ABW型オフィスのコンセント配置の重要性とバッテリーを活用した空間を損なわない電源計画

本記事の概要

働き方改革やテレワークの普及により、従来の固定席中心のオフィスから、柔軟な働き方を支える「ABW(Activity Based Working)型オフィス」への移行が進んでいます。
このようなオフィスでは、従業員が業務内容や気分に応じて自由に働く場所を選べるため、空間設計にはこれまで以上に柔軟性と快適性が求められます。
その中でも見落とされがちなのが「電源設計」です。フレキシブルに働ける環境を実現するには、フレキシブルに電源が使えることが前提となります。しかし、自由なレイアウトや景観を損なわずに電源を確保するのは簡単ではありません。

本記事では、ABW型オフィスにおけるコンセント配置の基本的な考え方から、近年注目されているバッテリーを活用した柔軟な電源供給の方法まで、実例を交えて詳しく解説します。

コンセント配置の基本的な基準

まず、コンセントの配置には使用目的と利便性が重要です。ABW型オフィスでは、従業員が業務内容や気分に合わせて働く場所を自由に選ぶため、オフィス全体にコンセントを均等に配置する必要があります。例えば、集中ブースやミーティングスペース、ラウンジ、カフェコーナーなど、さまざまな場所にコンセントを設置し、利便性を確保します。

平米数や使用人数に基づく基準

コンセントの配置は平米数や使用人数に基づいても設定されます。一般的なオフィスでは、10~12平米ごとに1つのコンセントを設置することが推奨されています。

また、電灯設備(照明)に関しては、オフィス用途で1平米あたり15〜20VAを目安に設計されることが多く、1000平米のオフィスであれば約15kVA〜20kVA(単相100V換算で150〜200A)が一つの目安となります。これは照明器具の種類(LEDや蛍光灯)、照度基準、照明制御の有無などによって変動します。

このほか、パソコンや複合機、空調などの動力設備を含めた全体の電気容量は、使用機器の種類や同時使用率によって大きく異なりますが、主幹容量としては300A〜500A程度から設計をスタートし、必要に応じて増設を検討するのが一般的です。

デスク一つあたりに必要な電源数の目安

執務エリアを想定した場合、パソコン用、モニター用、スマートフォン充電用等に使用することが想定されるため、1つのデスクにおいて3~5口のコンセントが一般的に必要とされています。

また個々の働き方の環境をよくするために、卓上ファンやタスクライトを使用することも増えているためより柔軟なコンセントの配置が求められます。

公共建築物の基準

公共建築物のオフィススペースにおけるコンセント配置に関する基準は、国土交通省が定める「公共建築設備工事標準図(電気設備工事編)」に詳細が記載されています。公共建築物の用途に応じて、必要な場所に適切な数のコンセントを配置します。例えば、会議室やオフィススペースでは、多くの電気機器が使用されるため、十分な数のコンセントが必要です。

テナントビルの電気容量

ビルによっては、テナントのコンセント容量がビル管理会社によって定められていることがあります。これは、ビル全体の電力供給を効率的に管理し、各テナントが必要な電力を確保するためです。一般的に、一括受電方式や個別契約方式で電力供給が管理されています。テナントの業態や使用する機器に応じて、必要な電気容量が異なるため、ビル管理会社が適切な容量を設定することがあります。

ABW型オフィスの電源課題

ABW型オフィスでは、フリーなミーティングスペースやカフェスペースなど、電源が配置しにくいエリアは全体の約10-20%程度とされています。これらのエリアは、リラックスした環境を提供するために設計されていることが多く、電源の配置が難しい場合があります。

こういった場所で一度電源を敷設すると、配線が移設しづらかったり、目立ってしまい景観を損ねてしまいます。また、安全の観点からも配線が出ていると足を引っかけてしまう可能性もあります。

また、配線の分岐や延長コードでの使用を繰り返すことでブレーカの定格容量を超えてしまったり、たこ足配線からコンセントの定格容量を超えて発火に至る危険性もあります。

オフィス空間のトータル提案

オフィス空間における電源の課題

オフィス空間のトータル提案として、電源の配置を含めた設計が重要です。例えば、ミーティングスペース、ラウンジ、カフェコーナーでは、レイアウト変更が頻繁にあったり、景観の問題からコンセント配置がしづらいエリアとなっています。そこで、Panasonicが提供するe-blockを活用することでオフィス内の電源を補完でき、配線工事も不要になります。

こういったバッテリーを活用した自由な電源利用というものがオフィス空間の構築でも広がってきました。ただ、バッテリーであるため交換が必要になるため、充電箇所をどこに配置すればよいか、どれくらいの数量が必要となるかが導入の際に課題となります。

worXlabを通じた充電場所と運用効率の最適化

Panasonicでは「『働く』を実験する」をテーマにしたライブオフィス「worXlab」(ワークスラボ)を通じて導入や運用方法を実験し、オフィスでの適切な導入数量、充電箇所の適切配置を導き出しました。

例えば、執務室の利用人数が50人の場合、フリースペースでの利用率を約10%とし、交換用のバッテリーを準備することを想定するとバッテリーの必要台数は16台と導きだせます。また、オフィスのレイアウトによって動線が変わるため、どこに充電器を配置すると快適に使えるかも変化してきます。こうすることで、適正な運用方法というのが可能となり、オフィス空間でノイズとなり得る配線を減らす空間づくりができるようになり、かつフレキシブルにレイアウト変更にも対応が可能となります。こういった電源の在り方を含め空間づくりをすることでよりウェルビーイングなオフィス空間づくりが可能となります。

"働くを実験する"worXlab(ワークスラボ)

パナソニックは、働く人一人ひとりがいつでも心地よく、健康的に過ごせる環境をお届けします。スペースの効率性を追求するだけではなく、多様な働き方に応じて、働きやすさと生産性の向上を両立させるこれからの時代のワークプレイスをご提案します。

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ウェルビーイングを支える柔軟な空間設計

ABW型オフィスの電源計画においては、単なる利便性だけでなく、働く人の健康や快適性を重視した空間設計が求められます。ライブオフィス「worXlab」では、「働く」を実験する場として、WELL認証を取得した空間づくりが行われています 。

この認証は、空気質、照明、音環境などの要素を総合的に評価し、ウェルビーイングな職場環境の実現を目指すものです。このような「人起点」の思想は、ABW型オフィスにおける電源計画にも応用可能であり、単なる機能性を超えた空間価値の創出につながります。

パナソニックは動線を意識したオフィス内のゾーニングを決めるとともに、それを補完するような電源のご提案、加えてWELL認証に基づいた快適な空間づくりをご提供します。

『WELL認証』とは?健康経営/ESG経営の観点で注目されているグローバル基準

まとめ

ABW型オフィスのコンセント配置設計は、使用目的、利便性、平米数や使用人数、公共建築物の基準、テナントビルの電気容量、ABW型オフィスの影響など、さまざまな要素を考慮する必要があります。効率的かつ安全なコンセント配置を行うことで、快適なオフィス環境を提供し、電力供給の安定性を確保できます。

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