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昼光利用技術と省エネルギー

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昼光利用について

近年、オゾン層の破壊、地球温暖化などの様々な問題がクローズアップされ、CO2削減が重要な課題になっています。照明分野でも、自然に豊富にある昼光を利用して有効に節電を行うことが見直され、「昼光利用技術」が再検討されています。昼光を利用して、室内の照明を行うことを採光と言います。

ここでは、昼光の基本的な考え方、昼光計算や省エネルギーの効果について説明します。

昼光のみで照明してしまうと、室内が暗く感じたり、シルエット現象が起こるので、プサリの考え方を考慮しながら照明設計を行うことも重要です。プサリについては、プサリのページを参照してください。

昼光とは

昼光とは、太陽を光源として、地球上に到達する光のことですが、照明の観点からみると、性状の違いから4つに大別されます。(図1

図11)

直射日光、天空光、地物反射光、室内反射光の4つの光を表した図。

1.直射日光

直射日光とは太陽の光のうち、水蒸気や塵(ちり)などによって拡散・吸収されることなく、直接地面に到達するものです。太陽の位置は日々刻々と変化し、太陽が雲に隠れることもあるので、照度予測が難しいため、照明としては扱いません。

2.天空光

天空光は、太陽光が大気中の塵や雲などの微粒子により拡散された後、地表面に到達するもので、直射日光に比べて時間的変動が少ないため、照明は主として天空光を使用します。

3.地物反射光

直射日光や天空光が周囲の地面や建物、樹木に反射してくる光のことです。厳密には、照明として扱うことは可能ですが、省略してもさほど問題はありません。

4.室内反射光

窓を通って入射した光が天井、壁、床で反射して得られる間接照度のことです。こちらも3同様、照明として扱うことは可能ですが、省略してもさほど問題はありません。

昼光計算方法

1.昼光率

全天空からの直射日光を除く照度を全天空照度といい、昼光率とは全天空照度に対する室内の測定点の照度の比を百分率で表したもので、次式で表されます。全天空照度の目安は表1です。

D=E /Es(%)
D:昼光率
E:室内の測定点の照度(lx)
Es:全天空照度(lx)・・・(1)

表12)

条件 全天空照度(lx)
とくに明るい日(薄曇り、雲の多い晴天) 50,000
明るい日
普通の日(標準の状態)
暗い日(最低の状態)
30,000
15,000
5,000
とくに明るい日(薄曇り、雲の多い晴天) 50,000
非常に暗い日(雷雲、降雪中) 2,000
快晴の青空 10,000

〔備考〕:いずれも直射日光は含まれていない。

昼光率は、実測では簡単に求めることが可能ですが、計算だけで求めることはかなり複雑です。昼光率は立体角投射率で表されます。

2.立体角投射率

立体角投射率は次式で表されます。

U=S''/π・Rの2乗×100(%)

立体角投射率は上記のように求めることが可能です。また、建物の窓の場合は通常、長方形なので立体角投射率を図3、4を用いて、簡単に求めることが可能です。

図2:立体角投射率説明図3)

対象物Sは視点Pから見た際に、球面T上に投影され、投影された領域がS'として表されている。

図3:光源面と受照面が垂直の場合の長方形光源の投射率3)

横軸は長方形の短辺と長辺の比(b/d)、縦軸は光源の高さと長辺の比(h/d)を表した、光源面と受照面が垂直の場合の長方形光源の投射率を示したグラフ。等投射率(%)の曲線が描かれており、値が0.01%から25%まで変化している。投射率はb/dとh/dの比率に応じて変化することが示されている。図の下部には光源の形状や比率を示す補足図があり、各値の計算方法が説明されている。

図4:光源面と受照面が平行の場合の長方形光源の投射率3)

横軸は長方形の短辺と長辺の比(b/d)、縦軸は光源の高さと長辺の比(h/d)を表した、光源面と受照面が平行の場合の長方形光源の投射率を示したグラフ。等投射率(%)の曲線が描かれており、値が0.1%から25%まで変化している。投射率はb/dとh/dの比率に応じて変化することが示されている。図の下部には光源の形状や比率を示す補足図があり、各値の計算方法が説明されている。

このように、昼光率を求めることで昼光から得ることができる室内での照度を求めることができるので、昼光から得られる照度で足りない明るさを人工照明で補いながら、省エネルギーに配慮した照明設計を行います。

昼光を利用した照明制御について

室内に入ってくる照度を検知し、照明をコントロールする制御機器について紹介します。

1.小規模施設での省エネルギー

(1)センサ分離型セルフコントロールシステム
(明るさセンサ連続調光)

センサ分離型セルフコントロールシステムとは、1台のセンサで複数台の照明器具を制御する照明システムです。このシステムの構成を図5に示します。

図5:システム構成図

天井に設置された明るさセンサが、室内の明るさや外部から入る昼光を検知し、照明器具を適切な光量に調整する。昼光利用・・・明るさセンサが昼光を検知し適切な光の量になるよう照明器具をコントロール。初期照度補正・・・照明器具からの光で明るすぎる場合も、同様に明るさセンサが検知し、照明器具をコントロール。

