特殊環境用照明設備:検査照明
製品の品質が予め定められている基準に適合するか否かの品質の保証を行う検査作業は、工場の視作業の内でも最も厳しさの要求されるものの一つです。
検査作業にもいろいろ種類があり、その照明も一般作業と同様の全般照明で充分な場合もあり、また照度を補充するためだけの局部照明で充分な場合もありますが、検査内容により光源・器具の種類の選定やその設定位置・照射方向などに独特の照明手法の要求されるものが多く、そしてその検査が高度の熟練と判断力を要求されるものであればある程、意図した照明効果を作り出す照明技術者と、その照明による検査方法の適否を判定する検査作業との連携作業が必要であり、これがあって始めて完成されるものと考えられます。これが他の照明と異なる点であり、また難しい点でもあるといえます。
検査照明設計の基本的な考え方
検査照明の設計・計画を行うにあたっては、先ず検査項目、検査方法、そして合格、不合格の判定基準などその作業内容を充分認識し、作業面の特性を分析していかにすれば見え方の要求を満足して、見やすくなるか検討しなければなりません。
検査対象物がどのような光学特性をもっているかを明確にしたうえで、それぞれの光学特性に応じて、適切な光源の種類とその取り付け位置(検査員の視線および検査対象物と光源との幾何学的な位置関係)を決定します。
検査対象物の光学特性によっては作業周辺部を適切な明るさに設定することも重要になってきます。
表15、表16は検査照明に用いる光源の種類と光源の基本的な取り付け位置を示します。表17には、検査対象物を平面的な場合と立体的な場合とに分類し、検査対象物の光学特性別にみた検査照明手法を示します。
表15:検査照明に用いられる光源の種類
記号※ | 光源の照明特性 |
---|---|
L1 |
指向性の強い光源
|
L2 |
配光の広い高輝度光源
|
L3 |
配光の広い低輝度光源
|
L4 |
発光面積が大きく、低輝度で均一な輝度の光源
|
L5 | L4の光源に縞や線などのパターンを有する光源 |
※各々の光源を次表以下でL1、L2、L3、L4、L5と呼ぶ。
表16:光源の基本的な取り付け位置
光源の取り付け位置(図15参照) | 使用光源 | 光源の取り付け位置(図15参照) | 使用光源 | ||
---|---|---|---|---|---|
A | 検査対象物に対して斜め側方から 指向性の強い光源で照明する |
L1 | D | 検査対象物の裏面から 光源を透過させる |
L2,L3,L4 |
B | 検査対象物に光源が正反射 しない位置から照明する |
L1,L2,L3 | E1 | 検査対象物の一端から 光を入射させる |
L1 |
C1 | 検査対象物に光源が正反射 する位置から照明する |
L2,L3 | E2 | L2,L3 | |
C2 | L4,L5 | E3 | L1 |
図15:光源の基本的な取り付け位置図
表17:検査対象物の光学特性別にみた検査照明手法
(1)平面的な検査対象物の場合
検査対象物の特性分類 | 例 | 照明手法 | 備考 | |
---|---|---|---|---|
光源 注1) |
取り付け位置 注2) |
|||
A.不透明材料 | 印字文字の校正 | L2,L3 | B | |
1.欠損もその周辺部も拡散性 | 光沢のないタイル、スリガラス、 砂型鋳物、ベニヤ板などのかき傷、 われ、ひび |
L1 | A | |
2.欠損もその周辺部も鏡面性 | 光沢面のくぼみ、そり、凸凹 | L5 | C2 | 作業周辺部の反射率を高くする |
L1 | A | |||
3.欠損は鏡面性でその周辺部は拡散性 | 光沢のない金属面の パンチマークや標示 |
L2,L3 | C1 | |
L4 | C2 | |||
4.欠損は拡張性でその周辺部は鏡面性 | 光沢のある金属面の かき傷やさび |
L1 | A | 作業周辺部の反射率を高くする |
L2,L3 | B | |||
