リチウム電池専門家が語る電気自動車(EV)の電池寿命の考え方 リチウム電池専門家が語る電気自動車(EV)の電池寿命の考え方
本記事の概要

「電気自動車(EV)(以下:EV)の電池って、スマホみたいにすぐ劣化するんじゃないの?」「充電のたびに電池が傷んでいくのでは…」と不安を感じていませんか。EVへの乗り換えを検討している方の多くが、電池の劣化を大きな懸念点として挙げています。しかし、パナソニック エナジー株式会社でリチウムイオン電池の制御技術を研究する専門家によれば、「普通に使っている分には極端な劣化は起きません」とのことです。
この記事では、リチウムイオン電池の仕組みから劣化のメカニズム、今日から実践できる「電池にやさしい乗り方・充電の仕方」まで、専門家の知見をもとに解説します。EVを長く・賢く使い続けるためのヒントが満載ですので、ぜひ最後までお読みください。

西川 慎哉

西川 慎哉

パナソニック エナジー株式会社
研究開発センター
要素開発4部

小澤 瞳

おうちEVチャンネル MC
小澤 瞳

静岡県出身のフリーアナウンサー。

神谷 崇

おうちEVチャンネル編集長
神谷 崇

パナソニック エレクトリックワークス株式会社
配線システムコミュニケーションビジネスユニット

そもそも「EV電池の劣化」とは何か?スマホと同じ現象が起きるの?

そもそも「EV電池の劣化」とは何か?スマホと同じ現象が起きるの?

EV電池の劣化とは、満充電したときの走行可能距離が短くなっていくことを指します。
実は、EVにはスマホと同じ種類の電池が使われています。スマホを使っている中で、「充電しても電池残量がすぐ減る」という感覚を持つことがあるように、EVでも同様の現象が起きるのではという疑問を持つ方は少なくないでしょう。しかし、EVの電池はスマホとは比べものにならないほど長寿命に設計されており、過度に心配する必要はないのです。

「電池の健康状態が悪くなる」とはどういう意味か

EVを長く使っていると「電池の健康状態が悪くなる」と表現されることがありますが、これは電池から取り出せる容量の大きさ(SOH)が低下した状態を指します。人間が年齢を重ねると体力がピーク時から落ち着いてくるように、電池も基礎体力に相当するSOHが徐々に低下していきます。

ただしこれは病気ではなく自然な変化であり、設計の範囲内で起きる現象です。過度に心配するよりも、劣化のメカニズムを正しく理解した上で日々の使い方を工夫することが大切です。

EVの電池はスマホより「はるかに長持ち」

各EVメーカーや車種にもよりますが、8年・走行距離15〜30万kmでSOH70%以上を保証していることが多いです。スマホが数年で極端に劣化するのと比べ、EVの電池は格段に長く設計されており、しかもこれはあくまで「最低ライン」の保証です。

米国のある大手EVメーカーのレポートによると、32万km走行後もSOHの低下は約20%にとどまるというデータもあります。スマホの電池に抱くような「すぐにダメになる」というイメージとは、EVの電池は根本的に異なるものだと理解しておきましょう。

リチウムイオン電池の仕組みをわかりやすく解説

リチウムイオン電池の仕組みをわかりやすく解説

リチウムイオン電池にはセルの形状として円筒型・角型・ラミネート型(パウチ型)の3種類があり、使用する材料(三元系・リン酸鉄系など)もメーカーによって異なります。EVには同一形状の電池セルが数百〜数千本、直列・並列に組み合わされて搭載されており、電圧と容量を同時に確保する設計となっています。

各電池メーカーの技術力の違いは、まさにこの電池セルの材料・設計に凝縮されており、メーカーごとの工夫が随所に反映されているのです。

充電と放電でリチウムイオンが動く仕組み

充電と放電でリチウムイオンが動く仕組み

EV走行中(放電時)は、負極の炭素の層からリチウムイオンが電解質を通って正極へ移動し、電子が外部の配線を通ってモーターを回します。充電時はその逆で、リチウムイオンが正極から負極へ戻る動作が行われます。

放電と比べて充電は電池に負荷をかける「頑張ってもらう」動作であり、この化学反応の繰り返しが電池の劣化に影響するのです。充電の仕方がEV電池の寿命に直結する大きな理由は、まさにここにあります。

