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健康経営とは?企業におけるメリットと実践方法をわかりやすく解説

健康経営とは?企業におけるメリットと実践方法をわかりやすく解説
本記事の概要
  • 健康経営の定義とともに、それが注目される背景を紹介します。生産年齢人口の減少が招く人手不足問題や職場の高齢化など4つの背景を取り上げます。
  • 健康経営を推進するために経済産業省がつくった「健康経営優良法人認定制度」、さらに健康経営に取り組むメリットについて解説します。健康経営優良法人とは何か、ホワイト500・ブライト500といった顕彰銘柄、4つのメリットについて説明します。
  • 健康経営を実践するための具体的な施策について理解を深めます。従業員のウェルビーイング向上を目指すために必要な「快適に働くための環境・制度の整備」という2つの視点からのアプローチを提案します。

健康経営と快適に働くための環境整備は深い関係があります。パナソニックでは、従業員が快適に働く空間づくりをはじめ、オフィスの移転や改修工事を契機にウェルビーイングな環境を実現できるように支援を行っております。

近年、従業員のウェルビーイング向上を目指す「健康経営」が注目を集めています。従業員の健康に配慮することはウェルビーイングの向上に寄与し、結果として企業の持続的な成長にもつながる大きな要因です。

健康経営の背景、メリットとはどのようなものでしょうか。また実践するためには、どのような方法があるのでしょうか。本記事では、健康経営の基礎情報について解説します。

健康経営とは

健康経営とは、従業員などの健康保持・増進への取り組みが将来の収益性など企業価値を高める投資と捉え、経営視点から健康管理を戦略的に実践することをいいます。

次のテーマでは、健康経営が注目される背景について紹介します。

健康経営が注目される4つの背景

健康経営が注目されている背景には、近年の社会問題が挙げられます。従業員の人手不足や職場の高齢化、ワーク・ライフ・バランスなどがあります。

1.人手不足問題

2020年から2050年にかけて、日本の総人口は20%減少すると推計されています。なかでも、生産年齢人口はその30年間で30%以上減少すると見込まれています。今後、人手不足はますます深刻な問題になることが予想されています。

2.職場の高齢化

人手不足問題の解決に向けて、企業はすでに高年齢者雇用確保措置を講じる義務があります。具体的には、定年制の廃止、65歳までの定年の引き上げ、または希望者全員の65歳までの継続雇用制度の導入が求められています。2025年4月からは、これらの措置がさらに厳格化され、希望者全員に対する65歳までの継続雇用が完全に義務化されます。これからの社会の活力を維持し、多様な働き方を推進するためには、年齢に関係なく、働く意欲のある人がその能力を十分に発揮できる労働環境が必要です。

実際、高齢者の就業数は増加の一途をたどっており、2020年には912万人と過去最多を記録しました。また、2022年の15歳以上の就業者総数に占める高齢就業者の割合は13.6%と過去最高を更新しています。

高齢就業者数の推移(2012~2022年)

3.従業員への健康投資

企業理念に基づいて従業員への健康投資を実践することは、従業員の活力向上や生産性アップなど組織の活性化をもたらし、結果として業績向上や株価向上につながると期待されています。

経済産業省が2024年3月に発表した「健康経営の推進について」では、健康経営度調査のスコアが上位にある企業ほど高い株価リターンが見込める傾向が示されています。また、経済産業研究所の分析によって、健康経営を経営理念に掲げて実践することが企業の利益率にプラスの影響をもたらすこともわかっています。

4.ワーク・ライフ・バランスによる社会的課題解決

働く人が社会経済構造の変化に適応するための重要な取り組みとして、国はワーク・ライフ・バランスを推進しています。経済産業研究所の分析によると、健康経営は「ワーク・ライフ・バランス施策にもプラスの影響を与える」と推計されており、社会的な課題解決の1つとして注目を集めています。

「ワーク・ライフ・バランス」の記事

健康経営優良法人認定制度

経済産業省は健康経営を推進するために、顕彰制度を設けています。2014年度から上場企業を対象に健康経営銘柄を選定し、2016年度からは健康経営優良法人認定制度も進めています。この制度を通して、大規模法人部門の上位500法人には「ホワイト500」、中小規模法人部門の上位500法人には「ブライト500」の冠を付加しています。

