ZEBからスマートビル※1ビジネスへの挑戦!
新社屋ビルを活用し、持続可能な社会の実現に向けて
藤井産業株式会社様 [栃木県 宇都宮市]

  • 関 勝利 様

    藤井産業株式会社
    取締役 専務執行役員
    マテリアルイノベーションズカンパニー
    カンパニー長
    関 勝利 様

電設資材・電気機器の販売のみならず、総合建築業まで手がける藤井産業株式会社様は栃木県内のみならず全国で大きな存在感を発揮されている電材代理店です。
現在、ZEBの新社屋ビルプロジェクトが進行中で、そこで獲得するスキルやノウハウをベースに、新たなスマートビルビジネスの展開を見据えておられます。
※1 スマートビルについて詳しくはこちらの記事をご覧ください。
https://www2.panasonic.biz/jp/terasu/trend/trendnews/70/trend_1.html

カンパニー制の導入を機に最先端の新社屋ビルを計画

1883年の創業以来、140年以上にわたる歴史を持つ藤井産業株式会社様は、県下有数の優良企業です。2022年よりカンパニー制を導入し、マテリアルイノベーションズカンパニーでは主に電設・建設資材の販売を、インフラソリューションズカンパニーではシステム建設やインフラ設備の設計施工などを手がけておられます。
同社は本社敷地内にZEBの新社屋ビルを建設中で、2025年8月の竣工を目指しておられます。
マテリアルイノベーションズカンパニーを率いる関様は、その経緯を次のように説明されます。「これまで西館ビルとして使っていた建物が築50年近く経過し、老朽化が激しいため、建て替えを検討していました。そうした中、カンパニー制を導入したことで各部門の管理業務をより効率化させる必要が生じました。また、営業部隊が情報交換をしながらシナジー化を進めていくためには、それにふさわしいロケーション共有が必要になります。さらに、国策であるZEBの普及促進が今後ますます進むことが予想され、当社の事業に活かすためにも新社屋ビル建設を利用して設計や補助金獲得のスキルやノウハウを磨いていきたいという思いがありました」。

藤井産業株式会社 組織図(一部抜粋) 藤井産業株式会社 組織図(一部抜粋)

今後の設備機器のオープン化に対応するDALIシステム※2をご採用予定

「宇都宮電材営業所の中本所長に相談したところ、パナソニック京都ビルがZEB化したとのことでご案内くださり、とても参考になりました。
パナソニック京都ビルでは、国際標準規格の照明制御通信方式に対応したDALI-2システム対応照明器具を採用しており、そこで初めてその活用方法を見ました。汎用性と拡張性の高さが見学後も印象に残り、新社屋ビルにも採用しようと思いました。お客様への提案にも活かしていきたいと考えています」と関様。
パナソニック京都ビルでは、中小規模ビルのスマートビルの在り方について、IPA※3のスマートビルガイドブックを参考にし、クラウドサービスを導入しています。照明、空調、熱交換器などの設備に接続し、遠隔制御や状態監視を行うことで運用コストの効率化を図るPoC(概念実証)を進めています。クラウドサービスの提供やネットワーク構築を担当しているのはSCSK株式会社様であり、新社屋ビルのネットワーク構築にも参画しています。同社CNソリューション部の木村様はクラウドサービスを利用するメリットを次のように説明されます。
「ZEB認証には、国が定めるエネルギー計測量の詳細なデータ報告が必要です。データ管理がクラウドサービスにより容易になることで、調整がしやすくなります。また、エネルギー使用量をCO2排出量に換算できるため、この数値データを国への報告に活用していただけると考えています」。また、「新社屋ビルプロジェクトでは、ZEBやDALIなどの新しい試みに挑戦していますが、クラウドサービスを活用することで、さまざまなニーズに迅速に対応できます。これまで照明機器や空調機器は、複数のメーカーが提供するサービスで運用する必要がありましたが、クラウドを通じて管理することで、必要に応じてメーカーの枠を超えた効率的な運用も可能となり、よりフレキシブルにユーザーのご要望にお応えできると考えています」とも話されます。

※2 DALIシステムとは
オープンプロトコル※4の汎用性と、フレキシブルな個別制御ができる国際標準規格に準拠した照明制御通信方式のこと。
商品について詳しくはWEBサイトをご覧ください。 
https://www2.panasonic.biz/jp/lighting/brand/dali-2/
DALIシステムについてはこちらの記事でもご紹介しています。 
https://www2.panasonic.biz/jp/terasu/trend/trendnews/70/trend_2.html
※3 IPAについてはこちらをご参照ください。 
https://www2.panasonic.biz/jp/terasu/trend/trendnews/70/trend_1.html
※4 仕様が公開されている通信規格のこと。

