陸前高田市庁舎
執務室前の待合スペースには暖色系のLEDダウンライトが採用され、
落ち着いた雰囲気を醸し出している
災害時の行政機能継続をめざす災害に強い新市庁舎が竣工
陸前高田市は東日本大震災の津波で未曾有の被害を受け、市庁舎も全壊した。復興に際し、市は「生活の再建と生業の再生を最優先に、市庁舎は復興事業の一番最後」の方針のもと、仮庁舎で業務を続け、新市庁舎の竣工は震災後10年余となる2021年3月となった。
新市庁舎はかつての場所から約700m内陸側の旧高田小学校跡地に建てられた。災害時における行政機能の継続を設計コンセプトに掲げ、庁舎棟に免震構造を採用。非常用発電機を屋上に設置したほか、災害対策本部が開設可能なスペースを執務空間とは別に上層階に確保した。
上水道は災害時に一定の上水を確保するため受水槽方式としている。また、だれもが利用しやすい市庁舎をめざして1階に市民交流スペース、7階に市街地や海が一望できる一本松記念館・展望ロビーを開設。車椅子で利用できるローカウンターや、視覚障がい者の白杖を検知して音声案内を流すシステムなどの設備も導入された。
業務開始後、来庁者に加えて、市職員が近隣施設を利用するといった人の流れが生まれている。「公共施設の整備はほぼ完了した。今後は、まちのにぎわい創出や心の復興につなげていきたい」と陸前高田市総務部財政課 主幹の菅野 優氏は語る。
建築設計Report vol.40/2022年2月発行
※会社名、役職名などは掲載時のものです。
地元産木材を多用したエントランス
パーテションを設置することで多目的に使用できる1階市民交流スペース
来庁者に開放されている7階一本松記念館・展望ロビー
7階大会議室。災害時には災害対策本部を置くことも想定
市民に開かれた議会をめざし傍聴席も完備する議場
記者会見の会場にも使用される3階政策会議室
守衛室に設置された照明制御・映像・非常放送設備
かさ上げ後、海抜約17mになった敷地に建つ新市庁舎
陸前高田市庁舎
所在地/岩手県陸前高田市高田町
事業主/岩手県陸前高田市
設計・監理/株式会社NTTファシリティーズ東北支店
施工/日本住宅・長谷川建設特定共同企業体
竣工/2021年3月
主な設備
● LEDダウンライト ● システム天井用照明器具 「グリッドシリーズ」 ● 一体型LEDベースライト「スクエアシリーズ」 ● LED街路灯 ● 一体型LEDベースライト「iDシリーズ」 ● 照明制御システム ● ラック形非常放送システム ● ネットワークカメラ