• 東武タワースカイツリー株式会社「東京スカイツリー®」
  • 東武タワースカイツリー株式会社「東京スカイツリー®」

2012年に完成した21世紀の東京のランドマーク「東京スカイツリー®」(高さ634m)。
中国広州市の「広州塔」(600m)を抜き「世界一高いタワー」としてギネス世界記録に認定された。3種類のライティングデザインで東京の夜景を彩る。 

【東京スカイツリー®概要】
事業主体:東武鉄道株式会社・東武タワースカイツリー株式会社/設計・監理:株式会社日建設計/
照明コンサルタント:有限会社シリウスライティングオフィス/建築施工:株式会社大林組/
ライティング機器施工:電気興業株式会社 ©TOKYO-SKYTREE

高さ634mに躍動感ある江戸情緒をLEDで描き出す

2012年5月、東京・墨田区に開業した「東京スカイツリー®」は、国内の主要な観光施設としてはもとより、地上デジタル放送などの送信や、環境観測施設として重要な役割を果たしてきた。すでに東京の新しいランドマークとして定着し、2018年1月26日に累計の来場者数が3000万人を突破した人気観光スポットでもある。

2011年には「世界一高いタワー(高さ634m)」としてギネス世界記録に認定され、訪日外国人観光客の人気も高い。夜間は、江戸文化の心意気や美意識を表現したライティングで彩られ、東京の夜景のシンボルにもなっている。この東京スカイツリーの照明演出が、2020 年2月27日にリニューアルした。

東京スカイツリーを運営する東武タワースカイツリーは、2019年5月から「2020年、東京のさらなる輝きを! パワーアップライティング!」をテーマに、照明の増強工事に着手し、2020年2月に完了した。今回のリニューアルの目的について、東武タワースカイツリー・取締役電波塔事業本部長の村山隆史さんは次のように説明する。

「今回の照明増強工事には、自立式電波塔で世界一の『高さ』を光で強調したい意図があった。アンテナ設備がある最頂部のゲイン塔部分は、これまでは白色光でライトアップしていたが、今回のリニューアルでゲイン塔全体が発光するように見える新設計の器具に置き換え、同時にフルカラーの演出も可能とした。外向きに設置した頂部の照明器具は、20km圏内からゲイン塔の光が見える高輝度タイプ。また、以前は照明器具が設置していないため、黒い帯状に見えていた塔体の高さ250m付近と150m付近にも照明器具を設置・増強して、塔全体が連続性のある点灯演出ができるようになり、視認性の向上と印象的なデザインを実現した」。

東武タワースカイツリー 取締役 電波塔事業本部長 村山隆史さん

東武タワースカイツリー
取締役 電波塔事業本部長
村山隆史さん

左上の写真は、ゲイン塔のベース部分(高さ497m)に完成当時設置していたゲイン塔ライトアップ用白色光のLED投光器。右上の写真は、リニューアルで新たに導入したLED投光器。輝度が最大30倍にアップしてカラーライティングも可能になった。既存の器具60台と交換している。左の写真は、ゲイン塔頂部(高さ630m)に72台増設した照明器具。光は約20km先まで届くことを確認しながら調整した。

1枚目の写真は、ゲイン塔のベース部分(高さ497m)に完成当時設置していたゲイン塔ライトアップ用白色光のLED投光器。2枚目の写真は、リニューアルで新たに導入したLED投光器。輝度が最大30倍にアップしてカラーライティングも可能になった。既存の器具60台と交換している。3枚目の写真は、ゲイン塔頂部(高さ630m)に72台増設した照明器具。光は約20km先まで届くことを確認しながら調整した。

オールLEDに挑んだ先駆施設をリニューアル

リニューアルした照明について触れる前に、東京スカイツリーのライティングデザインの変遷をたどってみよう。東京スカイツリーは、LEDが新たな光源として注目され始めた2012年当時、いち早くオールLED化に挑んだ先駆的施設の一つだった。「下町にできるタワーという地域性を鑑み、陰影の美しさなどを強調した落ち着いたデザインを検討した『このタワーにふさわしい光とは何か。』それがデザインコンセプトの出発点だった」。村山さんは当時をこう振り返る。

導き出した照明演出計画の基本コンセプトは3つ。(1)下町~東京~日本へ広がる地域性、(2)江戸~現代~未来へつながる歴史性、(3)地球にやさしく環境時代にふさわしい象徴性。

ライティングデザイナーに選ばれたのはシリウスライティングオフィス。照明設備の基本計画と実施設計は日建設計が担当した。

施設オープン当初は、隅田川の水がモチーフの淡いブルーでタワーの心柱を照らし出す「粋(いき)」と、構造体を衣に見立て、江戸紫をテーマカラーに優雅さと気品を表現した「雅(みやび)」の、2つのオペレーションが1日ごとに現れるプログラムで照明演出を行っていた。

「その後も『粋』『雅』それぞれの演出に改良を重ね、さらに開業から5年目の2017年には新たに、元気さ、陰影を強調した光、垂直性のあるデザインで、古代より縁起のよい橘色を基調とし、大きな旗が掲げられる様子をイメージした『幟(のぼり)』を加え、3種類の通常ライティングで東京の夜景を彩ってきた」(村山さん)。

通常ライティングの「粋」「雅」「幟」のライティングデザイン。写真はリニューアル後。

通常ライティングの「粋」「雅」「幟」のライティングデザイン。写真はリニューアル後。

1日の点灯から消灯までの流れは次のとおりだ。日没直後から薄暮の時間帯、3種類の通常ライティングの点灯開始前には、まず展望台に紅色が灯り、塔体を明滅するまばゆい白色で染め上げる約1時間の点灯演出が始まる。その後、「粋」「雅」「幟」のいずれかのライティングが点灯(日毎にライティングは切り替わる)。24時には天望回廊の時計光だけを残し消灯する。

