復興の象徴の一つとなった南三陸町の中橋。
夜間にはあたたかみのある光色の照明が灯り、水面にもその姿が映り込む

にぎわいのエリアから祈りの場へ回遊動線をつなぐ人道橋

宮城県南三陸町は東日本大震災の津波によって甚大な被害を受けた。中心市街地だった志津川地区の低地部では大部分の建物が流失。八幡川の中橋も失われた。復興に向け、地盤かさ上げ工事が行われ、新しいまちを「川や海との調和」「回遊性」をテーマとして、観光・商業エリアなどにゾーニングする「志津川地区グランドデザイン」が2014年に発表された。 担当した隈研吾建築都市設計事務所のパートナー・名城 俊樹氏は、「車やバスで来て、地区内は歩いて回れるヒューマンスケールで計画。商店街のあるにぎわいのエリアと祈りのエリアはつなぎかたが重要と考えた」と話す。2017年3月、八幡川左岸に「南三陸さんさん商店街」がオープン。2020年10月には右岸に「震災復興祈念公園」と、両岸を結ぶ人道橋の中橋も完成して回遊動線がつながった。
中橋は建築家・隈 研吾氏のデザイン。太鼓橋を思わせるフォルムで、ダブルデッキ構造。 旧中橋のように川を身近に感じたいとする地元の声がデッキ下段に反映された。千本鳥居に見立てられる高欄支柱が夜間には照明で輝く。床版などに南三陸町産杉材が多用されており、将来の木部交換は、地元の人々も参加する取り組みにできればと名城氏は希望を語る。

建築設計Report vol.40/2022年2月発行
※会社名、役職名などは掲載時のものです。


高欄の笠木内に設置された照明が上部デッキを照らし出す
高欄の笠木内に設置された照明が上部デッキを照らし出す

ダブルデッキ構造の人道橋で八幡川両岸がつながった
ダブルデッキ構造の人道橋で八幡川両岸がつながった

床版や高欄支柱には三陸町産杉材が使われている
床版や高欄支柱には南三陸町産杉材が使われている

ハイウォーターレベルを考慮しつつ親水性も実現
ハイウォーターレベルを考慮しつつ親水性も実現

南三陸町 中橋

所在地/宮城県本吉郡南三陸町志津川
建築主/宮城県南三陸町
設計/パシフィックコンサルタンツ・隈研吾建築都市設計事務所設計共同体
施工/矢田工業株式会社、飛島・大豊・三井共同建設コンサルタント南三陸町震災復興事業共同企業体、升川建設株式会社
完成/2020年9月

主な設備

● 建築部材用LED照明器具

東北復興ソリューション

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