福島県新地町スマートコミュニティ
新地町庁舎から海沿いの新地駅にかけて、市街地復興整備も進む(2016年8月撮影)
新地町の未来を拓くまち全体のエネルギーマネジメント
福島県北部の浜通りに位置し、北と西を宮城県に接する新地町。西の阿武隈山系から伸びる丘陵間の平地に市街地や田園、果樹園が広がり、海には美しい砂浜が続く。
この地も、東日本大震災により大きなダメージを受けたが、被災者の生活再建のためのインフラ整備はほぼ完了するなど、復興のための各種事業が力強く進められている。2016年12月には、津波で被災したJR常磐線、駒ヶ嶺・浜吉田間が復旧し、新しい場所に念願だった新地駅がオープンした。2011年12月に環境未来都市に選定された新地町では、「環境未来都市計画」や「新地町復興計画」を推進する中で、まずは公共施設を中心とした省エネやCO₂削減が計画された。2015年度には、総務省の事業として、役場庁舎、図書館、保健センター、農村環境改善センター、総合体育館の照明をLED化し、照明・空調設備を制御することにより大幅な消費電力削減を実現。町の電力使用量を管理し、エネルギー利用を効率化するため、各施設の電力計測器を既設イントラネットに接続し、EMSサーバによって監視・制御。また、町内の一般家庭における省エネルギー行動支援システムと連携し、節電意識の向上と再生可能エネルギー利用の啓発を行い、地域全体のエネルギー需給の効率化が図られている。
50年後も見据えたまちづくりへの取り組み
新地町は環境産業共生型のまちづくりを提唱し、国立環境研究所と協定を結んで環境モデル都市のありかたを研究している。2015年度は公共施設のLED化や消費電力「見える化」の事業を行ったが、今後は公共施設だけでなく、一般家庭における省エネやCO₂削減といった次のステージを目指している。
JR常磐線の再開通に伴い、新たなまちの拠点として新地駅前の整備事業も進んでいる。ここでは商業・サービス施設や交流センターのまちづくりに加え、地域エネルギー事業にも取り組んでいる。
相馬港のLNG基地の天然ガスパイプラインがJR常磐線のすぐ東側を通る。新地町はエネルギーの地産地消をめざして、天然ガスを利用するコージェネレーションシステムを稼働。熱導管により熱と電気を新地駅周辺の商業施設や公共施設に供給し、同時にCEMSを導入することで、より効率的にエネルギーを供給するとともに、これに見える化システムをつなげられないかと検討している。現在125戸のモニター家庭に計測器を取り付け、家庭の消費電力をスマートフォンやタブレットに表示するサービスを行っている。将来的には、これも含めてまち全体で環境意識を高めることにつなげていきたいという。
今後は、町の生活情報や高齢者支援情報など、地域に有効な情報を双方向で交換できる仕組みをさぐる。2015年、環境未来都市の取り組みの一つとして、「50年後の新地町」というワークショップを開催した。ここでは、50年後にどのような町にしたいかを町の子どもたちに討議してもらい、「残したい物、つなげたい物、加えたい物」を検討した。こうした意見を町の総合計画に政策提言として反映させ、未来志向のまちづくりに取り組んでいる。
建築設計Report vol.20/2017年2月発行(改定:2020年3月)
※会社名、役職名などは掲載時のものです。
新地町役場のLED化された照明。ロビーにはエネルギー見える化システムのサイネージが設置されている
図書館のエントランスにもサイネージを設置
LED化された図書館の照明
総合体育館のロビーに設置されたサイネージ
LED高天井用器具に一新された総合体育館
町役場のEMSサーバ(左)と照明・空調を制御するWeLBA(右)
図書館の照明制御盤
体育館の照明制御盤
福島県新地町スマートコミュニティ
■スマートコミュニティ事業
所在地/福島県相馬郡新地町
事業主/新地町
施工/パナソニックシステムネットワークス株式会社
竣工/2016年3月
主な設備
● EMSサーバ ● 電力計測器 ● スイッチングハブ ● デマンドコントローラ ● エネルギー見える化システム ● LED照明器具 ● WeLBA(照明・空調制御)