2020年2月のリニューアル後は、通常ライティング点灯開始前、ゲイン塔と高さ250m、150m付近に虹色の鮮やかな点灯演出を追加。また、これまで消灯していた24時~翌朝6時には、月ごとの誕生石をイメージした光色でゲイン塔頂部を点灯して「高さ」を強調し、塔体部分は交点照明と呼ばれる鉄骨部分に設置されたLEDが明滅。まるで光のドットが躍動するかのような動きのある演出を終夜行っている。「通常ライティングが消える24時以降も、辻行灯(あんどん)のような安心感を光の演出で提供したいと考えた」と村山さんは言う。

左の写真は、「雅」点灯前の白色の照明演出の一部。右の写真は、新たに設定した24時~翌朝6時までの照明演出のイメージ。

左の写真は、「雅」点灯前の白色の照明演出の一部。右の写真は、新たに設定した24時~翌朝6時までの照明演出のイメージ。

躍動感があるライティングデザインを実現

今回の照明リニューアルの大きな特徴は、躍動感があるライティングデザインの実現だ。「開業から8年を迎える今、LED照明の技術や表現力は完成当時から大きく進化している。これまではそれぞれの演出の色で照らすだけだったが、現在はデジタル制御で光の調色が可能。その機能を生かし、ライティングデザインに『動き』を与えることで、基本コンセプトをより高度に表現できるのではないか。そうした難しい要望を、完成当時のオールLED化に挑んだパナソニックと設計サイドに伝え、検討してもらった」(村山さん)。

ムービングライトで動きを表現する方法はあった。ただ、東京スカイツリーのような大規模施設で、RGBWによる間接光と直接光のコントロールだけでアニメーションのような光の動きを作り出すことは、パナソニックとしても初めての挑戦となる。シリウスライティングオフィスが描くCGアニメーションを具現化するために、各器具の色、明るさ、動きを映像ソースからピクセルマッピングすることにより制御し、実現したのが「粋」「雅」「幟」それぞれの光の動きだ。

心意気の「粋」

▶画像クリックで動画を再生

心意気の「粋」
心意気を示す「粋」は、力強さ、心柱を中心とした光、隅田川の水をモチーフとした淡いブルーの光が特徴。水色と白色の爽やかな光の中で、泡の揺らぎやきらめきをイメージした「水泡」の緩やかな動きを表現した。さらに、豊かな水の表情とパステルカラーの水風船をイメージしたアクティブな光の演出を加えた。

美意識の「雅」

▶画像クリックで動画を再生

美意識の「雅」
「雅」は、優雅さ、衣をまとうような光、江戸紫をテーマカラーとし、方向性のあるデザインで、金箔のようなきらめきと「時」を表現した動きが特徴。紫に点灯した北・東・西の「鼎(かなえ)」を起点に、羽衣の優美な動きをイメージした光が緩やかな動きでらせん状に上昇。さらに、一対の扇子を使う舞踏をイメージした光のショーが展開し、日本独自の美しい動きを光で体現した。

にぎわいの「幟」

▶画像クリックで動画を再生

にぎわいの「幟」
「幟」は、元気さ、陰影を強調した光、垂直性のあるデザインで、縁起の良い色とされてきた橘色を基調に、縦のラインで3つの面に大きな旗が掲げられる様子を表現。垂直性の高いデザインを器具増強による連続した光で、幟の旗がそよ風にはためくような印象的なゆっくりとした動きと、たくさんの幟が担ぎ上げられて掲げられる、祭りのにぎわいをイメージしたアクティブな光の演出を展開する。

「試験点灯の時はぎこちなかった光の動きが、プログラムの微調整を繰り返しスムーズに流れるようになった。東京スカイツリーは360度全方向から見られているので、どこから見ても美しく躍動感のある演出照明が実現できたと自負している」。東京スカイツリーのライティングを望む高層ホテルやレストランからは、江戸情緒を動きで表現する光を「眺めて楽しむ」新たな魅力も加わったと村山さんはみている。

LED照明には、動きのあるライティングデザインの実現のほかにも、ゲイン塔から送出される高出力電波の電磁波や雷対策、耐候性、高所の風対策、耐震性などに配慮した設計が求められた。パナソニックはこうした要件を耐久試験などで確認。「リニューアルで新規導入した器具は、旧来の照明器具に比べて省エネ性能も飛躍的に向上しており、照明を増強しても大幅な消費電力アップにはならなかった。LED照明の進化には驚いている」と村山さんは話す。

東京スカイツリーではクリスマスなど、季節のイベントごとに特別ライティングのプログラムを企画しており、その日だけに現れる印象的な光演出を楽しみにしているファンも多い。こうした特別ライティングも今後は「動き」の要素を加え改良していく予定だ。

東武タワースカイツリー株式会社「東京スカイツリー®」

 東京スカイツリー

■建築概要
施設名/東京スカイツリー
所在地/東京都墨田区押上
高さ/634m
鉄骨重量/約3万6000t(タワー鉄骨総重量)
事業主体/東武タワースカイツリー株式会社、東武鉄道株式会社
設計・監理/株式会社日建設計
照明コンサルタント/有限会社シリウスライティングオフィス
施工/株式会社大林組
ライティング機器施工/電気興業株式会社
竣工/2012年2月
照明リニューアル工事/2019 年5 月~2020 年2 月