1. 到着コンコース建築と照明を一体で計画
映り込みのないガラスの眺望
到着コンコースの照明は、旅客の足元だけを照らす。設計では、腰壁に納めるLEDの光源から、幅3mほどの床上に「カットオフライン」を設定。このラインより下だけに、確実に光が届く照明のあり方を、設計者とパナソニックとが連携して綿密に検討した。
結果として、端部をカギ型にした腰壁の内側に、LED光源を20°下向きにして器具を納めた。その光を受ける腰壁は反射板としての効果を担わせるためR状の形状としている。光源や器具が、旅客の目に入ったり、ガラスに映り込んだりすることなく、窓外の眺望を引き立てつつ旅客を先へと誘う光環境が実現した。
到着コンコース断面図
腰壁に納めた間接照明で、床上に設定した「カットオフライン」の下だけを照らし、旅客を誘導する
2. 到着ロビー反射板は屏風状の膜材
風情ある光を天井から注ぐ
到着ロビーに出た旅客を迎えるのは、屏風状に並べた膜材がほのかな光を放つ吹き抜けの天井。天井から吊った膜材は、長短2通りの高さがあり、各列で交互に配置してある。短い膜は、上端の天井に埋め込まれた照明器具の目隠しの役目を持つ。そこから放たれる光を受けるのが、隣の列に並ぶ長い膜材。障子のように光を透かし或いは反射して、ほのかに白く浮かび上がる。パナソニックの技術者は、膜を効果的に照らし、明るさ感と照度とを両立させる手法を、建築設計者とコラボレーションしながら導き出した。
短い膜材の上端に、天井に埋め込んだ照明がある。両側の長い膜材が光を受ける
照明計画の意図を描いた断面詳細。
建築と照明を一体的にとらえている
屏風状を描くように天井から吊った膜材そのものが照明器具のように見える。設置したLED照明は約1420台
3. 本館側吹き抜け空間意識させない照明で
大空間に安心感と開放感
本館から出発コンコースに入る手前にある吹き抜けの大空間も、グレアのない照明で、しっかりとした明るさ感をつくり出している。この空間では、窓の下部分にライン状に仕込んだシームレスな間接照明と、白い天井に向けたアッパーライトを用いた。出発コンコースへと下るエスカレータの乗降口付近を照らすダウンライトには、グレアレスタイプを採用。照明の存在感を打ち消しながら、約250lxの十分な明るさを確保。空間全体に開放感とともに安心感をもたらしている。
本館側より下階の出発コンコースを見る。腰壁部分の間接照明や天井へのアッパー照明を用いて、しっかりとした明るさ感を作り出した。
4. ラウンジスペース淡く変わる膜天井の光で
和の空間に癒しを与える
設計の意図は、「待つ場所から、過ごす空間へ――」。飛行機の乗り継ぎで時間を過ごす旅客も多いことから、出発コンコースには「Narita Sky Lounge 和」と呼ばれるラウンジスペースを設けている。その名の通り、和をモチーフにしたデザインで、その空間を照明が引き立てる。トップライトの一部を、和紙風の光膜天井とし、内部にフルカラーLEDスポットライトと、白色LEDのベース照明を設置。その光は、時間帯や季節に応じて淡い色合いで変化して、照明を意識させることなく旅客にくつろぎと癒しを与える。
天井照明伏図。光膜天井の内部に、フルカラーLEDのスポットライトと、白色LEDのベースライトを設置
天井照明断面図。スポットライトは、自然光が差す昼間、影を落とさないように設置している
格子がモチーフの和のデザインでまとめた空間に、
仮眠スペースやカフェ、マッサージチェアなど、いろいろな
"過ごせる場"が用意されている
5. サテライト側出発コンコースレリーフ壁の陰影を演出
明るくダイナミックな空間に
ラウンジスペースからサテライトに入る手前に、トップライトのある吹き抜けのコンコースがある。今回のリニューアルでは、既存の天井ルーバー材を撤去し、空間全体のポテンシャルを上げることを目指した。建築設計者と照明技術者とが協働して、配光のあり方や、照明器具、反射板の設計などの議論と検証を重ねた結果、中央部分に埋め込むLED照明で、反対側の側壁にあるレリーフを照らす方針を固めた。光を受けるレリーフが陰影の豊かな表情を見せるのと同時に、均質で十分な明るさのあるダイナミックな空間に生まれ変わった。
出発コンコース断面図。中央部に一定間隔で
埋め込むLED光源が、レリーフが引き立つように
照射する照明を設計した
既存の天井ルーバーを撤去して、側壁にあるレリーフの陰影を浮かび上がらせつつ、均質な明るさのダイナミックな空間にリニューアルした