フライブルクは第二次大戦に空爆によって旧市街の約80%を失いました。戦後復興の際に、昔の町並みを再興することが選択され、細い石畳の道も再現されました。戦後、ドイツにもモータリゼーションの波は押し寄せましたが、フライブルク市は旧市街地への自動車進入を抑制。公共交通機関を中心に自転車、徒歩を利用する政策を取りました。
旧市街では自動車の乗り入れが規制されている
自転車に連結する子供用リアカーも用いられる
バスにはペットも同乗できる
第二次大戦中にナチの駐留地であったヴォーバン地区は、1992年にフランスからドイツ連邦に返還されました。ドイツ連邦からこの地を入手したフライブルク市は新興住宅の建設を計画。1994の設計競技で採択されたマスタープランに、トラムを中心とした自動車に依存しない交通計画や、豊かな自然環境を維持するための施策を加え、地域詳細計画を作成。この計画をもとに、住民参画のグループなどとの話し合いが何度も繰り返され、市民との合意によって、児童公園の配置や道路の幅という、詳細な部分までが決定されました。
トラムを街の中心に通して各エリアに住む人が平等に公共交通を利用でき、自動車が住宅エリアに入ることがないように計画。ここでは、各住戸にガレージが認められておらず、街区の隅に共同駐車場が2カ所設けられていて、自動車より公共交通や自転車を利用する方が便利なように仕組まれています。ガレージがないのでそのスペースは前庭として利用でき、道路である部分は子供のための空間として利用されています。さらに、生活道路は通り抜けることができない『子供が遊ぶ道』と名付けられ、自動車の時速は5〜7kmに制限されています。
原子力発電所の予定地は日射量が多く、品質の高いバーデン・ワインの生産地でした。しかし、内陸にある原子力発電所は、冷却塔から大量の水蒸気を排出するため雲を発生させて日射量を減少させるおそれがあります。このため、農村の人たちは、フライブルク大学の気象学や物理学などの教授に教えを請い、広範な原子力発電所反対の運動が展開されていきました。さらに、1986年4月にチェルノブイリの事故が発生すると、フライブルク市議会は翌5月には、化石燃料や原子力に依存しないことを市議会で決議。1996年には、太陽光・太陽熱利用を促進する「ソーラーシティ・コンセプト」を立て、市内の電力消費量の10%を再生可能エネルギーとすることを決定しました。
建物の壁面を覆い尽くした太陽光パネル
太陽光パネルを備えたオフィス・商業施設
「ソーラーシップ」
公民館の屋根にも太陽光パネルが設置されている
(ヴォーバン)
フライブルク市には、フラウンホーファーISE(太陽エネルギーシステム研究所)をはじめとした、数多くのソーラー関連企業が存在しています。これは、フライブルク市は太陽光の日射量が多いためです。
フライブルク市は太陽光・太陽熱利用を普及させるために、各種補助金をはじめEXPOへの出展など様々な施策を行いました。しかし太陽光パネルが急速に普及したのは、「固定価格買い取り制度」を定めた再生可能エネルギー法が2000年に制定されてからです。
フライブルク市では駅前のタワーをはじめ、さまざまな場所に太陽光パネルが導入されていますが、画期的なのはソーラー住宅地です。
ここでは建物の気密・断熱性能を高めるとともに、冬には南に大きく開いた窓によって太陽光を効率よく住宅内に採り入れています、また夏には長いひさしが強い日差しによる温度上昇を防ぐという「パッシブハウス」の設計思想で住宅が建てられています。
この極力エネルギー消費を抑えた住宅の屋根全体が太陽光パネルで構成されており、その発電量は消費電力量を上回ることから「エネルギープラス住宅」ともよばれています。
ヴォーバン住宅地には、約70年前の菩提樹やプラタナスがその姿を残しています。これは住宅地開発決定時に、樹木を保護する条例が締結され、そのもとに都市計画もつくられたから。理由があって切り倒さなければならない場合は、代わりとして同種の木を植樹することが義務づけられています。
また、フライブルク市は個人敷地の前庭と道路の間に1.5mの緑地緩衝帯を設け、この前庭を住民が管理する「緑地の里親制度」を導入しています。これにより、住民は道路の環境に気を配ります。住民は地域への愛着が募ると同時に、フライブルク市はメンテナンスのコストを削減できるのです。
木の上の秘密基地(ヴォーバン)
石畳の雨水通路までの1.5mは「緑地の里親制度」で
住民が管理する(ヴォーバン)
自然のままの小川はビオトープの役割を担う
(ヴォーバン)
フライブルク市には環境教育に取り組んでいるさまざまな人たちがいます。その一つがドイツ環境自然保護連盟(BUND)です。エコステーション・フライブルクはBUNDの環境教育センターとして1986年に設立された、有機菜園を備えた低エネルギーハウスで、各所に環境に配慮した工夫がこらされています。子供たちは池や土の中に棲む生き物を観察して、そこに多くの多様な生物が棲んでいることを知り、有機菜園では果物や野菜だけでなくハーブについても学びます。
エコステーションは子供たちの学びの場だけでなく、環境に関心のある人たちの交流の場ともなっています。
フライブルク市のほぼ全域にあるのが、100年以上の歴史を持つレンタル農園「クラインガルテン(小さな庭)」。1区画の広さは平均300m2で、利用料は年間200ユーロ、市の緑化政策の一環として位置づけられています。
クラインガルテンには各区画に「ラウベ」と呼ばれる小屋があり、利用者は思い思いにデザインをこらしています。クラインガルテンという小さな農園を持つことは、セカンドハウスで余暇を楽しむだけでなく、街の緑地環境を維持することでもあるのです。
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