この制御システムは外光が入らない夜間に明るさ基準値をリモコンから設定し、その基準値になるように、コントローラは作業面照度を測定して複数の照明器具を直接制御します。

作業面の照度を測定するためには、照度計の受光部を机上に置けばよいのですが、机上に置くとその上にものを載せたりしてセンサが働かない場合があります。また、リード線がじゃまになるなどの不便もあります。この対策としては、机上面のやや広い範囲の輝度を測定することとし、受光面は天井埋込とします。なお、図6に検知範囲の例を示します。

図6:検知範囲例

天井に設置されたセンサの検知範囲を示した図。センサは高さ5mの位置に設置されており、検知範囲は下方に広がる円錐状に描かれている。センサ直下の約φ4.0mのエリアが高感度の範囲で、その外側に約φ8.0mの広範囲な検知エリアが広がっている。

(2)センサ一体型セルフコントロール器具
(明るさセンサ付き連続調光器具)

センサ一体型セルフコントロール器具は、器具自体にセンサと制御装置を内蔵し、器具単独で独立して自らの光を自動調整する照明器具です。センサ内蔵器具なので、面倒な信号線の配線が不要です。また、照明器具個々の明るさ制御が可能になり、より省エネルギーが可能です。この器具の外観を図7にシステム構成図を示します。

図7:システム構成図

商用電源が照明器具に供給され、制御部と点灯回路部を通じてランプが点灯する仕組みが描かれている。

2.大規模施設での省エネルギー

(1)中央監視システムを利用した照明制御

中央監視システムとは監視対象の情報をビル全体で一元的に管理する装置です。

延床面積10,000m2以上の大規模施設で昼光を利用した省エネルギーを図りたい場合には、ビルオートメーションシステム(中央監視・照明制御)と明るさセンサを組み合わせて使用することが可能です。そうすることで、簡単に省エネルギー効果を把握することも可能です。図8にシステム構成図を示します。

図8:システム構成図

中央監視システムから信号線を通じてコントローラ明るさセンサに接続され、コントローラから調光信号線を通じて照明器具を制御している。

昼光照明環境の確率的な予測と省エネルギーの評価手順と例

1.省エネルギーの評価手順

①平均天空より、室内の検討点での昼光率の算定
②出現頻度に対応した検討点の昼光照度の予測
③昼光照度が必要照度を満たさない場合には、人工光で補う
④点灯を必要とする人工照明の総消費電力を算出

2.省エネルギーの計算例

実用性の高い節電の事例検討を行ってみます。

(1)条件

図9に示すようなビルがあるとします。

照明器具は蛍光灯40W2灯用を使用しました。平均照度は700 lxとなります。

消灯する照明器具は、窓から1スパン(窓から1本目の柱までの間)の範囲とします。

なぜならば、図10の昼光率曲線に示すように、窓から入る昼光は、窓から少し奥へ入った場所では急激に少なくなるからです。

南北の窓については、器具2台連結で13列、東西の窓については連続列の器具1列分とします。図9に示した破線と窓の間の範囲内の器具が点滅されます。

図9:オフィスビルの平面例
(蛍光灯40W2灯用下面開放形器具)4)

全体の寸法は縦横ともに397,000mmで、中心部に『コア部分』と記された四角いエリアが配置されている。周囲にはP1、P2、P3、P4と記されたポイントが各辺に均等に配置されており、コア部分を取り囲むエリアは等間隔のラインで区切られ、端は3,350mm、それ以外は3,000mmと均一な配置を示している。

図10:片側窓による最低昼光率(CIE 1970)5)

縦軸は最低昼光率(%)、横軸は室奥行(窓の高さhの倍数で表す)を示している。グラフには、窓幅が室幅に対して30%、60%、90%の場合の曲線が描かれており、それぞれの室幅(4.5~7m、>10m)および天井高(2.7~4.5m)に応じた最低昼光率の傾向を示している。窓幅が広いほど、また窓から近いほど最低昼光率が高くなり、室奥行が増すにつれて昼光率が低下することが示されている。

(2)仮定

  1. (a)

    点滅は東西南北の窓に対して、同時に行うことにします。
  2. (b)

    窓際の照明器具を消灯した場合、点線上の点で得られる人工照明の照度は、消灯前の室内平均照度の1/2より多いはずですので、安全をみて約1/2になるとします。
  3. (c)

    したがって、窓際の人工照明を消灯するのは、昼光により、P1~P4の点において人工照明の平均照度の1/2以上が得られている場合とします。
  4. (d)

    この例では、人工照明の点滅の設定照度は700x1/2=350 lxとなります。
  5. (e)

    室奥行2.5hとします。
  6. (f)

    窓幅90%/Wとし、室幅は">10m"とします。
  7. (g)

    蛍光灯40W2灯用器具の電力を47Wとします。
  8. (h)

    照明電力費21円/kWhとします。

(3)計算

(3)-1 昼光照度

室内のある点の昼光照度EDは次の式で求められます。

ED= πτmDFLS

ここに、

T:ガラスの透過率0.9
LS:天空輝度〔cd/m2
M:ガラスの汚れに対する保守率で、6ヵ月に1度の清掃で平均0.8とします。
DF:昼光率で図105)より求めます。

