承してほしいと設計者に依頼しました。
エントランスホワイエのシャンデリアは旧ホールのデザインを継承しました。以前よく来ていただいていた方には、大階段を上がってホールに足を踏み入れた瞬間、旧ホールと同じ雰囲気を感じ取っていただけると期待しています。旧ホールの閉館前には照度測定をして各場所の数値を記録し、それを参考にして照明計画をつくりました。また、単純に暗いだけではなく、品格や伝統を伝えたいという意図を踏まえ、光が影の中に存在感を示すというコンセプトで全体を計画してもらいました。それをベースに実現へ向けて進み、最終的には計画段階のパースよりも実物の方がよくできたのではないかと思うほど、満足できるものになりました。

共に創ったシャンデリア

ホワイエに合う照明とはどのようなものか、日建設計さんやパナソニックさんとは長期にわたり議論を重ねました。その中で、高い吹き抜け天井を生かして星空を見上げたような雰囲気にできないかというアイデアが生まれたのです。しかし、それからが大変でした。照明を吊るワイヤーを細くしたり、照明の球を小さくしたり、何度もモックアップをつくり直してもらい、満足できるまで完成度を高めていきました。
このように新しいフェスティバルホールの2種類のシャンデリアには相当なこだわりを持って、日建設計さん、パナソニックさんと共につくり上げてきたと思っています。また、特注シャンデリアはLEDだからこそできたことも多いですね。たとえば天井高18メートルのメインホワイエに吊るすシャンデリアは、メンテナンスを考えるとLEDしかありえませんでした。建築家にとってはLEDの小ささや発熱が少ない点も魅力だと思います。そうした特徴によって照明デザインの自由度が高まり、新たな照明を考える創造力を刺激してくれるのではないでしょうか。

LEDを環境メッセージに

この建物の大きな特徴のひとつはオフィス部分の照明を全面的にLEDにしていることです。私は2007年からこのプロジェクトを担当していますが、当初からLEDのことは知っており、興味を持ちました。 照明の展示会に足を運んだり、照明メーカーの工場に行ってみたりしたところ、当時はまだ実用できるものではありませんでした。それがあっという間に進化し、弱点をどんどん克服していった様子は、まさに時代が変わる瞬間を見ているようでした。「継承と進化」の「進化」させるべきところには当然、環境性能も含まれます。新聞社は社会の公器でもあるとの自覚から、本プロジェクトにおいても、さまざまな環境配慮を行っており、その中でLED照明は大きなメッセージになると思いました。そこで2010年秋、すでに現場は着工していましたが、大きな設計変更をしてLEDを導入することにしました。しかし、その段階ではオフィスのシステム天井用LED照明製品はまだありませんでしたから、一からつくってもらうしかない。パナソニックさんにとっても難しい仕事だったと思いますが、今後オフィスにLEDが普及していくには製品化が必要ですから、パイロットプロジェクトとしてお願いしました。ホールのシャンデリアと同様、多くの課題がありましたが、長年の信頼関係がありましたから、きっといいものができると信じていました。LEDは細かい制御と相性がよいため、昼は窓際の照明を調光できるようにしています。無駄な電力を使わなくて済み、テナントさんにとっても経済的なメリットが生まれました。こうした姿勢も評価していただいて、テナントオフィスはほとんど決まっており、LEDを採用してよかったと思っています。LEDは普及が進んできましたが、まだまだ新しい、色々な可能性を持った光源だと思います。今後もLEDだからこそ実現できる新しい光空間に出会えることを期待しています。