清藤（せいとう）家は鎌倉期から続く旧家で、24代盛美（もりよし）は銀行創設に参画するなど、明治期の経済発展に貢献した人物でありました。
1902（明治35）年、盛美は盛美園造営に着手。江戸末期〜近代に津軽で流行した作庭様式「大石武学流」の小幡亭樹（おばた ていじゅ）のもと、９年を費やして庭園は竣工。3,600坪の敷地には手前に枯山水、奥に池泉回遊式庭園があり、築山の木立の間に視界を開いて遠く梵珠山（ぼんじゅさん）を借景としています。かえでや松といった木々と石組みの趣も格別で、大石武学流庭園の代表作とされています。

盛美館は庭園造営中の1909（明治42）年に建設されました。１階が和風、２階だけを洋風建築とする和洋折衷の外観が異色です。北東角には宙に浮くかのように見える八角形の展望室があり、銅板製の屋根やせん塔も目を引きます。棟梁の西谷市助（にしや いちすけ）は津軽で多くの洋館を手がけた建築家・堀江佐吉の弟子でありました。
館内１階の中心は贅を尽くした数寄屋造りの客間。雪見障子と縁側の引き戸を開くと客の視線は枯池から築山へと誘われ、奥行きのある風景が堪能できます。
一方、２階展望室は庭園の全容をぐるりと見渡せる広い視野が特長。津軽の自然を遠望する魅力もあり、25代辨吉（べんきち）はこの眺めを好んだといわれています。
２階の３室も畳敷きの和室であるが天井を漆喰仕上げとして洋風の照明を設置、床の間にはスタッコ塗りを駆使した床柱や落としかけをしつらえるなど、随所に独創的な意匠が見られます。
国の名勝に指定された庭園と和洋折衷の邸宅。その不思議な調和が、明治という時代のムードを今に伝えています。

和洋折衷のたたずまいに、西洋文化と出合った明治期の人々の創意が感じられる

空中楼閣とも呼ばれた展望室。１階の２本の柱が重さを支えている

２階夫人室の透かし欄間

１階客間の書院窓にみられるくもの巣をかたどった細工

■用語説明

【スタッコ塗り】

化粧漆喰。盛美館では漆喰に大理石の粉を混ぜ、大理石のようなつやが出るように磨き上げている