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従業員1人あたりのウェルビーイング投資を見直そう!総務のプロが生産性やエンゲージメントを向上させる方法を解説

ウェルビーイング投資とは 従業員の生産性やエンゲージメントを向上させる投資
金 英範

監修者金 英範(KIM HIDENORI)

これまでも健康経営などの観点からウェルビーイングの必要性を訴えてきました。ウェルビーイング経営には、従業員エンゲージメントやワーク・ライフ・バランスを高める施策は欠かせないことであり、社員のウェルビーイングにつながります。

企業にとって、ウェルビーイング経営は待ったなしの経営戦略です。そして、総務部門はその戦略を成功に導く重要な役割と責任を担っています。総務は従業員のウェルビーイング向上のためにどのような取り組みをしたらよいのでしょうか。

本記事では、総務のプロフェッショナルが従業員のウェルビーイングのあり方を解説するとともに、その実現に必要な予算確保の方法をアドバイスします。

なぜ従業員のウェルビーイングを考える必要があるのか?

従業員のウェルビーイング向上を目指すことには、どのような意味があるのでしょうか。その必要性について、さまざまな側面から考えてみましょう。

ウェルビーイングとは

健康経営と人的資本経営

人的資本経営という言葉が耳目を集めています。経済産業省は、人材を「資本」として捉えその価値を最大限に引き出すことで中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方であると定義しています。

また同省では健康経営についても、「従業員などの健康保持・増進の取り組みが、将来的に収益性を高めるための投資であるとの考えのもと、経営的な視点から戦略的に実践すること」と定義しています。

これまで「コスト」として捉えられがちだった人的資源(リソース)が、これからは「資本」や「投資の対象」へと認識が改められるようになりました。これは何を意味するのか、詳しく見ていきましょう。

  1. 健康経営や人的資本経営においては従業員のウェルビーイングが鍵を握る

経済産業省が2020年に公表した「人的資本経営の実現に向けた検討会」の報告書「人材版伊藤レポート」では、人的資本経営について次のように説明されています。

人材はこれまで「人的資源(リソース)」と捉えられていましたが、それは「すでに持っているものを使う、今あるものを消費する」ことを含意します。人的資源の観点では「いかにその使用・消費を管理するか」というマネジメントが行われることになり、これまでは人材に投じる資金も「費用(コスト)」として捉えられてきました。

しかし、人材は教育や研修、日々の業務などを通じて成長し、価値創造の担い手となる存在です。また、企業は今いる人材に目を向けるだけでなく、事業環境の変化や経営戦略の転換に際して、必要な人材を外部から登用・確保することも欠かせません。

したがって、人材を「人的資本」として捉え、マネジメントの方向性を管理から人材の成長を通じた価値創造へと変化させました。人材に投じる資金は「投資」と捉えることが、これから目指すべき方向性です。

企業は従業員の健康づくりを費用(コスト)ではなく「投資」として捉え、健康経営を人的資本投資の一環として推進することが求められています。健康経営の目的は人を「資本」として活用し、企業の成長と社会の発展に寄与することです。人中心の視点を備えた健康経営は、これから企業が取り組むべき重要な課題の1つといえます。

従業員のウェルビーイングを高めるメリット

従業員のウェルビーイングを高めることに、どのようなメリットがあるのでしょうか。健康経営と関連づけて紹介します。

  1. 従業員の生産性、企業に対するエンゲージメントの向上につながる

ウェルビーイングには、さまざまなメリットがあります。下記の「健康経営と健康投資の関係」は、人的資本経営のもと従業員への健康投資をした場合のメリットを表しています。

健康経営と健康投資の関係

従業員の活力向上が経営課題の解決に向けた基礎体力を増進させ、そのことが人材の定着率の向上、優秀な人材獲得につながっていることがわかります。それが組織の活性化と生産性向上をもたらし、企業の成長ポテンシャルが高まることによって、イノベーションの源泉が獲得・拡大されています。