健康経営優良法人認定制度

健康経営銘柄

健康経営銘柄の目的は、東京証券取引所の上場会社の中から健康経営にすぐれた企業を選び、長期視点を持って企業価値向上を重視する投資家に対して、魅力ある企業として紹介することを通して健康経営の取り組みを促進することです。

評価にあたってはすべての上場会社に対し、従業員の健康に関する取り組みについて健康経営度調査を実施します。その分析・評価結果を銘柄選定の際の基礎資料として利用します。

健康経営銘柄企業には、健康経営を普及拡大するアンバサダー的な役割が求められています。具体的には、健康経営を実践することで「いかに生産性や企業価値に効果があるか」を分析し、ステークホルダーに対して積極的に発信することです。

健康経営優良法人・ホワイト500

健康経営優良法人制度の目的は、健康経営に取り組む優良な法人を可視化することです。そして、健康経営に取り組む優良法人が「働く人の健康管理を経営視点で捉え、戦略的に取り組んでいる法人」として、従業員や求職者、関係企業、金融機関などから社会的評価を受けることができる環境を整備することです。

大規模法人には、グループ会社全体や取り引き先、関係企業、顧客、従業員の家族などに健康経営の考え方を普及拡大するトップランナーの一員としての役割が求められています。

健康経営優良法人・ブライト500

健康経営を浸透させるには、地域の中小企業における取り組みを広げることが不可欠です。健康経営優良法人制度の中小規模法人部門の目的は、自社に合った優良な取り組みを実施する法人を積極的に認定し、健康経営のすそ野を広げることです。

中小規模法人に求められている役割は、自社の健康課題に応じた取り組みを実践し、健康経営の拡大のためにその取り組み事例を発信することです。

健康経営優良法人認定制度とWELL認証

経済産業省が発表する「健康経営優良法人認定制度【認定基準】」によると、評価項目については従業員の健康課題に関する内容が4つ、健康経営の実践に関する内容が3つ、従業員の心と身体の健康づくりに関する内容が7つ示されています。

認定要件として14項目中11項目以上満たすことが定められており、それぞれ4つのうち2項目以上、3つのうち少なくとも1項目、7つのうち3項目以上と設定されています。評価項目を確認すると、定期検診受診率やストレスチェックの実施、コミュニケーションの促進に向けた取り組み、従業員の感染症予防に向けた取り組みなどが挙げられています。

WELL認証の評価項目については空気や光、音、水などの10コンセプトに基づき120以上の項目があり、健康経営優良法人認定制度と比べると共通するものが多く含まれています。具体的には、次のような内容が共通項目です。

  1. 食生活の改善に向けた取り組み
  2. 運動機会の増進に向けた取り組み
  3. 長時間労働者への対応に関する取り組み
  4. メンタルヘルス不調者への対応に関する取り組み など

「WELL認証とは」の記事

パナソニックでは、WELL認証取得支援サービスを実施しています。WELL認証の取得は空間の環境計測から設備改善、申請・審査と対応することが多岐にわたるため、この支援サービスでは測定業務や申請資料の作成など実務サポートも行っています。

創業から100年以上、多彩な製品開発を通して人々が快適に暮らす環境づくりをしてきました。暮らしの快適さを定量的に測り、住空間を改善してきた経験と技術を生かしてウェルビーイングなオフィス空間の実現を支援いたします。

健康経営に取り組むメリット

健康経営に取り組むメリットには、どのようなものがあるのでしょうか。

組織の活性化と生産性の向上

職場での健康プログラムの実施は雇用・生産性の改善につながり、その効果は「1ドルの投資で4ドルのリターンに相当すること」が指摘されています。健康経営に6年以上取り組む企業では、従業員のプレゼンティーズムが下がり、生産性が高くなる傾向が見られたという調査結果もあります。プレゼンティーズムとは、何らかの健康問題によって業務効率が落ちている状況を意味しています。

また、健康経営に取り組んでいる企業を対象に効果について調査したところ、従業員の健康状態改善や健康へのリテラシー向上のほかに、企業ブランドイメージの向上、組織の活性化などの効果を実感したという回答が大きな割合を占めました。

