京町家の特徴である細長い敷地に建てられた吉田邸は、店、住居、蔵をたたきが結ぶ。部屋を幾通りにも使う柔軟さや、工夫をこらした建具に完成された町家文化を感じさせる。
坪庭をのぞく和室。住宅中ほどにある坪庭は、風通しや明かり採りの意味も兼ねています。また、座敷中央には普段、座卓となる天板が置かれ、低い視線から床の間や坪庭を眺められるように工夫されています。
明治の後期に建てられた京町家として、今にその特色を伝える吉田邸。盆地で狭い京都の市街地を反映して、通りに面した間口は5間半(約10m)と奥行きに比べて極端に狭く、縦に長い家の造りが町家の最大の特徴です。吉田邸は、建築当時は、ちりめん問屋で通りに面したお店、奥の住まい、蔵を同じ敷地内に配置し、通り庭と呼ばれる1間幅(約1.8m)のたたき(土で固めた土間)が奥に一直線に延びて、それぞれのスペースをつないでいます。
お店や住まいのスペースを隔てる戸や、ふすまなどを使った廊下と和室を隔てる戸は、今の時代の可動間仕切りやパーティションの先駆けとも考えられます。狭いスペースを幾通りにも使う柔軟な発想に驚かされます。戦後に一般化した洋風スタイルの住宅が、各室ごとに用途を決めてデザインされるのとは対照的です。
また、火袋と呼ばれる吹き抜けスペースに見られるように、柱ではなく壁(土)を主体にした構造を住居の中に確保しておくことで、万一の火災の時にも、火を縦方向に誘導し、隣家への延焼を防ぐなど、密集地ならではの安全への工夫も見られます。
12枚の戸を一箇所で納められる戸袋や、嫁隠しと呼ばれる袖(戸板)など、住まいに使われる建具も随所に細かな大工の知恵と工夫が見られ、その時々の暮らし方を反映して形作られてきた京町家の完成した工芸品を見る思いがします。
住居中ほどにある火袋と呼ばれる吹き抜けスペース。
住宅に土壁の構造体を設けることで、延焼を防ぐ役目をしています。
通りに面した弁柄格子の伝統的な京町家の店構え。店先には「揚ゲ店(バッタリ床机)」と呼ばれる折りたたみ式の縁台があり、祇園祭の時などには今も使われています。
嫁隠しと呼ばれる戸板。土間には出入りの人たちが入ってくるため、家人が身なりを整える間と空間をもうけるために工夫されています。
通り庭には、表通りから戸口、中戸口など、店、住居、台所ごとに引き戸が設けられています。奥の蔵などに荷物を運ぶ際には、敷居ごと外し、開き戸として荷車を通せるように工夫しています。
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