EV電池が劣化する2大原因|「サイクル劣化」と「カレンダー劣化」

EV電池が劣化する2大原因|「サイクル劣化」と「カレンダー劣化」

電池の劣化要因は、大きく分けると「サイクル劣化」と「カレンダー劣化(保存劣化)」の2種類です。サイクル劣化は充電・放電を繰り返すことで生じる劣化であり、カレンダー劣化は走らずに置いておくだけでもゆっくりと進行する劣化です。

電池は金属部品ではなく「生鮮食品」のようなもので、化学反応が常に進行しているため、1ミリも走らなくても劣化が起きることを理解しておく必要があります。

サイクル劣化とは|充電・放電の繰り返しで容量が減る仕組み

サイクル劣化とは、充電・放電の繰り返しで材料(活物質)の表面の変質などが起こり、リチウムイオンが失われたり居場所がなくなったりすることで電池から取り出せる容量(SOH)が小さくなっていったりする現象です。バケツに例えると「充放電を繰り返すたびにバケツそのものが少しずつ小さくなっていく」イメージです。

カレンダー劣化とは|走らなくても進む「生もの」の宿命

カレンダー劣化とは、充放電の有無にかかわらず時間の経過とともにゆっくりと進行する劣化です。「電池は生鮮食品である」という専門家の表現がその性質を端的に表しています。野菜や肉が冷蔵庫に入れておいても少しずつ鮮度が落ちるように、電池も保管中に内部で化学反応が進行し続けています。

この劣化は完全には止められませんが、「どんな状態で保管するか」によって進行速度を大きく変えることが可能です。

温度が電池劣化に与える影響

電池は生鮮食品と同様、温度が高いほど劣化が早まる性質を持ちます。夏場の炎天下に長時間停車していると、常温放置したお肉が早く傷むのと同じように電池の劣化が加速します。

温度の管理が適切になされれば、劣化の進行を遅らせることも可能です。

劣化に対する考え方

サイクル劣化、カレンダー劣化は起こりますが、EVの走行距離とバッテリー残存率のグラフに示すように、劣化のスピードは最初の1~2年がやや早いものの、その後は緩やかになっていくという特性があります。
最初の数年で大きく劣化したように感じても、その後は安定してくることが多いため、焦らず長い目で付き合っていくことも大切です。

EV電池の劣化の仕組み|「バケツ」と「渋滞」で理解する2つの現象

EV電池の劣化の仕組み|「バケツ」と「渋滞」で理解する2つの現象

電池の劣化現象には「バケツの大きさが小さくなる劣化」と「バケツの出入口が狭くなる劣化」の2つが存在します。前者は、負極が電解液と反応して保護膜を作る際にリチウムイオンが消費されるなどで、リチウムイオンそのものが減る、または充放電の繰り返しにより、材料(活物質)の構造変質などによってリチウムイオンの居場所がなくなり電池に貯められる電気量が減少するものです。

後者は電池内の「渋滞」により出入口が狭くなることで、残量があるのに走行が制限されるといった症状につながります。

「抵抗劣化」と呼ばれ、例えば正極表面での副反応や結晶構造変化によりリチウムイオンの拡散経路が阻害されるなど、電池内部での抵抗が大きくなり、取り出せる電力が減るという現象です。

SOC(充電残量)とSOH(電池の健康状態)の違いを正しく知る

SOC(State of Charge)とは「バケツに今どのくらい水が入っているか」を示す充電残量のことで、スマホや車の画面に表示されるパーセンテージがこれにあたります。SOH(State of Health)とは「そのバケツ自体が新品のときと比べてどのくらい小さくなったか」を示す電池の健康状態であり、劣化が進むほど数値が低下するのです。

SOCは毎日目にする数値ですが、SOHは普段は見えない「裏パラメータ」であり、スマホの設定画面から確認できる機種もあります。EVの電池状態を正しく把握するためには、この2つの指標の違いを理解しておくことが重要です。

「残量があるのに急に制限がかかる」はなぜ起きるのか

「残量があるのに急に制限がかかる」はなぜ起きるのか

電池が劣化すると、内部のリチウムイオンの通り道(出入口)が狭くなり「渋滞」状態が発生します。新品のときはスムーズだった出入口が狭くなり、残量が少なくなるにつれて渋滞の影響が一気に表面化するため、突然制限がかかったような現象が起きるのです。

