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今まで述べてきましたように、「Feu」は、人が空間を観察する時の視野に注目して、視野の輝度分布から算出される指標であります。例えば、図1の空間を観察している時の人間は、図5左に示すように視点を下に向けて床面だけを見ている視野ではなく、図5中のように、床面だけでなく天井や壁面にも視点を向けた視野で明るさを感じています。「Feu」は、図5右に示すように、その空間全体から目に入ってくる光の明るさ感を総合的にとらえた指標なのです。
「Feu」を用いれば、設計者の「感覚」に頼ることなく、より客観性のある定量的な照明計画が可能になります。間接照明や建築化照明を駆使して設計された空間は、床面照度をあまり高くせずとも、空間全体としての見た目を充分に明るくすることが可能です。例えば、図6の2つの空間A・Bを比較しますと、明るく見えるのは、床面を重点的に照明している空間Bよりも、間接的に天井を照明している空間Aであるのは明らかです。しかし、このときの床面平均照度は、空間Aが120 lx、空間Bは190 lxでありますから、見た目の印象とは全く逆の値を示していることになります。図6は、従来からの照明設計指標である水平面照度では、空間の明るさ感を的確に表現できないことを明確に示しているのです。この時に、「Feu」を計算しますと、空間Aは、Feu 10、空間BはFeu 6となります。すなわち、「Feu」を用いれば、見た目の感覚通り、空間Aのほうが空間Bよりも明るい空間であると明確に数値で示すことができるようになるのです。
また、Feuを取り入れた照明計画は省エネにも貢献をします。例えば、廊下の照明計画においては、歩行性の確保を目的とした廊下の床面照度は100 lx 程度で充分ですので、必要以上の照度の確保はエネルギーの無駄につながります。そこで、必要な空間の明るさ感を確保するために、Feu 値を目安にした設計を行えば、床面照度を低く設定して省エネを実現することができます。
図7に示す空間A・Bは共に廊下空間として充分な明るさ感が確保されているFeu 9.5の照明計画です。しかし、照明器具と配灯を工夫することで、Aの照明計画はBに比べて、約16%の消費電力量削減に成功しているのです。