パナソニック東京汐留ビル
ZEB実現への課題
ライフサイクルコストを考えて消費エネルギーを毎年削減。
ビルを重要な社会資本ととらえ、建設時から解体までの運用コストを考えて、長期にわたってビルの価値を維持していく、ライフサイクル・コスト・マネジメント(LCCM)という考え方が主流になっています。さらに、2010年の改正省エネ法では、対象となる企業では毎年1%の消費エネルギー削減が義務づけられています。
2003年1月に竣工したパナソニック東京汐留ビルは、優れた耐震性とリニューアルへのフレキシビリティを備えた「100年建築」として計画されました。ビルは、自然エネルギーを活用する高断熱の躯体と無柱大空間の基準階執務室を擁し、当時考えられる先進の省エネ機能を装備。将来のネット・ゼロ・エネルギーを追求できるビル設備が求められました。また、竣工時から設備の高効率運用を続けることで、継続的な消費エネルギーの削減を目指し、お客様へのご提案の実証実験の場とすることも計画されました。
ビル全体の使用電力量(昨年度のピークと比較できる)
取り組み
照明・空調・電力など約5,000ポイントのデータを分析して省エネチューニング。
ビルのエネルギーを最適にマネジメントするためには、省エネ設備機器を常に良好に維持管理し、新規の省エネ運用対策の掘り起こしだけではなく、すでに取り組み済みの省エネ対策の運用も維持継続していく必要があります。
当ビルでは社内外の専門家による省エネ専門委員会を設置。照明、空調、コンセント別の電力量に加え、空調熱量、圧力、冷温水流量、温度など、約5,000ポイントの計測・計量データを収集・蓄積し、このデータを分析してチューニングを行い、継続的な省エネ活動を行っています。
たとえば外光が入る昼間の執務室では、明るさセンサで検知し照度を500 lxに抑えたり、不在時には消灯制御。空調では設定温度の見直しや運転時間帯の見直しを実施。さらに、PCや複合機の設定見直しなど、さまざまな対策を実行しています。また、ビル4階のロビーには、現在のエネルギー使用量がリアルタイムに把握できるデジタルサイネージを設置して「見える化」。ビル内の照明器具もすべてLED化しました。
省エネ専門委員会では、専門家の参画により、きめ細かな省エネアイディアを数多く立案。毎月半日をかけて、10名程度のメンバーで計測データをもとにエコチューニングツールを駆使することで改善の余地を検討し、毎年着実にエネルギー消費を削減してきました。2011年には「チャレンジ50プロジェクト」を立ち上げました。これは、省エネだけでなくオフィスにおける生産性や快適性を追求するプロジェクトです。
照明、空調、コンセント別の電力量に加え、空調熱量、冷温水流量、温度など約5,000ポイントの計測・計量データを分析
社内外の専門家によって組織された省エネ委員会が改善の余地を検討
効果
50%削減の目標を5年前倒しで達成し、より高い目標に挑戦。
毎年、省エネチューニングを繰り返し、消費エネルギーを削減し続けることで、2013年度には建物全体で、竣工初年度比約50%の省エネを達成しました。
チャレンジ50で掲げた50%削減の目標を5年前倒しで達成した現在、「ビヨンド50」続いて「サスティナブル50」プロジェクトに取り組んでいます。
これにより、照明だけでなく、空調などとも連携させることで、快適でありながら知的生産性の高いオフィス環境を追求していきます。
2013年度には、チャレンジ50の目標を5年前倒しで達成
100年先を見据えた戦略的省エネビル
パナソニック東京汐留ビルは、一歩先のエコをめざし、設計コンセプトから運用まで、次世代の環境対応型を指向したオフィスビルです。
建物名称/パナソニック東京汐留ビル
建築主/パナソニック株式会社
(建物所有者:三井住友信託銀行(2013年3月より))
竣工/2003年4月(グランドオープン)
建物用途/事務所、ショウルーム
敷地面積/19,708.33m2
建築面積/10,717.45m2(一団地認定取得)
延床面積/47,274.49m2
階数/地下4階、地上24階、塔屋1階
高さ/最高高さ119.85m 軒高109.85m
構造/S造(CFT構造)、SRC造、RC造
かしこい省エネ
エアフローシステム
開口部はダブルスキンのエアフローウインドーとし、効率的に外部の熱進入を遮断。春や秋の中間期は、空調機による外気冷房運転や換気口からの外気導入によって冷房負荷を削減します。