なお「昼光率」とは、室内のある点の昼光照度を屋外の天空照度(太陽直射光を除いたもの)で除した比率(パーセント)と定義されています。これは、建築学会関係の照明研究者に広く用いられています。

逆に、ある照度を得るために必要な天空輝度は

Ls=ED/πτmDF

で求められます。昼光照度350 lxを得るために必要な天空輝度は

Ls=350/π×0.8×3×10の-2乗=4,640[cd/㎡]

となります。ただし、計算を簡単にするため、ガラスの透過率τは、省略しました。

(3)-2 消灯時間率

前記の天空輝度の場合に、昼光照度は350 lxが得られ、窓際の照明器具は消灯してよいことになります。
次に、天空輝度4,640cd/m2の値が、どの程度の頻度で発生するかを検討します。

これについて詳しくは、プサリ設計用天空輝度において、プサリに採用する天空輝度を参照してください。

ある一定の作業時間に対して、器具を消灯する時間の比率を「消灯時間率」と名づけ、天空輝度がある値Lsoを超える時間の合計の、作業時間に対する比率を「超過率」と名づけることにします。

(3)-3 天空輝度の超過率

年間を通じた天空輝度の超過率は「プサリ設計用天空輝度の項の図15と表5」から読み取ってください。

天空輝度の超過率の表から方位別の4,640cd/m2の値の超過率=消灯時間を読み取れば、表2の昼光率曲線に示すように、窓から入る昼光は、窓から少し奥へ入った場所では急激に少なくなるからです。

この表から、簡単にするため少し安全をみて、消灯率を40%にすれば、P1~P4の点の照度が(昼光+人工光)の合計で、700 lx以下になることはありません。

消灯率40%ということは、一日平均して、
8〔時間〕× 0.4=3.2〔時間〕
の消灯となります。

表2:天空輝度4,640cd/m2の超過率及び消灯時間率

方向 西
消灯時間率〔%〕 44 69 53 48

(3)-4 1階あたりの消灯率(節電率)

1階あたりの、全体に設置されている器具の使用電力に対して、窓際の器具を消灯することによる照明電力の低減率は、次のようになります。

1階あたりの全照明器具の台数は244台、窓際にある器具の台数は96台で、その消灯率は0.4、したがって、1階あたりの節電率は、
0.4x96/244=0.16
約16%の電力が節減されます。

(3)-5 年間での照明電力と照明電力費の低減6)

次のような各ケースについて、電力と電力費の低減を計算しました。特に、このような点滅装置を用いて電力低減を行う場合、階の数の多い高層ビルほど、電力低減率は同じでも低減される電力と電力費の絶対量が大きくなりますので、点滅装置の投資効率がよくなります。

例として、ビルが10階、20階、30階と高くなっていく場合をとりました。

なお、年間労働日数を300日、器具1台あたりの電力を47W、電力代21円/kWhとします。

  1. (a)

    照明器具1台あたり
  2. (b)

    このビルの1階あたり、各方向の窓面あたり(各四隅は一方だけを一方の窓に含めます)、東西南北の各窓あたり24台
  3. (c)

    1階あたり(24×4=96台)
  4. (d)

    10階、20階、30階あたり、

以上の結果を表3に示します。

これを概括すると、年間で、

  1. (イ)

    窓際の照明器具1台あたりの電力費低減は約1,030円
  2. (ロ)

    1階あたりの窓1方向あたりで約24,700円
  3. (ハ)

    1階あたりで約98,800円

となります。

点滅装置を用いる場合、点滅の計画によって、たとえばビルの階数などによって、制御盤台数や工事費なども変わります。概略50~100万円の費用がかかるとして数年で、さらにビルの階数が増えればはるかに早く設備の償却ができます。

したがって、建物の全館一括制御が困難な場合でも、数ブロック程度にまとめて制御するのが良いと考えられます。

表3:自動点滅による電力と電力費の低減

(1年間=300〔日〕、1〔kWh〕=21〔円〕とします)

電力〔kWh〕 電力費〔円〕
照明器具1台あたり 47 987
1フロア一方の窓あたり(24台) 1,128 23,688
1フロアあたり(96台) 4,512 94,752
10階分あたり 45,120 987,840
20階分あたり 90,240 1,895,040
30階分あたり 135,360 2,842,560

(参考文献)

  1. 1)照明教室№75オフィス照明と省エネルギー,照明学会照明普及会,p.41(平8)
  2. 2)松浦 邦男:建築環境工学Ⅰ,朝倉書店,p85
  3. 3)山田 由紀子:建築環境工学,培風館,p154
  4. 4)田淵・東方:省エネルギーを考えた昼間人工照明の効果的な制御方式,電気と工事,(昭58)
  5. 5)CIE Pub.16:International recommendations for the calculation of natural daylight, CIE,Pari
  6. 6)臼杵乃武弘:昼間人工照明制御装置による節電効果の測定,松下電工技報 21,pp.41-44, (1980)

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