スポーツVRによるシミュレーションで選手の妨げにならない照明演出を実現
スタジアム
354台のLED投光器でグレアを低減しながら最大限のパフォーマンスを発揮できる明るさに。
新球場は、世界最大級(幅約166m)の可動屋根を備えた地下2階・地上6階建で、収容人数は約3万5千人。ビジターのファンが利用する3塁側の座席を少なくし、レフト外野席にホテルや温浴施設がある5階建の複合施設「TOWER 11」が設けられている。
南面は最大高約70mの巨大なガラスウォールとなっており、日照を確保するとともに、外部空間とつなぐ役割も担っている。このガラスウォール上部と固定屋根にHID2kW相当LED投光器226台とHID1kW相当LED投光器128台を設置。まぶしさが選手のプレーに悪影響を与えないように、光源からの光を絞る狭角配光とし、各投光器の照射方向を分散させることにより光の重なりを減らして光源を見上げた時のグレアを低減している。Ra90の高い演色性でIOC競技レベル基準に対応。高画質テレビジョン放送での色再現性を最大限に活かし、選手のユニホームの色や天然芝の色を鮮やかに映し出すことができる。
また、DMX制御により、ホームランやビクトリーなど試合のシーンに応じて明るさ(0~100%調光)と瞬時点滅を組み合わせ、照明と映像・音響が連動した演出を実現した。
照明設計にあたっては、「プレイヤーファースト」というコンセプトの下、選手がプレーで最大限のパフォーマンスが発揮できるようしっかりと明るさを保つと同時にプレーの障害とならないよう設計。基本計画を策定し、達成するための設計要件を満たす照明設計とした。不快グレア評価値GR(グレアレーティング)はJIS等の規定値よりも厳しい基準で設定。スタジアム照明設置後に照度測定を実施し、各要件を確保していることを確認した。
VRによる検証
エスコンフィールドHOKKAIDOの複雑な建築形状に合わせた照明設計のため、パナソニックの「環境計画支援VR」を用いて様々な検証を行い、プレーの障害にならない照明配置、角度調整を検討。スタジアム照明の配置や台数、照射方向、仕様について決定した。LED投光器と建築との干渉についてもスポーツVRで事前に確認することで施工時も設計通り進めることができた。
照明器具設置位置
■内野中心部のグレアの検証
内野中心部でプレーする選手へのグレア抑制として、出力の異なる2種類の器具を採用。これにより器具台数を極力減らし、ベース照明の明るさを保ちながらかつグレアを抑えた照明設計となり、コストとクオリティを両立することができた。
青丸部:HID2kW相当(中角)146000 lm
赤丸部:HID1kW相当(狭角)70000 lm
■直視による減能グレアの評価
直視グレアはスポーツVRで各視点からの輝度を元に検証。フィールド上で選手がLED投光器を直視した場合のグレアをスポーツVRにて評価。選手の主たる視線方向にまぶしさの原因となる器具を設置しないように照明設計を実施した。
スポーツVRで選手視点での直視グレアを評価
ホームから1塁側ファールグラウンドを見上げた視点
■ガラスへの映り込みの検証
照明器具のガラス面への映り込みの検証には、スポーツVRより高精細な検証を行う必要があり、3DCGも活用して、輝度が問題となるLED投光器がないことを確認。
ガラス面への映り込みをCGにて検証(シミュレーション画像)
実際の写真
スポーツVR・3DCGを用いたシミュレーション画像
スポーツVR
3塁側ベンチから1塁側ベンチ
3DCG
センターの位置から外野フライを見上げた際の視点
スポーツVR
建物外からの光漏れ
調光制御による演出
LED投光器はDMX-512Aの制御システムに対応。0〜100%のシームレスな調光が可能となっている。調光操作卓やPCにより、シーンに合わせて調光率を瞬時に変化させ、ダイナミックな演出を実現。他の設備のシステムと統合することで、音響や映像と連動した光の演出も行っている。
フィールド上を駆け巡る光やウェーブ状に動く光で演出
採用照明器具
ラウンジ
バイオシャドーで木漏れ日の情景を照射し、癒しの空間に。
新球場の特徴のひとつに、多様な観戦環境がある。ベンチ間近のプレミアムエリアに設けられた3塁側ラウンジ「Panasonic CLUB LOUNGE」では、パナソニックの様々な製品・サービスを体験しながら、上質な食事とともに、選手と同じ目線の高さで臨場感のある試合観戦を楽しめる。
木調で照度を控えた落ち着いた空間には、ダウンライト型プロジェクター「バイオシャドー」が15台採用され、床面に木漏れ日の情景を映し出している。また、照明のランプシェードに映像を流すことで、お客様の好みに合わせた自由なデザインを映し出すことができる「ランターナ」も採用されている。
Panasonic CLUB LOUNGEのシート
ダウンライト型プロジェクター「バイオシャドー」で床面に木漏れ日を照射
配光角を自由に変えられるTOLSOビームフリースポットライト
次世代照明「ランターナ」置きタイプ
採用照明器具
物件情報
所在地 | 北海道北広島市Fビレッジ |
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施主 | 株式会社 ファイターズ スポーツ&エンターテイメント |
設計 | 株式会社大林組、HKS |
施工 | 大林・岩田地崎特定建設工事共同企業体 |
総合演出創出システム 構築施工 |
パナソニックコネクト株式会社 |
竣工 | 2023年1月 |
2023年3月に開業した北海道日本ハムファイターズの新球場「ES CON FIELD HOKKAIDO」は、「ボールパーク」と呼ばれる、野球場を中心として商業施設や宿泊施設なども備える総合エンターテイメント施設。約32ヘクタールという広大な敷地面積の中に宿泊施設や商業施設、レジデンスなどを擁する全く新しいクリエイティブなコミュニティ「北海道ボールパークFビレッジ」内に誕生した。ファンやパートナー、地域の人たちとともに、地域社会の活性化や社会貢献につながる「共同創造空間」の構築と、北海道の価値・魅力を国内外に発信していく「北海道のシンボルとなる空間」の創出を目指し、プロジェクトに賛同する産官学による多様なパートナーシップにより、持続的に成長するまちづくりを追求している。