橙色と白色が混じった甲子園球場の伝統的なカクテル光線をLEDで再現し、4K・8K放送対応の高い演色性も実現したグラウンド照明

伝統的なカクテル光線をLEDで再現し
照明・映像・音響の連動で球場を演出


1924年に竣工した阪神甲子園球場にナイター照明が設置されたのは1956年。当時のナイター照明はオレンジがかった光色の白熱電球が主流だったが、阪神甲子園球場では、照度を補うために明るく青白い光色の水銀灯を加えることで、「カクテル光線」と呼ばれる、より明るくプレーしやすい環境をつくり出した。その後、1974年には演色性を重視したメタルハライドランプと高圧ナトリウムランプへと光源が変更され、今回の改修に至る。
照明設備の改修にあたっては、ノスタルジックな空間を生み出すカクテル光線を継承するとともに、熱狂的なファンによる応援スタイルを後押しする新たなファンサービスの向上がテーマとされた。パナソニックは、LEDによってカクテル光線を再現するために、2050K(橙色)と5700K(白色)のLED照明を特注仕様で開発。2色が混じり合った際に阪神甲子園球場独特の温かみのある空間に最大限近づけるように調整し、4K・8K放送に対応する高い演色性も実現した。また、DMX制御の導入により756台のスタジアム照明を個別に点滅・調光し、鉄塔照明では図柄や文字を照明でドット絵のように表示。演出面では、阪神タイガースが勝利した後に、鉄塔照明に「VICTORY」の文字と「駆ける虎」が出現し、メインビジョンとライナービジョンにも文字と映像を連動して演出するなど、LED照明と音響、ビジョン映像が連携したエンターテインメントが繰り広げられる。
また、今回のLED化ではCO₂排出量を約6割削減するとともに、全ての照明器具の角度を精緻に設定することで、まぶしさを感じさせない光環境を実現し、周辺への光漏れも最小に抑えている。このように、2024年に誕生100周年を迎える阪神甲子園球場は、次の100年も愛され続けられるよう、環境に配慮した社会貢献に取り組んでいる。

  • DMX:照明器具を調光・制御するための通信規格

建築設計Report vol.43/2022年11月発行
※会社名、役職名などは取材時のものです。

プロ野球モード(全点灯時)のナイター照明。照度:内野 2,500 lx、外野 1,500 lx
プロ野球モード(全点灯時)のナイター照明。照度:内野 2,500 lx、外野 1,500 lx

阪神タイガースが勝利した後の演出。鉄塔照明にはドットで、メインビジョンには映像の虎が駆ける
阪神タイガースが勝利した後の演出。鉄塔照明にはドットで、メインビジョンには映像の虎が駆ける

外野最上段から見たホームラン時の演出
外野最上段から見たホームラン時の演出

従来のカクテル光線をLEDで再現した鉄塔照明
従来のカクテル光線をLEDで再現した鉄塔照明

グレアを低減するよう綿密に角度調節された銀傘上に設置された投光器
グレアを低減するよう綿密に角度調節された銀傘上に設置された投光器

鉄塔の最下段で客席を照らす角度に設定された投光器
鉄塔の最下段で客席を照らす角度に設定された投光器

銀傘下のキャットウォークから客席を照らす特注照明
銀傘下のキャットウォークから客席を照らす特注照明

阪神タイガースのマークが点滅するハイライト演出
阪神タイガースのマークが点滅するハイライト演出

照明演出やメインビジョンと連動するライナービジョン
照明演出やメインビジョンと連動するライナービジョン

精緻な配光制御で周辺への光漏れを抑制
精緻な配光制御で周辺への光漏れを抑制

伝統を守りながら最先端の演出を提供

阪神電気鉄道株式会社 スポーツ・エンタテインメント事業本部 甲子園事業部 球場長代理 赤楚勝司 氏

阪神電気鉄道株式会社
スポーツ・エンタテインメント事業本部
甲子園事業部 球場長代理 赤楚勝司 氏

2016年からLED化を検討していましたが、甲子園球場で生まれたカクテル光線を再現させることが難しかった。今回開発したLED投光器によって、球場が持つノスタルジックな空間が再現できたことを評価しています。
LEDになって明るくなり、選手からも非常に守りやすくなったという声が届いています。
また、伝統を守るだけでなく、どれだけ新しく変われるかという点では、DMX制御によってLED照明・音響・大型ビジョンを連動させることで、これまでにないダイナミックな演出が可能になりました。
細かなところまで演出していますので、ぜひ来場して楽しんでいただきたいと思っています。

エンタテインメントを革新する新時代のカクテル光線

阪神電気鉄道株式会社 スポーツ・エンタテインメント事業本部 甲子園事業部 大上郁夫 氏

阪神電気鉄道株式会社
スポーツ・エンタテインメント事業本部
甲子園事業部 大上郁夫 氏

LED投光器のデモ器をパナソニックの門真工場で拝見してから、甲子園球場の厳しい要望を出させていただき、何度も試作器を作ってもらうなかで、最終的に要望以上の投光器が完成しました。グレアの少なさと省エネ効果の高さに加えて、これまで使っていたカクテル光線の高圧ナトリウムランプの色合いが再現できた点が大きいですね。
照明演出は、これまでになかったダイナミックでインパクトのあるものとなって、好評です。素晴らしい照明設備が完成しましたので、今後はより一層お客さまに喜ばれる照明演出を追求していきたいと思っています。

阪神甲子園球場

■球場照明LED化工事
所在地/兵庫県西宮市甲子園町
事業主/阪神電気鉄道株式会社
設計監理/阪急阪神不動産株式会社
施工/中央電設株式会社
竣工/2022年2月

主な設備

● LED投光器 5700K:548台 2050K:208台 ● 調光システム