2層吹き抜けになっている基準階オフィス西側。開口部はダブルスキンのエアフローウインドー
エリアコントロールシステム
人が働きやすい空間を考えた照明設計とレイアウトのもとに執務空間を最小制御単位に分割し、そのエリアごとに照明・空調設備を制御。きめ細かくセーブすることで、ワーカーにストレスを与えずに大幅な省エネを実現しています。
執務フロアのエリアコントロール
地域冷暖房
汐留地区では夜間電力を利用して氷や蒸気を蓄熱槽に蓄える地域冷暖房を行い、エネルギーの面的利用を実現しています。この蓄えたエネルギーを昼間にピークを迎える空調に利用することで、電力を平準化。執務者の快適性を損なわずに省エネを図っています。
太陽光発電システム
屋上に太陽電池モジュールを設置。CO₂排出がゼロの環境にやさしい発電システムによって得られた電力は、館内やショウルームなどで活用しています。
太陽電池モジュール
創蓄連携システム
緑化スペース
ビル空間に緑の安らぎ空間を創り出すとともに、屋上緑化の効果によって下階の冷房を節約。ヒートアイランド現象緩和への寄与をめざしています。このビルは、東京都港区より都市緑化保全法に基づく「緑化施設整備計画」の緑化施設に認定されました。
屋上庭園(24階)
景観照明で憩いの演出
エコチューニングを想定した設備設計
設備設計の段階から、詳細な単位で実エネルギーを計測できるように計画。すべての空調機に熱量計を設置し、各フロアをゾーンに分割して消費電力を計測することで、エリアごとの消費電力をきめ細かく計測しています。
あたらしいあかり
LED照明
専有部では電源内蔵型LEDユニット「iDシリーズ ライトバー」を使用し、ソケットレスで連続した美しい光のラインを実現。
共用部では多重影のない均一な光を出すワンコア(ひと粒)タイプや、快適な輝度感をつくり出すグレアコントロールタイプなど、最新のLEDダウンライト類を設置しました。また、内照式屋外サインにも高輝度LEDを採用。照度や空間のイメージを変えることなく改修前(蛍光灯、HID、ハロゲン電球)に比べ、約50%の省エネを実現しました。
受付
エレベータホール
専用部
ファサードサイン
壁面埋め込み
床埋め込み
階段フットライト
新たなLEDオフィス照明の試み
高層階の一部に先進のLEDオフィス照明を設置しています。20階では画像センサ技術を活用し、人の動作に適した制御を行うことで快適性を維持しながら省エネを実現しています。22階ではニーズに合わせた様々なシステム天井器具のバリエーションを展示しています。23階では心地よい執務環境をつくり出すために、朝・昼・夜の時間帯に合わせて照度と色温度を最適制御できるシステムを採用。タブレットによる直感的な操作で複雑な設定も容易です。
20階
22階
23階
建築化照明
ビル各所に建築化照明を採用しています。ディシジョンルームでは建築デザインと一体化した照明。光天井とダウンライトの調光で、使用目的に最適な光空間を演出します。ミュージアムでは展示照明も含めて全てLED化を実現しています。
ディシジョンルーム
ミュージアム
ライトアップ(ライトアウト手法)
汐留の都市景観に配慮し、ビルの内側から柔らかな光がこぼれる「ビルごと照明器具」のコンセプトのもと、漏れるあかりで街なみを彩る景観照明を導入。調光による省エネまでを配慮しました。
進化するネットワーク
BEMS(ビル・エネルギー・マネジメント・システム)
空調制御システム、照明制御システム、電力監視システムなど、プロトコルの異なるサブシステムを統合し、ビル全体のエネルギーを監視・制御します。
センター監視・制御を行うHIM(Human Interface Machine)や各種エネルギーデータを収集・管理するBEMSなどによって構成されています。
統合型セキュリティシステム
液晶表示付カードリーダーと非接触ICカードでオフィスへの入退室を管理。セキュリティレベルを3段階のゾーンに分けて設定し、各ゾーンのセキュリティを強化しています。
また、人事システムなどと連携し、省力で高度なセキュリティを実現しています。
社内外の専門家によって組織された省エネ委員会が改善の余地を検討
主な設備
● 統合ネットワーク型BAシステム ● 多回路エネルギーモニタ ● [天井取付]熱線センサ付自動スイッチ ● 照明制御システム ● 無線センサ ● Wエコ 環境配慮型照明器具 ● LED照明器具