国立アイヌ民族博物館 - ウポポイ(民族共生象徴空間)
ウポポイ全体が望め、ポロト湖を取り囲む山々の雄大な展望が楽しめるパノラミックロビーでは、
映り込みに配慮された照明設計が採用されている
先住民族アイヌの歴史と文化を伝える日本初・日本最北の国立博物館
アイヌ文化の復興と発展のナショナルセンターとして北海道白老町のポロト湖を中心に整備された「ウポポイ(民族共生象徴空間)」。その中核施設の一つである国立アイヌ民族博物館は、アイヌ文化の展示、教育普及、収集保存、調査研究、人材育成を担う博物館として計画された、東京・京都・奈良・九州などと並ぶ、8番目の国立博物館である。
延べ面積約8,600m²の規模を有する博物館は、1階にショップやライブラリなどのパブリックスペースと調査・研究部門を配し、2階に展示室と収蔵庫を配置。2階の面積は1階よりも広く取られ、伝統的な高床式の倉のような特徴的な外観となっている。パブリックスペースの天井には、3連アジャスタブルダウンライトを配置してレイアウト変更にも対応。照射方向を室内に向けることで、
窓ガラスに照明が映り込むことなく屋外が楽しめるように計画されている。また、2階のウポポイの広大な展望が楽しめるパノラミックロビーでも、窓を外側に大きく傾斜させるとともに、傾斜天井にグレアレスダウンライトを配置。窓の上下にライン状の建築化照明を配することで、内側からの映り込みを軽減し、柔らかな外光が広がるように配慮されている。
展示室は、基本展示室(1,250m²)と特別展示室(1,000m²)で構成され、大型展示に配慮して基本展示室で6.5m、特別展示室でも6mの天井高が確保された。ここでは、タブレット操作が可能なムービングスポットが導入され、展示替えの負担を大幅に軽減している。さらに、アイヌ文化への関心を高めるために、グリーンシーズンの夜間営業時には、
映像・電飾・園内を幅広くカバーする音響などが連動するプロジェクションマッピングを体験交流ホールの外壁や川や丘、神々しいユク(鹿)のオブジェに実施。光と映像の演出が好評を博している。
ウポポイはアイヌ語で「(おおぜいで)歌うこと」を意味しており、多様な人びとが集い、アイヌ文化の復興と発展が期待されている。
建築設計Report vol.38/2021年8月発行
※会社名、役職名などは掲載時のものです。
ムービングスポットが「鳥」を照射している基本展示室。壁面にはイメージ映像がプロジェクターから投写されている
2021年7月3日~8月22日の期間中、『ゴールデンカムイ』(野田サトル作/集英社「少年ヤングジャンプ」連載中)の特別展が開催された特別展示室
2021年7月3日~8月22日の期間中、『ゴールデンカムイ』
(野田サトル作/集英社「少年ヤングジャンプ」連載中)の
特別展が開催された特別展示室
天然スレート張りの外壁の上にゴザ模様を表現したレリーフが設置された正面入口
壁面一杯に館内案内が投写され、6面マルチディスプレイが配置されたエントランスロビー
3連アジャスタブルダウンライトの光がガラス面に映り込まないよう計画されたパブリックスペース
アイヌ文化や歴史を取り上げた書籍を中心に閲覧できるライブラリ
歩く人の動きに合わせて4台のプロジェクターが映像を投写し基本展示室にいざなう
プロジェクションマッピング用レーザープロジェクター
体験交流ホール外壁のプロジェクションマッピングショー
体験交流ホール外壁のプロジェクションマッピングショー
ウポポイ(民族共生象徴空間)
国立アイヌ民族博物館
所在地/北海道白老郡白老町
事業主/文化庁
企画・監修/国土交通省北海道開発局営繕部
管理・運営/公益財団法人アイヌ民族文化財団
設計/株式会社久米設計
照明デザイン/有限会社サワダライティングデザイン&アナリシス
建設工事/竹中・田中特定建設工事共同企業体
電気工事/末廣屋電機株式会社
機械工事/株式会社日立プラントサービス
展示設計/株式会社丹青社
展示工事/株式会社日展
オープン/2020年7月
主な設備
● アジャスタブルダウンライト ● グレアレスダウンライト ● ムービングスポット ● デジタルサイネージ ● レーザープロジェクター ● プロジェクションマッピング用レーザープロジェクター ● スペースプレーヤー