このようにして、従業員のウェルビーイングを高めることは、企業の業績・企業価値の向上をもたらします。

採用面でも競合と差をつけるためにウェルビーイングは重要

経済産業省は、健康経営によって従業員や就職希望者からの安心・信頼を得られると指摘しています。そうした背景を受けて、採用活動などで健康経営を活用する企業が増加しています。

また、2022年6月からハローワーク求人票の中で健康経営優良法人ロゴマークが利用可能になりました。大手の就職・転職支援業者のサイトでは、特設ページやウェビナーなどで健康経営に関する普及啓発を強化しています。

少子高齢化による人手不足が深刻な状況にあって、ウェルビーイングを高めることは、採用面でも競合他社に差をつけるために必須な取り組みです。

総務部門が考えるべき従業員のウェルビーイングとは?

総務は従業員のウェルビーイングを実現させるために、どのような役割を担う部門なのでしょうか。

総務が実現できる従業員のウェルビーイングの領域

総務部門の目的は従業員のウェルビーイング実現であり、ジョブそのものです。従業員は幸福でコンディションがよければストレスなく働くことができ、さまざまなメリットを生み出します。総務は、従業員が気持ちよく幸せに働ける環境を用意する責任を背負っています。

従業員の働く環境とは、具体的にどのようなものでしょうか。

  1. 総務はこれから精神的欲求の領域までサポートすることが大切になる

総務がノルマとして実現すべきなのは「心身の安全が確保され、従業員が安心して働ける」環境を整えることです。下記の「マズローの欲求段階説」を使って説明します。この理論では、「人は低次の欲求が満たされれば、高次の欲求を満たそうとする」と考えられています。

これをもとに考えると、まず総務の業務は土台となる下2段階を満たす環境を整備することだといえます。つまり、「安全衛生管理を行い、オフィスを快適に整えて、従業員が心地よく働く権利(Physical Right for work)を守る」業務です。

マズローの欲求段階説

ただ、従業員にとってよりウェルビーイングが高まる環境は、社会的欲求や承認の欲求など精神的欲求の領域まで満たされていくことです。これからの総務は、例えばハイブリッドワークを推進するなど従業員の働く環境をより充実させ、選択肢をつくることを通して精神的欲求の領域までサポートしていくことが大切です。

従業員がよりウェルビーイングを高められる職場環境とは?

総務の立場で従業員の精神的欲求を満たすためには、具体的にどのような環境が考えられるでしょうか。

  1. ライフステージやキャリアステージに応じて働き方を選べる環境

従業員が選択肢を持つことは、ウェルビーイングを実現する上で大切な要素です。コロナ禍を契機にリモートワークが拡大しましたが、それに伴い、時間や場所にとらわれない多様な働き方を求める声が高まっています。厚生労働省にも、仕事に対する価値観や生活スタイルの個別・多様化、変化する環境を背景にして、ライフステージやキャリアステージに合わせた多様な働き方を求める労働者が増えていることを報告されています。

従業員にとってワーク・ライフ・バランスは重要なポイントです。「今の自分に最適な働き方」を実行できる環境は社内制度と関係し、総務が果たせる業務の1つです。個々が働き方を選べる環境は従業員エンゲージメントの向上とともに、精神的欲求を満たすことに大きく関与しています。

  1. 企業、部門、チームに「自分がいてもいいんだ」という安心感を与える環境

従業員のウェルビーイング実現に向け、注目を集めている概念が「心理的安全性」です。心理的安全性とは、メンバー全員が次の4つの不安を感じず、部署内で自分が思ったことを発言しても対人関係を損なうことはないと信じている状態を指します。

  • 無知だと思われる不安
  • 無能だと思われる不安
  • 邪魔していると思われる不安
  • ネガティブだと思われる不安

心理的安全性は、ウェルビーイングの要素「精神的、社会的によい状態」に関わるものです。従業員に「自分がいてもいいんだ」という安心感を与える環境も、従業員のウェルビーイングを実現する上で欠かせません。

総務が認識しておくべきウェルビーイング投資とは?

