花畑広場から光のランドマークとなったサクラマチ クマモトを望む

昼も夜も歩いて楽しめる魅力的な都市空間

熊本市は、熊本城地区、通町筋・桜町周辺地区、新町・古町地区、熊本駅周辺地区を中心市街地に位置づけ、高次な都市機能が集積した“くまもとの顔”として、さらなるにぎわいの創出を図っている。同市の中心部では、通町筋の百貨店周辺と桜町の再開発地区を2つの核とし、それを3つのアーケードで結ぶ「2核3モール」が特徴である。 しかし、1980年代をピークに中心市街地の歩行者数は減少を続けた。そこで計画されたのが桜町・花畑地区の再整備。これは、単に民間ビルの再開発だけではなく、それに合わせ、行政も隣接する道路を廃止し、周辺公園と併せてオープンスペースを整備するという、中心市街地の一等地で行われた官民連携の一大事業。広場・公園も含めた再開発地区面積は約5.2haにおよぶ。 2019年9月から順次、バスターミナル・商業施設・熊本城ホールなどの複合施設がオープン。さらに、2021年11月には施設前にある花畑広場が全面供用開始された。 熊本市は、新しいテーマとして「昼も夜も歩いて楽しめる魅力的な都市空間の創造」を掲げ、夜間景観にも配慮した回遊性の高いまちづくりをめざし、「光のマスタープラン」を策定。 また、国土交通省と内閣府が進める「新しいまちづくりのモデル都市」の一つにも選ばれ、まちなかに歩行空間の拡充や、グリーンスローモビリティなどの導入も検討している。2つの拠点整備が完了し、次のステージとして、新たに整備した空間を最大限に「つかう」ための事業推進が計画されている。

熊本市中心市街地活性化基本計画エリア

図

垂直方向の回遊庭園を備えた交通と交流の結節点

2019年9月、熊本市の熊本交通センター跡地に商業施設や公益施設、ホテル、共同住宅、バンケット、シネマコンプレックス、日本最大級のバース数を擁するバスターミナルなど、多様な機能を備えた大型複合施設が誕生した。敷地面積約3万m2、延床面積約16万m2、地下1階・地上15階の新しいランドマークで、熊本城と庭つづき、まちに開かれた「おもてなしの庭」と位置づけられている。その商業施設が「サクラマチ クマモト」。「ここには1969年にオープンした日本最大級のバスターミナルがあった。屋外バスターミナルは排ガスや天候の影響があり、商業施設も老朽化していたため建て替えを検討していたところに、熊本市で桜町地区にホールを新設する計画があり、市と一体となった複合施設が誕生することとなった。整備された『熊本城ホール』を交流の場と捉えると、サクラマチ クマモトは交通の結節点であり交流の結節点でもある」と語るのは九州産交ランドマーク株式会社 取締役 管理部長 山田 大志氏。
「ここは熊本城の南に位置し、かつては細川家ゆかりの『陽春庭』があった花畑公園を含む花畑広場に隣接するエリア。屋上には陽春庭と同じ、借景・水景・築山・舞台の要素を継承した屋上庭園を設けた。各階にはストリートビューテラスに庭を配し、一年を通して緑あふれる常緑樹、四季折々の表情を示す落葉樹、地被植物や花々など、200種以上、3,000本・株以上の植栽を設けている。これにより、1階から商業デッキ、サクラマチガーデンへと人を誘い、屋上に人びとを引き上げる。さらに、屋上では熊本城ホールから出てきた人を商業施設に降ろす動線を確保してシャワー効果も高めた。2021年には花畑広場が全面供用開始してアーケード街から人が訪れるようになった。 回遊と交流によって、この地域のにぎわいを高め、観光拠点となるように、今後も進化を続けていきたい」と九州産業交通ホールディングス株式会社 営業企画推進プロジェクト 部長 片岡 隆博氏は語る。

建築設計Report vol.40/2022年2月発行
※会社名、役職名などは掲載時のものです。

3階ストリートビューテラスから熊本城方向を望む
3階ストリートビューテラスから熊本城方向を望む

「陽春庭」と同じ要素を継承した桜町庭園(左は熊本城ホール)
「陽春庭」と同じ要素を継承した桜町庭園(左は熊本城ホール)

秋には紅葉が楽しめるストリートビューテラス
秋には紅葉が楽しめるストリートビューテラス

ガーデンライトを中心とした庭園のような照明計画
ガーデンライトを中心とした庭園のような照明計画

各施設を繋ぐサクラマチ ガーデン
各施設をつなぐサクラマチガーデン

3階テラスから住宅・ホテル棟を望む
3階テラスから住宅・ホテル棟を望む

吹き抜けの2階コンコース
吹き抜けの2階コンコース

1階に設けられた29バースのバスターミナル
1階に設けられた29バースのバスターミナル


サクラマチ クマモト

所在地/熊本市中央区桜町
事業主/熊本桜町再開発株式会社
設計/日建設計・太宏設計 共同企業体
施工/大成・吉永・岩永・三津野・新規 建設工事共同企業体
オープン/2019年9月

主な設備

● LEDガーデンライト ● LEDフットスタンドライト ● LEDシーリングライト ● LED建築化照明器具 ● 一体型LEDベースライト「iDシリーズ」 ● 入退室管理システム ● ネットワークカメラ

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