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『WELL認証』は企業評価指標!具体的なコンセプトと評価項目を解説

WELL認証は企業評価指標。具体的なコンセプトと評価項目を解説
本記事の概要
  • WELL認証は「建物の評価指標である」と、誤解されています。建築工事に関する評価項目は全体の30%にすぎないことを解説した上で、建物評価については日本の建築基準法に則っていれば比較的容易にクリア可能であることを説明します。
  • WELL認証は、働く人の健康とウェルビーイングの実現をサポートする企業評価指標とも捉えることができます。その理由は「空気や水、光や音、心やコミュニティなど10のコンセプトに基づいた評価システム」にあります。
  • WELL認証は「健康経営」と重なり合う部分が多く、さらに現在推進されている「人的資本経営」にもつながっていることについて紹介します。

WELL認証は、建物の評価指標だと誤解されるケースがあります。実は、建物に関する評価項目と人事・総務に関する評価項目とを比較すると、全体に占める割合はそれぞれWELL認証における評価項目全体の30%と同じ割合です。

従業員のウェルビーイング向上を目指すWELL認証は、人事部門や総務部門が担ってきた福利厚生においてもさまざまな指針があり、現在注目を集めている健康経営とも重なり合う内容が多くあります。

本記事では、その評価項目の内容がどのようなものなのかを確認しながら、WELL認証が「企業の評価指標」であることを解説します。

WELL認証は建物の評価指標というよくある間違い

WELL認証は建物の評価指標だと考えている方もいらっしゃいますが、それは誤解です。WELL認証は、単に空間のデザイン・構築・運用を評価するものではなく、オフィスで働く人の健康とウェルビーイングという観点から、よりよいオフィス環境を目指す評価システムです。

WELL認証は「建物の評価」だけではない

WELL認証の評価項目の中で、建築に関する項目はどのくらいあるのでしょうか。このテーマでは、WELL認証のうちオフィスビルを主対象とした「WELLv2」に焦点を当てて説明します。

WELLv2の建物評価の項目は全体の30%しかない

WELL認証の評価項目は多岐にわたりますが、4つの分野の内訳は以下のとおりです。WELLv2の評価項目の中では、「建築工事」に関わる評価項目は全体の30%にすぎず、他の分野を足した項目の割合の方がずっと大きいのです。

  1. 建築工事:30%
  2. 内装工事:21%
  3. 人事総務:30%
  4. ビル管理:19%

他の分野の項目については後述しますが、WELL認証の「WELLv2」はあくまでオフィスの健康度を測る評価システムです。

必須項目は日本の建築基準法に則っていれば比較的容易にクリア可能

WELLv2には空気や光、音、水など10のコンセプトがあり、それぞれに関連した評価項目として、必須項目と加点項目が設けられています。そのうち必須項目は、日本の「建築基準法」に準拠していれば、比較的容易にクリアすることが可能です。

一方、加点項目には特殊要件が含まれており、建築基準法ではカバーできない項目があるので、注意が必要です。

WELL認証は既築物件でも
取得可能

WELL認証はウェルビーイングに関する企業評価指標

WELL認証の対象範囲は、「10のコンセプトに基づく空間全体の健康・快適性能」です。このことについて、より詳しく紹介します。

オフィスで働く人の健康とウェルビーイングに影響を与える、さまざまな機能を測定・評価・認証する

ウェルビーイングとは、身体的にも精神的にも社会的にも満たされた状態のことを指します。WELL認証は、ウェルビーイングに影響を与えるさまざまな機能を、以下の「10のコンセプトに基づいて測定・評価・認証」する評価システムです。

10のコンセプトに基づいて測定・評価・認証

WELL認証の大きな特徴は「エビデンスに基づいた医学的および科学的な研究を組み合わせて、人の健康やウェルビーイングをサポートする環境が構築できているか」を評価する点です。例えば、コンセプト「WATER(水)」の項目には「基本的な水質」「飲水の品質」「基本的な水質管理」の3つがあります。

オフィスに設置される飲料水のクオリティは「飲水の品質」に該当し、指定された「8種類の溶存金属、7種類の消毒剤や副生成物」の化学物質の含有閾値をクリアすることが条件になっています。しかも、含有物質の定期的な分析も条件です。

飲水の品質(W02)

こうした要件に対するチェックは厳しいのですが、指定された15項目の水質検査を行い、定期的に分析データを提供してくれるウォーターサーバー・メーカーに依頼することで、条件を満たすオフィスもあります。

この例が示すとおり、WELL認証の対象は建物だけでなく、オフィスで働く人の健康とウェルビーイングに影響を与えるさまざまな機能です。

WELL認証には人事総務に関する評価項目が30%ある

WELL認証には、人事総務に関する評価項目があります。前述した「・WELLv2の建物評価の項目は全体の30%しかない」でWELL認証の評価項目について説明しましたが、建築工事以外にも「人事総務」の評価項目が全体の30%を占めています。

ウェルビーイングに影響を与えるさまざまな機能には10のコンセプトがありますが、「COMMUNITY(コミュニティ)」「MIND(心)」などに応じてさまざまな評価項目が立てられています。