健康経営や人的資本経営などが注目される現在、企業が事業活動の生産性や従業員エンゲージメントを向上させるには、ウェルビーイングの水準を一定以上に高めることが求められています。それを実現するには、相応の投資(予算)が必要です。

このテーマでは、ウェルビーイングにかける費用について解説します。

現状ウェルビーイングに使う予算はファシリティコスト内で5%程度

従業員のウェルビーイング実現を図るには、自社の現状を把握し、あらためて十分な予算を確保するためにウェルビーイングにかける費用を見直すことが第一歩です。企業では、従業員1人あたりのウェルビーイングにかけている費用はいくらなのかをご存知でしょうか。

オフィスを賃貸している場合に、企業がかけているファシリティコストを、従業員1人あたりに換算すると年間100~200万円かかっています。半分は家賃などの不動産コストが占めており、現状ウェルビーイングのために使っている予算はそのうち5%程度です。

下記は、総務コストと社員ハピネスの関係を可視化したものです。従業員のウェルビーイングに直接関わる「福利厚生・健康経営・WELL」に予算を費やしている企業が、まだ少ないことは想像に難くありません。

総務戦略「総務コスト×社員ハピネス」
出典/監修者・金英範

従業員へのウェルビーイング投資はファシリティコスト内で10~15%必要

人的資本経営の流れを受けて人を資本ととらえた場合、ウェルビーイングに直接関わる「福利厚生・WELL系」施策には、現在の2~3倍を投資すべきだと考えます。つまり、従業員1人あたり年間10万~15万円は必要です。その財源を捻出するのが戦略的な総務の考え方であり、ファシリティマネジメントです。

従業員のウェルビーイングを高めるためには、ファシリティコストの10~15%分の予算が必要です。それを確保することはウェルビーイングを実現するだけでなく、従業員の生産性などを高めて競合企業に打ち勝つことにもつながるため、企業の経営戦略として重要な意味を持ちます。

総務コストを増やさずにウェルビーイング予算を確保するには?

従業員のウェルビーイング向上は、すでに待ったなしの経営戦略です。健康経営は、ESG資本市場(環境・社会・企業統治)における「S」に位置づけられますが、近年多くの機関投資家が健康経営への取り組みをESG投資の評価基準に組み入れる動きが見られます。

また、2021年に改訂されたコーポレートガバナンス・コードには、「従業員の健康・労働環境への配慮」に関する記載が追加されるとともに、経営戦略における「人的資本への投資」に関する情報開示が言及されています。2023年1月には「企業内容などの開示に関する内閣府令」の一部が改正され、証券報告書を発行する約4,000社の企業を対象に、3月期決算から人的資本に関する情報開示が義務化されました。

こうした動向を踏まえ、総務はウェルビーイングに対する予算を確保する責務があります。従業員1人あたりのウェルビーイング予算を増やすためには、どのような方策があるのでしょうか。

1.柔軟な働き方としてハイブリッドワークを提案し、オフィスをコンパクト化

ウェルビーイング予算を増やすには無駄を削減し、その分のコストを従業員のウェルビーイング実現に活用することが鉄則です。減らすべきコストを見極めるためには、総務が関わる予算を把握することが重要です。

総務戦略「総務サイフ 賃貸オフィスの場合」
※賃貸オフィスを想定した総務サイフの内訳。自社ビルの場合は不動産にウェルビーイングへの投資が可能なため、その費用は減価償却に含められる
出典/監修者・金英範

上記の円グラフを見ると、総務サイフの約半分は不動産コストが占めています。これをリモートワークも選択できるハイブリッドワークに切り替えれば、オフィス規模をコンパクト化できます。ハードにかかるコストを削減し、その分をウェルビーイング予算に活用すれば、従業員1人ひとりに応じた柔軟な働き方を提案することが可能です。

