熊谷ラグビー場Aグラウンドと同じティフトン芝を使用したグラウンドには4基のナイター用LED投光器が設置されている

スポーツ観光都市熊谷におけるラグビー文化発信拠点

さくらオーバルフォート映像

2021年9月、熊谷スポーツ文化公園内にラグビーを中心とした国内初の複合施設「さくらオーバルフォート」がオープンした。
ここは1967年の埼玉国体でラグビー会場となった場所で、1991年に熊谷市は総合振興計画で「ラグビータウン熊谷」を表明。それ以降、熊谷市はラグビーを通したまちづくりを推進している。2004年には2度目の埼玉国体が開催され、県営熊谷スポーツ文化公園のラグビー場と陸上競技場がメイン会場となった。その後、県民・市民が一体となったワールドカップ2019の招致活動が行われ、開催が決定。埼玉県によって約24,000席を有するラグビー場が新たに整備されることとなった。
このワールドカップのレガシーを有効に生かすために埼玉県、熊谷市、埼玉県ラグビーフットボール協会、そしてここに本拠地移転を計画していた埼玉パナソニックワイルドナイツが連携して実現したのが「さくらオーバルフォート」。ワールドカップ2019の会場となった熊谷ラグビー場に隣接したこの場所で、公園の一部に施設を設置するとともにエリア全体の管理を行う許可を埼玉県から受けて、待望の施設は誕生した。
ここには管理棟、グラウンド、屋内運動場、宿泊棟が整備されており、子どもラグビー教室の拠点にすることも計画されている。
さらに、近くには駅とスタジアムのアクセスを考えた「ワイルドナイツサイクルステーション&カフェ」が開業し、整形外科「スポーツクリニック(仮称)」も計画されており、この施設が世界に発信できるラグビーパークとなることが熱望されている。

ワイルドナイツのクラブハウスがある管理棟、1階手前はカフェレストラン「フォルテ ブル」、右に屋内運動場が見える
ワイルドナイツのクラブハウスがある管理棟、1階手前はカフェレストラン「フォルテ ブル」、右に屋内運動場が見える

最大264名が宿泊できる熊谷スポーツホテル「パークウィング」のある宿泊棟、1階左は「ワイルドナイツチームストア」
最大264名が宿泊できる熊谷スポーツホテル「パークウィング」のある宿泊棟、1階左は「ワイルドナイツチームストア」

熊谷スポーツ文化公園

ラグビーの楽しさを共有できる国内初の多機能スポーツ施設

「さくらオーバルフォート」はワイルドナイツが練習に使用するグラウンドと屋内運動場に加え、管理棟と宿泊棟で形成されている。管理棟には、ワイルドナイツのクラブハウス、埼玉県ラグビーフットボール協会の事務所、1階にはカフェレストランが入居。宿泊棟には、熊谷スポーツホテル「パークウィング」や女子ラグビーチームの事務所、チームオフィシャルグッズを販売するショップなどが入居している。
埼玉パナソニックワイルドナイツのゼネラルマネジャー飯島 均氏は「ラグビーは年間8試合と試合数が限られているため、年間365日ファンに来ていただけるように普段の練習が見える計画とした。本来、サインや戦術など、チーム練習は見せたくないものも多い。しかしここでは、トップチームの練習場のすぐそばで、蹴ったボールが飛んでくるという距離に宿泊施設やレストランを設け、選手が汗を流して練習していたり、食事をしている日常を間近で感じることができる。旭山動物園ではないが、トップスポーツの行動展示だ。現在の世界はバーチャルが最先端として広がっているが、スポーツ施設はリアルの中心にある社交場。このような場所に市民・県民だけでなく、国内外の人たちが集って交流を深めてほしい」と語る。今後は、この施設が核となり、周辺の整備と合わせて、スポーツ観光都市熊谷がさらに発展することが期待されている。

建築設計Report vol.39/2021年11月発行
※会社名、役職名などは取材時のものです。

ラインアウトの練習も可能な最大高8mの屋内運動場(延床面積:684㎡)
ラインアウトの練習も可能な最大高8mの屋内運動場(延床面積:684㎡)

全長30㎡層吹き抜けのトレーニングルーム
全長30m2層吹き抜けのトレーニングルーム

治療に適した照明環境の管理棟メディカルルーム
治療に適した照明環境の管理棟メディカルルーム

建築化照明でリラックスできる環境のチームルーム
建築化照明でリラックスできる環境のチームルーム

管理棟1階のカフェレストラン「フォルテ ブル」
管理棟1階のカフェレストラン「フォルテ ブル」

内装建材「ベリティス」 が採用された宿泊棟スイートルーム
内装建材「ベリティス」 が採用された宿泊棟スイートルーム

調光装置を装備した宿泊棟の宴会場
調光装置を装備した宿泊棟の宴会場

天井材「エアリライト」が採用された宿泊棟多目的室
天井材「エアリライト」が採用された宿泊棟多目的室

ワイルドナイツ サイクルステーション&カフェ

熊谷駅から熊谷ラグビー場まで、4kmあるアクセスのために設けられたサイクルステーション。
ワイルドナイツブルーに塗装された電動アシスト自転車を100台整備し、市内10カ所に配置している。パブリックビューイングが提供できるカフェも併設している。