L4 | C2 | |||
L3 | C1 | |||
B.半透明材料 1.表面が拡散性 |
つや消しガラス、プラスチック、 薄い織物のきず、よごれ |
L1 | A | |
L2,L3,L4 | D | |||
2.表面が鏡面性 | 乳白ガラス、プラスチックのかき傷 | L5 | C2 | |
L1 | A | |||
L2,L3,L4 | D | |||
C.透明材料 | 板ガラスのかき傷、あわ | L1,L2,L3 | A,B | 検査対象物の背景の反射率を低くする |
L1 | E1 | |||
L3 | E2 | |||
D.不透明材料上にある透明体 |
計器盤、ワニスを塗った机の 面のかき傷、凸凹 |
L1 | A | |
L5 | C2 | |||
E.欠損とその周辺部の透過率が異なる場合 | 紙面の光モレ、プリント基板の回路欠損 | L4 | D | 検査面との色対比を強くするような色光を用いる |
注1)光源については表15参照
注2)取り付け位置については表16・図15参照
表17:検査対象物の光学特性別にみた検査照明手法
(2) 立体的な検査対象物の場合
検査対象物の特性分類 | 例 | 照明手法 | 備考 | |
---|---|---|---|---|
光源 注1) |
取り付け位置 注2) |
|||
A.不透明材料 1.欠損もその周辺部も拡散性 |
鋳物表面の汚れ | L1 | A | |
L2,L3 | B | |||
L2,L3 | C1 | |||
2.欠損もその周辺部も鏡面性 | 半田仕上げの状態 | L4 | C2 | 作業周辺部の反射率を高くする |
銀製品のくぼみ | L1 | A | ||
3.欠損は鏡面性でその周辺部は拡散性 | 鋳物上の表示 | L2,L3 | C1 | |
光沢のある部品のきず | L4 | C2 | 作業周辺部の反射率を高くする | |
4.欠損は拡張性でその周辺部は鏡面性 | 丸棒、電線、ネジのきず | L3 | C1 | 検査対象軸上に直角に 照明器具を配置する |
B.半透明材料 1.表面が拡散性 |
照明器具の半透反射板の きず、よごれ |
L2 | D | |
2.表面が鏡面性 | ガラスグローブの凸凹、 かき傷 |
L5 | C2 | 作業周辺部の反射率を高くする |
C.透明材料 | ジュースの混入物 | L1 | E3 | 検査対象物の背景の反射率を低くする |
注1)光源については表15参照
注2)取り付け位置については表16・図15参照
高い演色性の必要な場所(色検査室)
印刷物などの色選定や色合せなどに使用する高演色性の蛍光灯及び専用器具があります。
(1)高演色性蛍光灯(リアルクス)
(a)
現在実用化されている各種光源の中では最高のレベルの高演色性を有します。(b)
優れた高演色性蛍光物質を独自の二層塗布(ダブルコーティング)方式で塗布した構造です。(c)
一方の層が青色光、特に404.7、435.8nmの水銀輝線スペクトルを吸収して赤色光に変える働きをします。(d)
リアルクスはやや涼しい感じの演色AAA昼白色(N-EDL)と、落着いた雰囲気の演色AAA電球色(L-EDL)の2種類があります。
表18:高演色性ランプの分類
ランプ | 業種 | 用途 |
---|---|---|
演色AAA昼白色 (N-EDL) |
|
|
演色AAA電球色 (L-EDL) |
|
|
演色AAA昼白色(N-EDL)は、日本印刷学会の推撰基準(色温度5000±200K、平均演色評価数Ra95)を完全に満足する高性能を有します。
(2)使用上の注意
(a)
高演色性蛍光灯(リアルクス)を使用する場合の器具は、実用的には一般のものがそのまま使用できますが、色検査など特に重要な所で使用する際には、リアルクスの高性能を損なわないために、器具反射板はアルミニウム、拡散板には無彩色のものをご使用ください。(b)
リアルクスをご使用の際は、充分な照度を確保するようにしてください。