コミューンときわ
中庭に面した1階にあり、土間が設けられている2LDK(55.08㎡)のモデルルーム。
内装はアンティーク家具にマッチした【アーバンヴィンテージ】テイストで、床はヘリボーン柄のアーキスペックフロアー
『つながり』を大切にする、これまでにないコミュニティマンション
2020年1月、埼玉県さいたま市浦和区に建設された『コミューンときわ』は、住宅51戸・SOHO型住宅4戸のRC造階建の賃貸集合住宅。住民が憩い、コミュニケーションを交わす場として中庭や屋上庭園などさまざまなくらしを育む共用部が設けられており、SOHOやカフェは地域につながる街のシンボルとして計画されている。
立地は、JR京浜東北線「北浦和」駅から徒歩10分。アクセス経路には、埼玉大学跡地に整備された北浦和公園があり、ここには黒川紀章氏が初めて手がけた美術館である埼玉県立美術館が1982年に開館している。
かつて「鎌倉文士に浦和画家」と言われた歴史をうかがわせる地に建設された「コミューンときわ」。人との繋がりを重視した集合住宅は、これまで皆が賃貸住宅で諦めていた空間と豊かなくらしを提供しようとしている。
ポテンシャルの高い人を横につなぎたかった
「旧中山道の宿場町だった浦和は、明治時代に埼玉県の中心となる文教都市として成長してきた。関東大震災後には疎開で移住した画家たちが集まって『アトリエ村』を形成した時期もあった。今でも浦和には、芸術などの才能がある方や、士業や高学歴のポテンシャルの高い方が多く住むが、こうした人たちを横につなげば、新しいコミュニティができるのではないかと思った。こうして事務所やアトリエにも使えるSOHO型住宅も用意して、新しい発信拠点となるように考えた」と株式会社エステート常盤の代表取締役社長 船本義之さんは、コミュニティ型の賃貸住宅を造った背景を説明する。
「敷地は500坪以上あるので、容積率から言えば100戸以上の集合住宅を建てることも可能で、実際いくつかの設計事務所からそのような提案もあったが、私は事業主として入居者の顔を覚えたいと思った。また、入居者同士が顔見知りになるためにも50戸という規模は限界だと考えた。大栄建築事務所さんの提案は中庭や屋上庭園、コミューンスタジオなど、『つながり』を創り上げる思いに応えるものだったので、このプランを選んだ」と船本さん。
事業主で管理運営も行う
株式会社エステート常盤の代表取締役 船本義之さん
住民がさまざまなコミュニケーションを交わす、多目的使用が可能な中庭
想定どおり最初のSOHO型住宅はWEBデザイナーが入居
集会やイベントが開催できるコミューンスタジオ
バーベキュースペースも設けられた屋上庭園
中庭を中心にしたコミュニティマンションを提案
設計・監理を担当した株式会社大栄建築事務所の代表取締役社長 渡邊 敦さんは「当社は大正13年に創られた池田建築事務所がルーツで、昭和30年代以降旧埼玉銀行(現材の埼玉りそな銀行)に関連する不動産会社の設計事務所として活動。埼玉県の地元に根ざして長きにわたってお仕事をさせていただいている。
今回、長く愛されるコミュニティマンションにしたいというお話しを伺ったときに、中庭を中心にしたプランを提案。幼い子どもからお年寄りまで、さらには障がいのある方までが共生できるような空間を計画させていただいた。
普通、このような建物だと、1階から上階まで同じプランでまとめるが、ここでは階によって配置を変え、単身者向けとファミリー向けを組み合わせて多世代交流できるように配慮した」という。
設計を担当した株式会社大栄建築事務所
代表取締役社長 渡邊 敦さん
賃貸でもこだわりのインテリアを諦めない空間デザインを夏水組に依頼
船本さんは、コミュニティマンションの空間を考えるにあたって坂田夏水さんに相談した。「最近、マンションリニューアルや建設会社からの資料に坂田さんの名前を見ることが多くなってきた。著書も何冊も読んだが、私には想像もつかない内装デザインが掲載されている。そこで、今回の空間デザインをお願いした」と語る。
坂田夏水さんは2008年に株式会社夏水組を設立し、女性の視点によるリノベーションや内装デザイン、商品企画コンサルティングなどで注目を集めている。パナソニックも株式会社夏水組監修のもと、2018年7月に「ベリティス クラフトレーベル」を発売した。