  1. 不動産コスト削減で浮いた分をウェルビーイング予算にまわす

例えば、従業員1人あたりのファシリティコストを年間100万円と想定して考えます。下記の棒グラフで「総務サイフ」をチェックすると、半分はハードが占めています。

総務戦略「削減コストの部門をまたいだ再投資計画」
出典/監修者・金英範

そこで、ハイブリッドワークに切り替えてオフィス規模をコンパクト化できれば、「オフィス賃貸費」「電気空調」「清掃・警備」「メンテナンス」「家具什器」にかかる費用を削減できます。そうすればハード面で50%、金額にして従業員1人あたり年間30万円相当のファシリティコストを削減できます。

こうして浮いた30万円のうち、10万円を人事予算、同じく10万円をIT予算に移管すれば別部門でもウェルビーイングに投資できます。総務サイフから人事部門、IT部門にそれぞれ年間1人10万円を振り分けられるのは、企業にとって大きなメリットです。残り10万円ありますが、会社にとっては経費削減できたため、新たなビジネス創出への投資などさまざまな使い道を考えられます。

1人あたりの総務コストを年間100万円から70万円に下げたとしても、その予算の使い道をオフィスなどのハードから社員サービスなどのソフトへと切り替えることで、従業員エンゲージメントを十分に高めることが可能です。

2.コミュニケーションを活性化するための増床

一方、オフィスをコンパクト化し、ハイブリッドワークによって働く場所を二分化するとデメリットも生まれます。従業員同士のコミュニケーション不足や組織としての成長の鈍化など、リアルコミュニケーションが減少することによる課題です。

そのような課題に直面した場合はオフィスの席数を増やすなど、コミュニケーションが円滑になる環境をつくる柔軟な対応が必要です。従業員が自分のスケジュールで出社できる、一人ひとりが心地よく仕事に集中できるなど、オフィス環境は組織の生産性・エンゲージメントを高める要素です。

ウェルビーイングの研究者・前野隆司教授は、ウェルビーイングにつながるオフィス環境について次のように語っています。「みんなが利他的になる、助け合うオフィスとはどういうものか。具体的には、コミュニケーションがとりたくなる、やる気が出る、モチベーションが上がるなどポジティブな行動を起こせるようなオフィスをつくるにはどうすればいいのかを考えたオフィスづくりが大切です」

従業員同士のコミュニケーションはウェルビーイングのポイントであり、そのための選択肢をつくっておくことも重要です。

まずは実現できることから始めよう

従業員のウェルビーイング向上に取り組むのは、企業として待ったなしの経営戦略です。総務は時代に適応して、それが実現できるように責任を果たすことが大切です。まず、ウェルビーイング実現のためにどのくらいのコストが必要か、またそのコストはどのようにすれば確保できるのかを把握し、その正当性を経営陣に説明することが望ましいでしょう。

1つの手段としてハイブリッドワークは働く場所と時間を選ぶための有益な手段であるだけでなく、ウェルビーイングコストの確保にもつながります。従業員のウェルビーイングを実現するためには、ワーク・ライフ・バランスへの配慮は欠かせません。まずは柔軟な働き方の提案としてハイブリッドワークを検討してみてはいかがでしょうか。

ワーク・ライフバランスとは

社内制度と同時に、オフィスなどハード面の環境整備も重要です。一人ひとりが心地よくすごしやすいオフィス空間は従業員にウェルビーイングをもたらし、チームの生産性・エンゲージメントを高めます。オフィス空間への投資は、ウェルビーイングへの投資と深く関わっています。

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健康的で生産性高く働くワークプレイスの作り方

金 英範

監修者
金 英範

早稲田大学理工学部建築学科卒。オフィス設計事務所勤務を経て、米国大学院にて「ファシリティマネジメント修士」を取得。帰国後、モルガン・スタンレー・グループ株式会社、ゴールドマンサックスJapan、メリルリンチ日本証券株式会社、米ジョンソンコントロールズ、日産自動車など、25年以上にわたって総務・ファシリティマネジメント業務にたずさわる。現在は「株式会社Hite&Co.」の代表取締役社長として戦略総務、ファシリティマネジメント業務に関するコンサルティング、および総務組織の専門性向上やリスキリングなどの業務を受託する。

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