大曲海岸に設置されたネットワークカメラと電力自立システム

津波災害を防ぐための非常時に強い監視システムが必要

東松島市は、東日本大震災による津波の被害が大きく、市街地の約60%が浸水しました。その復興まちづくり計画では、基本方針の一つに『防災・減災による災害に強いまちづくり』が掲げられ、防災自立都市を形成するための取り組みがなされています。その一環として、東松島市沿岸津波監視システム先行モデル事業が実施されました。これは、商用電力や有線情報ネットワークが利用できない災害時でも、太陽光発電システムと蓄電池により無線ネットワークを稼働する設備です。
「東松島市は政府により『環境未来都市』の一つとして指定され、その実現のために一般社団法人東松島みらいとし機構(愛称:HOPE)を立ち上げました。ここには多くの企業が会員として参加しておられ、さまざまな提言を頂いています。その一つが、この沿岸津波監視システムでした」と語るのは、東松島市復興政策部 部長 古山 守夫 氏(取材当時)。
東松島市は津波で大きな災害を被りましたが、その原因の一つとして、停電による防災無線や警報システムの機能停止が挙げられています。大津波警報が発表された時、危険な海岸に職員を派遣することはできないので、停電でも3日間機能する災害に強い監視システムが求められました。

沿岸津波監視システム図


大曲海岸から沖合を望む監視カメラ画像

電力自立システムにより停電時も無線監視システムを稼働

今回の東松島市沿岸津波監視システム先行モデル事業では、大曲海岸、浜市海岸、野蒜海岸3カ所に沿岸津波監視用のネットワークカメラを設置。浜市海岸に設けられた波高計データとともに、リアルタイムの映像を、市役所の災害対策本部に無線で伝送するように計画されています。
この無線システムの核となるのが、動画像が送れる5G無線リンク、波高データなど特小データ転送に適した920MHz、そしてWiFiと、3つの無線ネットワークの送受信に対応したマルチアクセスコンセントレータ。この電源を太陽電池パネルとリチウムイオン蓄電池からなる電力自立システムが供給しています。
このシステムは災害時だけでなく、平常時は釣り人や遊泳などの危険行為の監視や、WiFiによる気象情報提供、さらには今後増加すると予想される観光客に対する観光情報提供など、幅広い活用が検討されています。
また、古山 氏は次のように語ります。「自立電源で3日間も稼働する災害に強い映像監視システムとネットワークシステムは頼もしい限りです。また、海水浴場に観光客が戻れば、WiFiによる観光情報提供は東松島市の産業復興にも寄与すると思います」。

今回の津波より高い7mに設置された大曲海岸の津波監視システム

無線LANの中継基地局

市庁舎屋に設置されたアンテナ

防災課に設置されたPCの監視画像

主な設備

● マルチアクセスコンセントレータ ● アンテナ(5G,920MHz,WiFi) ● ネットワークカメラ ● 太陽光発電システム ● 蓄電システム ● 波高計

東北復興ソリューション

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