Q:健康経営に取り組むことでどのような効果を感じていますか

人材の定着と離職率の低下

健康経営は、人材の定着にも有益なことがわかっています。経済産業省の調査によると、健康経営度の高い企業の方が離職率が低い傾向が見られました。

健康経営銘柄、健康経営優良法人における離職率

また、中小企業が従業員にとって働きやすい環境を整えることで、離職防止につながったという事例も報告されています。

優秀な人材の確保

健康経営優良法人のブランドイメージが人材獲得につながり、採用倍率が上がった事例もあります。当該企業では、ブライト500認定企業であることを前面に出して採用人材を募集したところ、前年度比で採用倍率が4倍に増加したそうです。また、就活生・転職者に対するアンケートでは、「企業が健康経営に取り組んでいることが就職先の決め手になる」と約6割が回答しています。

企業価値の向上

ジョンソアンドジョンソン(J&J)は世界250社、約11万4,000人に健康教育プログラムを提供し、健康経営への投資1ドルに対するリターンが3ドルになったと試算しています。

健康経営には従業員が働きやすい環境を整えることが欠かせません。とくに従業員が快適に働くオフィス環境の整備は重要です。パナソニックでは、従業員が快適に働く空間づくりをはじめ、オフィス移転・改修の支援を行っております。

健康経営を実践するための具体的な施策

健康経営を実践するためには、どのようにしたらいいのでしょうか。具体的な施策を解説します。

従業員の働く環境を整備する

まず、企業が従業員の働く環境を整備することが重要です。オフィス環境の整備やコミュニティづくりの促進など4つ紹介します。

・オフィス環境の整備

オフィスは従業員が多くの時間をすごす場所です。そのため、オフィスは従業員の健康に大きな影響を与える要素です。オフィス環境を整備することによって従業員の健康を保持・増進する行動には7つの要素があると、経済産業省は指摘しています。

  1. 快適性を感じる
  2. コミュニケーションをする
  3. 休憩・気分転換する
  4. 体を動かす
  5. 適切な食行動をとる
  6. 清潔にする
  7. 健康意識を高める

「健康経営につながるオフィス改善」の記事

・DEI(ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン)の推進

DEIとは、企業が取り組んできた従来の「ダイバーシティ&インクルージョン」に「エクイティ」という考えを加えた概念です。ダイバーシティとは多様性を表し、エクイティとはそれぞれの人に合った公平な対応をすること、そして、インクリュージョンとは誰もが職場で受け入れられ、自分らしさを発揮できている状態のことです。

DEIは組織に多様な人を迎え入れ、それぞれの人にふさわしい対応をすることで、すべての人が自分の能力を最大限に発揮して生き生きと働き、成果を出し続けるための考え方です。そうした環境を整備することは、社員の心身の健康を維持・増強する健康経営にとって大切な取り組みといえるでしょう。

・従業員同士のコミュニティづくりの促進

健康経営度調査は、非正規社員については任意で調査範囲に含められる設計となっており、現状非正規社員を調査範囲に含めている企業の割合は26%にとどまっています。ただ、企業へのヒアリングでは、派遣社員や自社で雇用する非正社員も調査の対象範囲に含め、熱心に健康経営に取り組む企業も見られました。

その中には、派遣元で集まれるように、スタッフ感謝祭やツアーなどを実施し、派遣社員同士のコミュニティをつくって、心の健康づくりを促進する取り組みを行う事例もありました。こうした施策によって、長期での安定就業につながるとともに、派遣スタッフが継続して、体調を崩さずに生産性高く働くことに寄与するという効果が期待できます。

従業員へのアプローチ

次に、従業員が積極的に健康づくりに取り組めるように、企業が実践するアプローチについて説明します。

・健康診断やストレスチェックのデータを踏まえた健康状態の管理

経済産業研究所の分析によると、健康経営の施策を実施することで各種健康診断の受診率が上昇し、問診結果で把握できる適正体重維持者率や十分な睡眠者率など健康状態そのものの改善につながることがわかっています。

2015年12月よりストレスチェック制度が施行され、従業員50人以上の事業所ではストレスチェックが義務化されました。従業員50人未満の事業所は努力義務です。継続的にストレスチェック制度に取り組んだ結果、実施以前と比較してメンタルヘルス不調者が5分の1に減少したなど、ストレスチェックの有効性が確認されています。