これは1950〜60年代のトラディショナルデザインをベースに、自由にアレンジ、カスタマイズできるインテリア建材。色柄や採光部、ハンドルがドアに合わせて選べ、好きな色に塗ったり、アンティーク風プレートなどのアクセサリーでドア周りを飾ることもできる。
「当社の仕事は、新築・中古・賃貸マンションの空間を、床、ドア、壁紙、間取りも含めて、トータルにコーディネートすること。最近では空室率が30%以上の賃貸マンションをリノベーションして満室稼働するという依頼も多く、それを運用面でもコンサルティングしている。今回のように、新築50戸以上の空間をコーディネートしたのは初めてだったが、とても興味深い仕事だった」と坂田さん。
デザイン監修を担当した
株式会社夏水組の代表取締役 坂田夏水さん
パナソニックとともに立ち上げた「クラフトレーベル」を採用
「賃貸住宅というと、部屋の扉を開けた瞬間に、何㎡あるのか、日当たりはどうかという、最低限の部分を確認して決めてしまう人が大半。借りる前から空間の質を諦めてしまうのは残念だと感じていた。
船本さんの『暮らしを豊かにしたい』という想いと、本当に豊かなモノに囲まれると豊かな人材が生まれ育つという考えに共感した。
賃貸住宅で、入居者がテイストを選べて楽しめる要素とは何かと考えたときに、パナソニックとともに立ち上げた『ベリティス クラフトレーベル』がコーディネートしやすいと考えた。パナソニックの建具や床材に、デザイン性の高いクロスなどを使用し、4つのテイストに分けて各部屋をトータルコーディネートした」と坂田さんは語る。
【アーバンヴィンテージ】アンティークの家具にある、ネイビーをアクセントにした大人の空間
【エリソンナチュラル】ホワイトを基調に、ブラックをアクセントにしたナチュラルな空間
【イノセントグリーン】グリーンとアースカラーを組み合わせた落ち着きのある空間
【カジュアルテイスト】柔らかな色の中にポップな柄を取り入れた温かみのある空間
豊かなくらしを提供するために
船本さんはクラフトレーベル採用にあたって、次のように振り返る。「夏水さんに連れられ、大栄建築事務所の渡邊さんと一緒にパナソニックのショウルームに行き、クラフトレーベルを確認して驚いた。フローリングについてもアーキスペックシリーズを見ることができ、これならいいよねと皆で話して採用した。ずいぶん悩んだが、ここに住む人に万人受けするものを選んではいけないと覚悟を決めた。結果として4つのテイストを設け、場所によっていろいろなデザインで色遣いも変わっているので、入居者に合ったスタイルが選んでいただけるようになった」。
(左)洗面室に設置されたクラフトレーベル内装ドア
(中)システムキッチンVスタイル ヴィンテージメタルとヘリボーン柄のアーキスペックフロアー
(右)ユニットバスUKシリーズ(パラレルグリーン柄)
これまで、賃貸住宅で求めることが諦められていたこだわりのインテリア。「コミューンときわ」では、個性を尊重して多様な空間を用意し、その人たちが横につながるコミュニティを創り上げようとしている。さらに、夏水組とともにクラフトレーベルを立ち上げたパナソニックは、これからも部屋づくりにこだわる新商品を次々に開発し、豊かなくらしを提案していく予定だ。
※この記事は2020年2月時点の情報です
コミューンときわ
■概要
所在地/埼玉県さいたま市浦和区常盤10-21-9
事業主/株式会社エステート常盤
設計・監理/株式会社大栄建築事務所
施工/株式会社田中工務店
デザイン監修/株式会社夏水組、株式会社まめくらし
竣工/2020年1月
構造・規模/RC造・4階建
賃貸戸数/55戸(SOHO型住宅4戸、住居51戸)・飲食店・スタジオ・中庭・屋上菜園付
主な設備
● ベリティス クラフトレーベル ● フローリング ベリティスシリーズ ● フローリング アーキスペックシリーズ ● ベリティス玄関収納 ● APキッチン ● システムバスUKシリーズ ● 洗面カウンターCライン ● LEDダウンライト ● LEDスポットライト