中島・湖の森博物館
木と鉄の複合梁「テクノビーム」によって、木造建築でありながら情報全体が見渡せる柱のない空間が実現された約8m×18mの展示室
木と鉄の複合梁による展示空間で島全体を博物館とした情報を提供
約11万年前の巨大噴火により誕生した洞爺湖の中島は、ユネスコ世界ジオパークに認定された洞爺湖有珠山ジオパークの原点ともいえる。1954年に建設された洞爺湖森林博物館は、豊かな自然と緑や生き物を展示し、中島を訪れる多くの観光客や修学旅行生に親しまれてきた。
「近年、観光の主体が団体から個人に移り、余暇の過ごし方も変化している。さらに急増した海外観光客への対応も必要になり、開設以降65年が経過した施設の建替えを決定。建設にあたっては『島全体』を博物館にしようと構想し、この施設は小さいが、森林を散策するための知識と情報が得られるスタート地点と捉えた」と洞爺湖町経済部観光振興課専門官。
「このため、中島の自然環境やフィールド散策の情報を展示する展示室は全体が一目で見渡せるように無柱空間にしたかったので、木造でも広い柱間が確保できるテクノストラクチャー工法を採用した。また、有珠山では2000年の噴火で震度5弱の地震が数多く発生しており、先々の火山性地震や冬の積雪も考えると、耐震性や耐荷重に優れた工法を選択したことは適切だった。今後は博物館周辺も整備して、散策後もゆっくり時間が過ごせる空間を提供したい」と語る。
建築設計Report vol.39/2021年11月発行
※会社名、役職名などは掲載時のものです。
背後にある森へのスタート地点となる、洞爺湖畔に建つ博物館
館内のカフェレストラン
島全体が博物館とされた森の散策コース
①船で運ばれたテクノストラクチャー建材 ②展示室で幅8mの柱間を実現した木と鉄の複合梁「テクノビーム」
①船で運ばれたテクノストラクチャー建材
②展示室で幅8mの柱間を実現した木と鉄の複合梁「テクノビーム」
中島散策モデルコース
中島・湖の森博物館
所在地/北海道有珠郡壮瞥町字中島
事業主/洞爺湖町
設計/奥山建築設計事務所
建設工事/須藤・加藤経営建設共同企業体
展示工事/株式会社丹青社
竣工/2021年3月
建築工法/テクノストラクチャー工法