ただし、ストレスチェックの受検は労働者にとって義務ではないため、企業は従業員に対してアプローチする必要があります。

・福利厚生の充実

福利厚生といえば、慶弔給付、財産形成、食事・住宅などの提供あるいは補助が中心でしたが、現在は多様化しています。その中には、仕事と生活の両立支援や働き方、休暇制度、健康管理など、健康経営に関わるものが多く含まれています。こうした状況を踏まえ、企業においては福利厚生部門と連携しつつ健康経営の施策に取り組む姿勢が大切です。

・運動補助

健康経営度調査の評価項目には、運動機会の増進が含まれています。独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査によると、福利厚生の施策として運動補助を行う企業が見られます。ただ、運動施設を設置している企業は全体の4.7%(大企業は13.5%)、運動施設・フィットネスクラブの利用を補助している企業は全体の12.6%(大企業は38.3%)と割合は低く、今後の取り組みが期待されます。

・従業員のヘルスリテラシーを向上させる研修の実施

経済産業省は「健康経営の目指すべき姿と今後の方向性」の中に、従業員のヘルスリテラシー向上だけでなく、その家族のヘルスリテラシー向上も盛り込んでいます。健康経営度調査の評価項目にも「ヘルスリテラシー向上のための研修を実施すること」が含まれています。

実際に、健康経営は従業員のヘルスリテラシー向上につながっているのでしょうか。健康経営を推進している企業を対象に健康経営の効果についてアンケートを実施したところ、従業員の健康状態の改善が82%を示し、生活習慣・健康へのリテラシーの改善・向上は65%に上っています。

・禁煙補助

1年以上の禁煙に成功できる人はわずか1~3%という報告があります。国立がん研究センターは「禁煙支援では喫煙者が禁煙治療を受けやすくすることが重要」とし、そのための有効な対策を挙げています。

  1. 禁煙外来補助制度=禁煙外来にかかる費用の一部/全額補助
  2. 禁煙補助薬購入費用補助=薬局・薬店で購入できるニコチンパッチ・ニコチンガムの購入費用の一部/全額補助、ニコチンパッチ・ニコチンガムの配布
  3. 禁煙外来受診ための休暇取得の推奨
  4. インセンティブ(褒賞)=禁煙成功者に対して金銭的/非金銭的な褒賞を与える、あるいは非喫煙者に金銭的/非金銭的な褒賞を与える

企業は従業員の禁煙の成功率を上げるために、これらの施策に取り組み、積極的に従業員に働きかけることが重要です。

オフィス環境の改善で困ったら専門家に相談しよう

ここまで健康経営について説明してきましたが、オフィス環境を改善することによって従業員のウェルビーイングは向上することが見えてきました。ただし、従業員の健康を保持・増進するための要素には、多くのものがあります。

オフィスといった空間づくりや人事総務に関わる制度設計など視点によってさまざまな施策があるため、どのように改善したらいいのかわからない場合は専門家に相談することをおすすめします。

健康経営のためのオフィス環境の改善とは

健康経営の推進には、オフィス環境の改善が欠かせません。ただ、それを実現するには「働く人が快適にすごすため」の空間設計など専門的な知識・経験・ノウハウなどが必要になります。

私たちパナソニックは、メーカーとしての長年の取り組みから培ったノウハウや知見の蓄積を生かして、空間ソリューションの分野でもウェルビーイング視点を取り入れたさまざまなアイディアや技術を用意しています。

私たちは自社のオフィスや空間でWELL認証を取得して知見を高め続けています。Well-Being視点で空間ソリューションをつくるために開設した「worXlab」を活用し、実証実験を繰り返しています。それらの経験をもとに、お客様の建物やオフィスでWELL認証を取得するサポートを行い、実績を重ねています。

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オフィスは1日の大半を過ごす空間でもあるため、オフィス環境を整備することは従業員の健康維持にも直結する重要な取り組みです。働きやすいオフィスと一口にいってもさまざまな定義や基準がありますが、国際的な認証であるWELL認証を取得することで、ESG経営にも貢献できるでしょう。

オフィス移転や改装を考えている方は、健康経営実現のために、ぜひこの機会にWELL認証の取得を検討してみてはいかがでしょうか。

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