ワイルドナイツ サイクルステーション&カフェ

ワイルドナイツ サイクルステーション&カフェ

ワールドカップ2019のレガシーを有効活用したい

埼玉県はワールドカップ2019の誘致活動を熊谷市・ラグビーフットボール協会とともに行い、誘致が決まると埼玉国体の会場であった熊谷スポーツ文化公園に、新しく熊谷ラグビー場を整備しました。この公園にはラグビーができるグラウンドが7面あります。このレガシーを有効活用したいと、皆が知恵と汗を絞って創り出したのが「さくらオーバルフォート」です。ここで商工会議所、県のラグビーフットボール協会と一緒に子どもラグビー教室も開催し、ここを子どもラグビー教室の拠点にしたいと考えています。

埼玉県 県民生活部 スポーツ振興課 企画・生涯スポーツ担当主幹 真野典久氏

埼玉県 県民生活部 スポーツ振興課
企画・生涯スポーツ担当
主幹 真野典久 氏

スポーツ観光都市熊谷の柱となるラグビーを振興したい

熊谷市はラグビーだけでなく、野球や卓球も盛んなスポーツ都市です。今後はスポーツと観光を融合してスポーツ観光都市として発展するにあたって、その大きな柱としてラグビーを据えています。これまでラグビーを観戦するには年に数回の試合に足を運ぶしかありませんでしたが、「さくらオーバルフォート」ではオープンスペースで練習が観ることができ、飲食したり、公式ストアではグッズを買うなど、楽しみの幅が広がります。これを機にラグビーに関心を持ってもらい、ラグビー場に足を運んでもらえたらと思っています。

熊谷市 総合政策部 ラグビータウン推進課 課長 鯨井憲昭氏

熊谷市 総合政策部 ラグビータウン推進課
課長 鯨井憲昭 氏

ここを起爆剤として、子どもとともにラグビーを盛り上げていきたい

パナソニックワイルドナイツが熊谷ラグビー場に本拠地を構えて活動すると決まってから、ラグビー練習場を整備する計画が具体化し、クラブハウスだけでなく合宿もできる宿泊施設を備えた「さくらオーバルフォート」を建設しました。ここを起爆剤としてさらにラグビーを盛り上げていきたいと思っています。とくに子供たちに対しては県や商工会議所とともに、子どもラグビー教室を開催しており、ここのコートを使って子供たちがラグビーに親しむことで、ラグビーで埼玉県に活気と賑わいをもたらしてほしいと思っています。

一般社団法人埼玉県ラグビーフットボール協会 理事長 増田伸二氏

一般社団法人埼玉県ラグビーフットボール協会
理事長 増田伸二 氏

素晴らしい環境で、地域に育てられるチームにしていきたい

ワールドカップ2019によって素晴らしい熊谷ラグビー場が完成し、これからプロリーグをめざすにあたってホームスタジアムが重要と考え、群馬県太田市からここに本拠地を移すことを決めました。ここが実現できたのは、県・市・フットボール協会など、熱い人たちの想いと行動のおかげで、施設ももちろん素晴らしいが、公的な公園の上に民間が複合施設を建てたというスキームが素晴らしい。練習が間近で観てもらえるのでファンづくりという意味でも素晴らしい。これからがスタートで、地域に育てられるチームにしていきたいと思っています。

埼玉パナソニックワイルドナイツ ゼネラルマネジャー 飯島均氏

埼玉パナソニックワイルドナイツ
ゼネラルマネジャー 飯島 均 氏

シェアサイクルがスポーツ観光都市の足になってほしい

熊谷駅から熊谷ラグビー場までのアクセスをよくしたいと考えてシェアサイクル事業を始めました。また、試合のチケットが取れなかった人でもワイルドナイツを応援できる場として、パブリックビューイングができるカフェも設けました。熊谷にはラグビー場だけでなく多くの観光拠点があるので、今後は、多くの観光拠点を自転車で巡ってもらい、スポーツ観光都市熊谷に貢献できたらと考えています。

株式会社ゴトー 代表取締役 熊谷商工会議所 副会頭 後藤素彦氏

株式会社ゴトー 代表取締役
熊谷商工会議所 副会頭
後藤素彦 氏

さくらオーバルフォート

所在地/埼玉県熊谷市上川上
事業主/一般社団法人埼玉県ラグビーフットボール協会
設計管理/パナソニック ホームズ アライ設計 共同企業体
施工/パナソニック ホームズ株式会社
竣工/管理棟:2021年7月 宿泊棟:2021年8月

主な設備

● LED投光器 スタジアムビーム  ● LED照明器具  ● ビルマルチパッケージエアコン  ● 液晶方式レーザープロジェクター  ● 音響システム  ● セキュリティシステム  ● 天井材「エアリライト」 ● 内装建材「ベリティス」  ● 全自動おそうじトイレ「アラウーノ」  ● 太陽光発電システム

ワイルドナイツサイクルステーション&カフェ

所在地/埼玉県熊谷市上川上
事業主/株式会社ゴトー
設計/パナソニック ホームズ株式会社
施工/パナソニック ホームズ株式会社
竣工/2021年7月

主な設備

● 電動アシスト自転車 ● LED照明器具 ● エアコン ● 全自動おそうじトイレ「アラウーノ」