江戸期から受け継がれる郡中惣代庄屋の邸宅
Vol.24
江戸期から受け継がれる郡中惣代庄屋の邸宅
岡山県高梁市成羽町は、かつて赤色顔料のベンガラ生産で知られた地で、江戸期には長く天領が置かれた。西江家はベンガラの製造販売で名を馳せた旧家であり、郡中惣代庄屋として地域を治めた。その邸宅は代官御用所も兼ね、威風堂々たる館構えである。国登録有形文化財、日本遺産。
西江家は江戸期の正保4年( 1647 )にベンガラ製造に着手したといわれる。その約100年後には本山鉱山を開坑し、銅採掘の副産物である磁硫化鉄鉱石からベンガラ製造の中間生成物・ローハの量産化に成功。ベンガラ製造は地域の一大産業に発展した。
西江家住宅は、中世の山城を思わせる石垣上に建ち、敷地は約3,000坪。江戸期創建の主屋・郷蔵や明治期創建の建物があり、部屋数は41間、計160畳にのぼる。石州瓦葺き、総二階建ての主屋は出雲の宮大工が1705年頃から25年余かけて建設したとされる。代官御用所にだけ許された五間続きのしつらえで、表側には江戸幕府の巡見使を迎えた式台のある本玄関、銀行の役割を担った銅勘定所の御用部屋、西江家当主が地域の軽犯罪を裁いた簡易お白洲付きの次の間などが並ぶ。ケヤキやヒノキ、松、黒柿といった高級材を多用した堅牢かつ重厚な普請で、床の間や長押はもとより随所がベンガラの赤で彩られ美しい。ベンガラには防腐・防虫作用もあることから構造材にも塗られ、今日まで建物の維持に効力を発揮してきた。主屋裏側は家人の居住部であるため、通り玄関の土間に格子戸を設置して公私の区別をつけているのも特徴的である。
西江家では、主屋に隣接する手習い場で番頭が子どもたちに読み書きを教えた。また、飢饉に備えて里人救済用の米や麦、ヒエを郷蔵に備蓄するなど、郡中惣代庄屋として地域の人々と共に生きる姿勢がうかがえる。西江家住宅は江戸期から昭和に至るベンガラ産業の拠点の一つであり、地域文化と深く関わった歴史を今に伝える貴重な住宅である。また、代々の当主が受け継ぎ、今なお居住している点も特筆すべきことである。
岡山県高梁市成羽町坂本1604