唐招提寺御影堂 宸殿の間
宸殿の間に広がるふすま絵「濤声」。
高演色スポットライトの採用によって、東山魁夷画伯の作品本来の色彩が常時、鑑賞可能になった
障子越しの柔らかい光を再現し、
写経用の明るさも確保
唐招提寺御影堂は、もと興福寺の別当坊だった一乗院宸殿(しんでん)で、明治以降は県庁舎や地方裁判所にも使われていた。1964年、鑑真和上遷化1200年の記念事業の一環で、唐招提寺に移築、日本最古の肖像彫刻とされる国宝鑑真和上坐像を安置し、国の重要文化財に指定されている。
移築から50年を経、2015年より始まった修理事業が2022年3月に完了。東山魁夷画伯が約10年の月日をかけて制作したふすま絵5部作も戻された。工事に伴い、宸殿の間のふすま絵を照射する照明を設置。障子越しの柔らかい光による鑑賞を意図し描かれたふすま絵「濤声(とうせい)」は、その光を再現した高演色スポットライトで鑑賞者がおとす影を気にせず楽しむことができる。
照明デザインを手がけた株式会社Studio Sawna 取締役の和田 雅弘氏は「繊細な調光が可能なスポットライトで、遠くの岩の照度をやや抑え、雄大な景色に遠近感を出すことができた」と述べる。また、毎年春と秋に行われる写経会用には配線ダクト取付型のベース照明を設置。文化財指定建築に負担をかけず、6台の器具で大広間の隅々までを明るく照らす。唐招提寺 執事長の石田 太一氏は「鑑真和上の御心の伝わる品々を守るだけでなく、広く公開していきたい」と語る。
建築設計Report vol.43/2022年11月発行
※会社名、役職名などは取材時のものです。
春、秋年2回の写経会用に、6台のベース照明を設置し明るさを確保
高演色スポットライト(左)とベース照明(右)の配線ダクトは、文化財の負担を避けるため、天井板を新設したうえで竿ぶちの影に収めた
東山魁夷画伯奉納御影堂障壁画
唐招提寺 執事長
石田 太一 氏
画伯が奉納したふすま絵をはじめ、現在唐招提寺にある鑑真和上の御心の伝わる品々を、安全を確保して守るだけでなく、広く公開していきたいと考えています。
株式会社Studio Sawna
取締役 和田 雅弘 氏
施主である唐招提寺様の思いをうけ、自然光のもとで見る東山魁夷画伯の筆使いを忠実に再現することに心を尽くしました。スポットライトのRa95という高演色性、また調光ダイヤルの扱いやすさには満足しています。
唐招提寺御影堂 宸殿の間
■照明設備設置工事
所在地/奈良県奈良市五条町
施主/唐招提寺
照明デザイン/株式会社Studio Sawna
設置完了/2022年5月
主な設備
● LED高演色スポットライト 個別調光タイプ ● 配線ダクト用ベース照明「グレアセーブライン」