「COMMUNITY(コミュニティ)」に関する例

COMMUNITY(コミュニティ)は必要なヘルスケアへのアクセスをサポートし、多様な人のニーズに応える健康文化を構築すること、そして、包括的で参加型の居住者コミュニティを確立することを目的としています。

例えば、このコンセプトの評価項目「新しい親の支援(New Parent Support)」では、従業員の育児休暇利用と職場への復帰に関する指針を示しています。この評価項目では、育児休暇に関する規定とともに有意義な育児休暇になるように、また育児休暇から復帰するのを支援するために、雇用主は4つのサービスのうち、少なくとも2つを提供するという指針が示されています。

そのサービスとは、「職場復帰時に、従業員が柔軟な働き方を選択できること」「育児休暇中に妊婦によい影響を与える情報の提供」「復帰時に従業員の復帰を支援するコーチング、またはカウンセリングプログラムなどを提供すること」「職場復帰する従業員を最適にサポートする方法に関する管理職向け研修」です。

また、同コンセプトの加点評価項目「健康と福祉の促進」には、健康促進リーダーの設置が盛り込まれています。具体的には、「全従業員の身体的、精神的、情緒的な健康と幸福を促進する方策」を計画・監督することを主な責務とする専任職員が、少なくとも1名いることという指針です。この専任職員は「経営幹部レベルで雇用されているか」「経営幹部チームのメンバーの直属でなければならない」という条件が付いています。

このように、WELL認証はヘルスケアを手厚くサポートするための人事制度やサービスについて、さまざまな評価項目を備えています。

「MIND(心)」に関する例

WELL認証におけるコンセプト「MIND(心)」の評価項目には、例えば「メンタルヘルスの促進(Mental Health Promotion)」があります。現在、従業員のメンタルヘルス向上は喫緊の課題となっています。

厚生労働省が公表した「令和5年版過労死等防止対策白書」によると、仕事や職業生活に関することで強い不安、悩み、ストレスを感じている労働者の割合は、実に82.2%に上っています。従業員のメンタルヘルスは、極めて深刻な状況にあるといえます。

福利厚生に関するメンタルヘルスの促進について、WELL認証ではどのような指針が示されているのでしょうか。この評価項目では、すべての従業員が追加費用なしで利用できるオプションを5つ挙げ、そのうち2つを提供することという指針が示されています。

そのオプションには、「対面・オンラインで毎週提供されるマインドフルネスまたはリストラティブ・プログラミング(ガイド付き瞑想アプリケーションの継続的利用、毎週のヨガクラスなど)」「休息とリラクゼーションのための専用スペースを設け、就業時間中の休憩を許可すること」などが含まれています。

また、すべての従業員を対象に年1回の研修を提供することや、入社時には新入従業員に対してメンタルヘルスおよび福利厚生に関する手当などについて、具体的に説明することが規定されています。

WELL認証はオフィスで働く人のウェルビーイングを促進する

WELL認証の評価項目は、すべてオフィスで働く人のためのウェルビーイング向上につながる指針です。また、WELL認証取得のための取り組みは、日本政府が掲げる健康経営と多く重なり合う部分があります。

WELL認証は従業員のウェビーイングを促進し、健康経営にもつながる

健康経営とは、社員の健康保持・増進の取り組みが将来的に収益性を高める投資になると考え、経営的戦略の1つとして実践することです。同時に、現在は企業の「人的資本経営」への取り組みが進んでいます。

人的資本とは、人材が付加価値を創造する源泉である存在であると捉え、人材の「資本」としての性質に着目した表現です。人的資本は経営戦略・施策の推進を支える基盤として、企業価値の向上をもたらすドライバーとなり得るもので、人的資本に関するこうした認識は、投資家の間にも広がりつつあります。

そして、人的資本投資の一環として、社員のウェルビーイングを保持・向上させる健康経営に注目が集まっています。社員のウェルビーイングに配慮し、誰もが健康的に働ける環境を目指すWELL認証は、現在、財界や市場で重要視されている健康経営と重なる部分が多くあります。

こうした側面から、WELL認証は企業価値を高める企業評価指数と捉えることができます。

パナソニックでは、WELL認証取得支援サービスを実施しています。WELL認証の取得は空間の環境計測から設備改善、申請・審査と対応することが多岐にわたるため、この支援サービスでは測定業務や申請資料の作成など実務サポートも行っています。

創業から100年以上、生活家電など多彩な製品開発を通して、人々が快適に暮らす環境づくりをしてきました。暮らしの快適さを定量的に測り、住空間を改善してきた経験と技術を生かしてウェルビーイングなオフィス空間の実現を支援いたします。

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WELL認証はESG経営にどうつながる?

経営への効果を知りたい方へ

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オフィスは1日の大半を過ごす空間でもあるため、オフィス環境を整備することは従業員の健康維持にも直結する重要な取り組みです。働きやすいオフィスと一口にいってもさまざまな定義や基準がありますが、国際的な認証であるWELL認証を取得することで、ESG経営にも貢献できるでしょう。

オフィス移転や改装を考えている方は、健康経営実現のために、ぜひこの機会にWELL認証の取得を検討してみてはいかがでしょうか。

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