「片持ち架構を用いた「膜屋根」では、632台の競技用照明がスタジアム内を照らす。
(陸上競技:アジア競技大会のパターン。4方向平均鉛直面照度2,000lx以上、地表面水平面平均照度2,000lx程度)

公園とまちをシームレスにつなぐ
競技場の整備計画



1941年に竣工して以来、幾度もの大規模改修を繰り返してきた名古屋市瑞穂公園陸上競技場が建て替えられることとなった。計画にあたっては興行的な機能拡充だけでなく、住宅街に囲まれた約24haに広がる公園との一体性を高めることが求められた。名古屋市は、民間企業のノウハウによる運営効率の最大化を図るためにPFI※を採用。事業推進のため特別目的会社(SPC)として株式会社瑞穂LOOP-PFIが設立された。新スタジアムの最大の特長は、スタジアムを閉ざされた施設ではなく、広大な瑞穂公園全体の都市景観とシームレスに連続させたことにある。これを具現化するのが、スタジアムの3階コンコースと山崎川をまたいだ対岸のレクリエーション広場をフラットにつなぎ、空中デッキで8の字を形成する全長約1キロメートルの回遊路「MIZUHO-LOOP(瑞穂ループ)」。この一部であるスタジアム3階コンコースは、イベントがない時には一般市民に無料開放され、散歩やランニングコースとして日常的に親しまれる設計である。なお、当施設は2026年秋のアジア競技大会・アジアパラ競技大会のメイン会場に選定されている。

  • PFI(Private Finance Initiative):民間資金等活用事業

名古屋市瑞穂公園内のパロマ瑞穂スタジアム名古屋市瑞穂公園内のパロマ瑞穂スタジアム

膜屋根と周囲の木格子を浮き上がらせるライトアップ膜屋根と周囲の木格子を浮き上がらせるライトアップ

パロマ瑞穂スタジアムと公園をつなぐ8の字回遊路の「MIZUHO-LOOP」では、周囲への光漏れを抑えた特注照明を採用パロマ瑞穂スタジアムと公園をつなぐ8の字回遊路の「MIZUHO-LOOP」では、周囲への光漏れを抑えた特注照明を採用



多彩な国際スポーツに対応する
体験価値を高めたスタジアム

パロマ瑞穂スタジアムは旧競技場と比べて建築規模が大幅に拡大され、地上6階建で、延床面積は約61,314㎡を誇る。全席を覆う屋根は、全ての観客席に雨よけを提供しつつ、適度な自然光をスタンド内部に取り込むことで、快適な観戦環境を作り出している。
新スタジアムでは、LED投光器「スタジアムビーム」を屋根上部および5階レベルのキャットウォークに計632台配置(狭角配光496台・中角配光136台)。各投光器をDMX制御することで、陸上競技やサッカーをはじめとする各種競技の国際基準に対応した照明環境を構築した。
陸上競技では、世界陸上競技連盟(WA)の照明基準である4方向平均鉛直面照度2,000lx以上を確保し、世界レベルの競技大会や映像配信にも対応可能な高水準の照明環境を実現している。
サッカーでは、名古屋グランパスのホームスタジアムとしての利用を想定し、高さ1mにおける水平面照度2,000lx以上を確保。J1クラブライセンス基準を満足するとともに、FIFAが定める水平面照度2,500lxおよび厳しい鉛直面照度基準にも適合し、国際試合や高品質な映像配信に対応する照明環境を実現。 また、DMX制御により照明と大型映像・音響の連動が可能となり、スポーツ観戦の魅力を高める演出空間の創出にも貢献している。
照明計画ではスタジアム3階とレクリエーション広場をつなぐMIZUHO-LOOPを核として、新スタジアムとその周辺の豊かな自然環境、特に山崎川沿いの桜並木や公園内の緑のネットワークとのシームレスな融合をめざした光のデザインが展開されている。
新スタジアムが位置する瑞穂公園は閑静な住宅街に隣接し、貴重な河川生態系があるため、光害に対しても配慮が行われている。CASBEEの評価プロセスでは、屋外および屋内の照明設備から外部に漏れる不要な光を最小限に抑えるように規定されている。このため、園路においても上空や周辺地域への光漏れを抑える配光制御技術が用いられている。

建築設計Report vol.58/2026年9月発行
※会社名、役職名などは掲載時のものです。

膜屋根端部に設置された「スタジアムビーム」は、DMX制御による動きのある照明演出で観客を盛り上げる膜屋根端部に設置された「スタジアムビーム」は、DMX制御による動きのある照明演出で観客を盛り上げる

日常的に市民に開かれた幅約6m、1周約635mの3階コンコース。ジグザグのベースライトと県産の杉を用いた木格子のライトアップが印象的日常的に市民に開かれた幅約6m、1周約635mの3階コンコース。ジグザグのベースライトと県産の杉を用いた木格子のライトアップが印象的

サッカー:FIFAの点灯パターン(計算面高さ1mでの水平面平均2500lx以上)サッカー:FIFAの点灯パターン
(計算面高さ1mでの水平面平均2500lx以上)

ラグビー:リーグワンの点灯パター(計算面高さ1.5mでの水平面最小1500lx以上)ラグビー:リーグワンの点灯パターン
(計算面高さ1.5mでの水平面最小1500lx以上)

膜屋根端部に設置された「スタジアムビーム」
膜屋根端部に設置された「スタジアムビーム」

キャットウォークに設置された「スタジアムビーム」と客席照明「グラウンドビーム」(右下)
キャットウォークに設置された「スタジアムビーム」と客席照明「グラウンドビーム」(右下)

スタンドに設置された大型映像装置
スタンドに設置された大型映像装置

3階コンコースのデジタルサイネージはイベントに連動した内容や地域の情報を提供
3階コンコースのデジタルサイネージはイベントに連動した内容や地域の情報を提供

キャットウォークに設置されたアレイスピーカー
キャットウォークに設置されたアレイスピーカー

5階場内放送室に設置された調光操作卓「TESTA」(中央奥)とオーディオミキサー(右)
5階場内放送室に設置された調光操作卓「TESTA」(中央奥)とオーディオミキサー(右)

上方への光を抑えたスタジアムサイドの街路灯
上方への光を抑えたスタジアムサイドの街路灯

上方への光を抑えた公園内の街路灯
上方への光を抑えた公園内の街路灯

パロマ瑞穂スポーツパーク

パロマ瑞穂スタジアム

所在地/愛知県名古屋市瑞穂区山下通5丁目1番地ほか
建築主/株式会社瑞穂LOOP-PFI
設計/日本設計・竹中工務店・プレック研究所設計共同体
建設工事/株式会社竹中工務店
電気設備工事/ダイダン株式会社、株式会社トーエネック、
       株式会社関電工
       内、映像・音響設備工事:株式会社関電工
竣工/2026年3月
規模/RC造・一部S造、PC造(膜構造)地上6階建(延床面積:約61,314㎡)

ZEB Ready 認証取得
CASBEE-Sランク認証取得

主な設備

● LED投光器 ● 音響設備 ● 大型映像装置 ● LEDサイネージ ● 照明制御システム ● LEDスポットライト ● LED街路灯

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