住まいは文化

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2005年7月更新

先人たちが遺してくれた住まいづくりの知恵 「住まいは文化」

沖縄県 竹富島の民家 上勢頭家


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年間を通して高温・高湿な竹富島。伝統的な建築様式には、暑気を逃がすための配慮がなされている。竹など材木や構造の工夫で、台風に耐えうるしなやかな住まいになっている。

南に大きく開口部を設け、窓も大きく取った座敷。最もよい席を一番座と呼んでいる。

沖縄県竹富島は石垣島などのある八重山諸島に属し、亜熱帯性の気候です。年間を通して気温・湿度が高く、特に夏の高い気温と驟雨(スコール)、それに数多い台風が特色です。ですから、竹富島の昔ながらの民家は、通気性のよい涼しく過ごせる工夫と、強風にも耐えうる様々な工夫がほどこされています。竹富島の集落は、沖縄県の数多くの島のなかでも今では数少なくなった伝統的な集落が保存されています。これは、島を挙げて古材の再利用のための倉庫を造ったり、伝統的な民家や周りの防風林を保存してきた結果です。1987年に重要伝統的建造物群保存地区に選ばれました。

上勢頭家の主家は、この地域でよく見かける民家と同じように、広い座敷を中心に作られています。沖縄では、座敷の場所によって「一番座」「二番座」「三番座」と順位をつけ、客は上位の席へ案内する習慣があります。玄関はなく、庭から直接座敷へあがるようになっています。冠婚葬祭時には、襖を取り払って広い空間を作れるようになっています。
開口部を広くとって、さらに床下や天井などには竹を組んで通風性を確保しています。柱は一般的には硬い木質で耐久性のある「犬槙」(沖縄ではキャンギーと呼ぶ)を使いますが、上勢頭家では、中心になる柱には更に硬質な「桑の芯木」を使用しています。梁は寺社建築に使われる「大鎌継ぎ」という技法で組まれ、家全体が木材のしなやかさを生かした造りになっています。

畳の下は、通風性を重視して肉厚な蓬莱竹(小浜竹)を組んで下地にしている。

上勢頭家の外観。珊瑚礁の砂を敷いた路地や庭と、一体感のある造りになっている。

柱に犬槙が使われるのは、固くて湿度に強く、シロアリを防ぐ作用があるため。


棟木には、大正11年に棟上げがされたと銘が記されています。棟木に記念日を記したり、家運を祈ることは、日本各地で見られますが、上勢頭家の銘文は「天官賜福紫微鑾駕」(てんかんしふくしびらんか)と中国文化の影響を受けた銘が書かれています。この銘は、「天から幸福を賜りますように。天子の住むような立派な家にあやかって、光り輝く永久の家となりますように」との願いをこめた文字です。

上勢頭家は、防風・防水対策がきちんとされていたために、80年以上にわたって住み続けることが可能だったのでしょう。木材の材質はもちろん、柱の礎石に通水性がよい珊瑚の礎石を据えています。屋根には琉球瓦と珊瑚石灰を用いた漆喰が使われています。雨が降れば吸水し、その後屋根に含んだ水が蒸発するときの気化熱で、天然のクーラーになるという知恵には驚かされます。
家の周囲を、福木の防風林と石垣とで囲み、暴風を防ぎます。歴史の中で育まれた安全な家づくりの技術が、今に引き継がれているのです。

天井と棟木。銘が墨書されているのが見える。

赤い琉球瓦の屋根。竹富島では、瓦職人によってシーサーが異なるという。

竹富島で見られる珊瑚の石灰石を積んだ石垣。加工しない天然石を積んだものを「野面」(のづら)と呼ぶ。風が適度に抜けるので、風の勢いを弱める効果がある。


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