照明や空調をクラウドに接続して状態監視・制御するイメージ 照明や空調をクラウドに接続して状態監視・制御するイメージ

電気設備機器+クラウドサービスの
プラットフォームが今後のビジネスに活きる

プロジェクトでは、藤井産業様を中心にSCSK様とパナソニックが連携し、新社屋ビルの設計施工が進行中です。関様は「もちろん、電気設備は当社の得意分野ですが、ネットワーク構築には慣れておらず苦労しました」とおっしゃいます。「しかし、設備機器は今後ますますネットワークに繋がっていくでしょうし、将来的にはAIにも連携するでしょうから、先駆けとしてこのプラットフォームを構築しておくことは、我々のビジネス展開にとって有望だと考えています。今回の新社屋ビルの設計施工を通じて、パナソニックやSCSK様と連携し、さまざまな設計やネットワーク、DALIの知識を得ることができました。これは今後のビジネスに活かせるはずです」。
同社の拠点は国内に42か所あり、クラウドサービスを利用することで多拠点の一元管理が可能になるため、これもメリットだと関様は指摘されます。「新社屋ビルの運用が軌道に乗れば、県外を含めて一括でエネルギー管理ができるようになります。さらにはビルの管理状況や機器の操作もスマホ等を活用し、場所を選ばずに簡単操作が可能になります。この拡張性もクラウドの魅力の一つではないでしょうか」。

補助金申請対応にも役立つクラウドサービス

藤井産業様が今回苦労されたのは、環境省の補助金申請に関わる一連の手続きです。これまでもさまざまな補助金申請を経験されてきましたが、ZEB関連は初めての試みです。申請内容は度々変更されており、エネルギーマネジメントの項目も従来の60分単位から10分単位に変更されるなど、より細かな計測が要求されています。同社でも申請書を全面的に作り直したことがあり、そのハードルの高さを実感されました。補助金対応に関しては、SCSK様もシステム上の工夫を重ねています。「10分単位のエネルギー計測は我々にとっても初めての試みでしたし、ZEBではエネルギー創出量も可視化する必要があり、この点についてはクラウドサービスに組み込むのに苦労しました。ZEBの補助金申請書はクライアントによって内容が異なりますし、年度をまたぐと国の法令対応の見直しなどで申請内容が変わることがあります。今年度とは異なる項目を来年度に提出しなければならないこともあるため、この点にも対応できるサービスを提供するよう努めています」と木村様はおっしゃいます。
エネルギー監視にあたっては、設計段階からデータ取得の方法について連携を図っています。設備機器別やエリア(事務所、共有部)などのリアルタイムデータの収集には、分電盤にエネルギー監視モニターを設置し、電力消費データをリアルタイムで収集できるように設計。これにより、エネルギーの使用状況を把握しやすくなります。さらに、太陽光発電などの再生可能エネルギー電源を分電盤に統合し、余剰エネルギーを蓄えるための蓄電システムを組み込むことで、エネルギーの効率的な利用が可能になります。これらの要素を考慮した分電盤設計が、カーボンニュートラルの達成に向けた重要なステップとなります。
「両社のサポートがなければ不可能だった」と関様もおっしゃる補助金申請については、2024年9月に無事に認められました。

エネルギー見える化 メータ表示イメージ

新社屋ビルをショールーム化し、
社員教育や提案の場としても活用

新社屋ビルの稼働後、同社はビル全体をショールームとして活用する予定で、さまざまな提案ができるよう工夫されています。自社の販売商品や施工技術について、今後のトレンドを実感できる建物になることが期待され、社員の提案力や説得力の強化も見込まれています。
「電材代理店として新しい技術や製品を提供するだけでなく、必要性に応じて施工までできるのが当社の強みです。そのため、ZEB化しさらにスマートビル化した新社屋ビルは非常に有望なプラットフォームになります。新しいビルで働くことで社員のモチベーションも向上し、人材の採用にも好影響を与えると期待しています」と関様はおっしゃいます。

スマートビルのシステム概念 スマートビルのシステム概念
主な導入予定機器 主な導入予定機器

取り組むか、取り組まないかで
業界での電材のポジションが変わる

今後のZEBやスマートビルの状況について、関様は「照明制御や空調制御、エネルギーマネジメントがますます重要になっていくだろう」と予測されています。「電材業界としては、単に製品を販売し続けるだけでは存在価値が徐々に低下していくでしょう。そこで、省エネ制御やエネルギーマネジメントをトータルで提案できるスキルを強化することで、建築業界での当社のプレゼンスを高めていきたいと考えています。取り組むかどうかで、業界における電材や当社のポジションが変わってきます。お客様に適切な提案ができれば、電材業界や当社に新たな存在価値が生まれるはずです。我々はそこを目指していきたいと思っています」と話されます。
「そのためには最新のトレンドをつかみ、有益なご提案をできるスキルを身につけなければなりません。DALIのようなメーカーを超えたシステムが導入されると、単発の商材だけでは済まなくなります。しっかりと勉強し、お客様やお取引先様に貢献したいと考えています。電気工事会社様に対しても、少しでもお役に立てるよう、これからも社員教育を進めていきます」と抱負を語っていただきました。

中央:藤井産業 関様 左:SCSK 木村様 右:当社宇都宮電材営業所 中本

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