高天井用LED照明器具が採用された洋野町役場種市庁舎の4層吹き抜けエントランスホール

各省の補助金を有効活用をし、公共施設を段階的に省エネ

岩手県北部にある洋野町は、2006年1月に、旧種市(たねいち)町と旧大野村の町村合併によって誕生した。海岸部の種市地区は海産物が有名で、ウニの生産量は県内一。また、大野地区は酪農・畜産業が盛んで椎茸などの特産品にも恵まれている。
東日本大震災では、洋野町における死者・負傷者は無かったものの、漁業・畜産業が大きな損害を被った。とくに震災時の停電によって、大野地区では多くの乳牛が搾乳できずに罹病。また、養鶏場では多数のブロイラーが暖房ができないために凍死した。このため、洋野町は震災後に停電時の電力供給体制の強化に努め、太陽光発電や風力発電の整備も進めている。
2015年度に取り組んだ総務省の「スマートグリッド通信インタフェース事業」は、公共施設における消費電力削減やエネルギーの効率利用をめざすもの。種市庁舎を拠点に、大野庁舎、ひろの水産会館、八木防災センター、4つの公共施設に電力計測装置を設置してEMSネットワークを構築。計測データを種市庁舎のサーバに集めてエネルギーマネジメントを行う。
電力使用量の大きい庁舎の照明をLED化し、サイネージによる電力の「見える化」により電気使用を抑制し、町民の省エネ意識向上も図られた。さらに、すでに太陽電池モジュールが設置されていたひろの水産会館と八木防災センターには蓄電池を設置して、BCP(事業継続計画)機能も強化。この結果、2017年度で使用電力量が7%減、電気料金は17%削減されている。

洋野町役場種市庁舎

LED照明器具にリニューアルされた1階執務室

2015年度の事業で設置された「見える化」サイネージには、現在8施設の状況が表示されている

主要施設もネットワークして運用で更なるCO₂削減を図る

2017年度には環境省の「地方公共団体カーボン・マネジメント強化事業」に着手。前年度に洋野町のCO₂総排出量や、160余りある施設の設備稼働率と電力消費量を調査し、設備更新により大幅削減が可能な施設を抽出。その結果、種市庁舎のボイラーを含めた7施設の電気設備を更新することとなった。種市庁舎では既存の吸収式冷温水機を高効率の機種にリプレイス。隣接する複合施設(図書館・資料館・体育館・武道館)、洋野町民文化会館、種市屋内温水プール、アグリパークおおさわ、グリーンヒルおおの、マリンサイドスパたねいちにLED照明を導入し、既設EMSネットワークに接続。デマンドコントロールなどの手法を用いて洋野町主要施設のCO₂排出量削減に取り組む。また、運用面では照明制御システムを活用してノー残業デーにおける一斉消灯などで消し忘れを防止。これら多様な取り組みにより、洋野町は2020年には2015年比11%減のCO₂排出量削減をめざしている。

建築設計Report vol.28/2019年2月発行
※会社名、役職名などは掲載時のものです。

種市庁舎の高効率吸収式冷温水機

種市庁舎の高効率吸収式冷温水機

段階的に進む洋野町のスマートコミュニティ

2015

❶洋野町役場 種市庁舎

種市庁舎の照明制御システム

❷洋野町役場 大野庁舎

LED照明が採用された大野庁舎の執務室


エントランスに設置された「見える化」サイネージ

❸ひろの水産会館

屋外設置された産業用リチウムイオン蓄電池

2017年

❺アグリパークおおさわ

客室や宴会場もLED照明にリプレイス

❻洋野町民文化会館

ホワイエに設置されたLED照明器具

❼種市屋内温水プール

温水プールに設置されたLED投光器
※保温と防湿のため、不使用時は水面がビニールシートで覆われている

❿複合施設

体育館の高天井用LED照明器具

図書館

岩手県洋野町スマートコミュニティ

所在地/岩手県洋野町
事業主/洋野町
施工/パナソニック システムソリューションズ ジャパン株式会社
   パナソニック システムネットワークス株式会社
電気工事/種市電工株式会社
竣工/2018年3月

主な設備

● LEDベースライト iDシリーズ ● LEDスポットライト ● 電力計測センサ ● EMSサーバ ● 照明制御システム ● サイネージ ● 産業用リチウムイオン蓄電池 15kWh(ひろの水産会館) ● リチウムイオン蓄電池 5kWh×3台(八木防災センター) ● 吸収式冷温水機

東北復興ソリューション

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