これはバケツのサイズの縮小と合わさって「取り出せる容量が実質的に少なくなる」という状態を生み出しています。

一般的な使い方では「カレンダー劣化」の方が影響が大きい

一般的な使い方では「カレンダー劣化」の方が影響が大きい

2種類の劣化のうち、一般的なマイカーの使われ方においては「カレンダー劣化」の影響が大きいことが論文でも示されています。この事実は多くのEVユーザーにとって意外に感じるかもしれませんが、その背景にはマイカーの利用実態があります。

「乗り方」よりも「停め方・保管方法」の方がEV電池の寿命に大きく影響するという逆転の視点を持つことが、電池を長持ちさせる上で大切です。

日本のマイカーは1日23時間「停まっている」

統計データによれば、日本のマイカーの平均利用時間は1日あたり1時間程度に過ぎず、残りの約23時間は駐車場に停まっている状態です。

この「停まっている時間の長さ」がカレンダー劣化を支配的にしている最大の根拠であり、走る時間よりも停まっている時間の方が圧倒的に長いEVにとって、保管状態の管理が極めて重要であることがわかります。

乗ることよりも「どう停めておくか」の方が電池の寿命に直結するのです。

「満充電のまま長時間放置」が電池にダメージを与える

充電してエネルギーが満タンの状態は、電池の内部がパンパンに張り詰め、強いストレスがかかっている状態に相当します。「バイキングで満腹になった状態が23時間続く」ようなイメージであり、この苦しい状態のまま長時間放置されることは電池が傷む原因です。

カレンダー劣化の影響が大きいことと組み合わせると、「高いSOCのまま長時間停車させること」はEV電池にとってダメージが大きいことだと言えます。

「積極的に乗ることが電池を守る」専門家が太鼓判を押す理由

「積極的に乗ることが電池を守る」専門家が太鼓判を押す理由

「大切なEVを守るために乗り控える」という発想は実は逆効果であり、専門家は「出し惜しみせず、ガンガン乗ってあげてください」と提案します。EVに乗ることで電池内のエネルギーが減り、ストレスの少ない「腹八分目〜半分」の状態に戻ることができるからです。

電池を傷めないためには「乗る」こと。EVを長持ちさせたいと考えるあまり走行を減らすのは、むしろ電池の劣化を早める行動になりうることを覚えておきましょう。

走行中は電池の温度管理システムが守ってくれる

最新のEVは電池の温度をセンサーで常時監視し、電圧・電流・温度を最適な状態にコントロールするシステム(一般にバッテリーマネジメントシステムと呼ばれています。)を搭載しています。夏場の暑い時期に走行しても、この温度管理システムが電池を適切な状態に保つため問題ありません。

逆に、制御が届かないのは「放置されているとき」であり、走行中よりも停車中の管理の方が難しいという実態があります。

このことも「積極的に乗った方が電池によい」理由になるのです。

理想の充電タイミングは「出発直前に充電完了」

理想の充電タイミングは「出発直前に充電完了」

電池への負担を最小化する理想の充電タイミングは、出発の直前に充電が完了している状態を作ることです。

「夜にお腹パンパンにするよりも、朝にしっかりエネルギーを貯める方が人間も電池も健康的」という例えが示すとおり、満充電状態で長時間停車する時間を短くすることがポイントです。おうちEV充電サービスのアプリを使えば充電完了時間をあらかじめ設定できるため、この理想の状態を手間なく毎日実現できます。

週末ドライバーは「出発直前に必要量だけ充電」が最善

週末にしかEVに乗らないドライバーの場合、「週末の出発直前に、その日必要な分だけ充電が完了している状態」を作ることが最も電池にやさしい充電スタイルです。平日は低いSOCのまま停めておき、出かける直前にだけ充電するスタイルが理想といえます。

「週末だけしか乗らない」という使い方でも、充電タイミングさえ工夫すれば電池の劣化を最小限に抑えられます。

保存するなら充電残量は低めがベスト

電池の観点だけで考えればSOC0%に近い状態が最も劣化しにくいですが、走行不可状態になるリスクがあるため、実用上はEVメーカーが推奨する10〜20%程度の残量を保つことが適切です。長期間EVを使わない場合は、充電しっぱなしの満充電状態を避け、適度な残量で保管することを意識しましょう。

毎日充電vs週1回|電池にやさしいのはどちらか

毎日充電vs週1回|電池にやさしいのはどちらか

1日の走行でSOCを約10%しか使わない使い方であれば、理論上は毎日充電するよりも週1回まとめて充電する方が電池にやさしい充電になります。毎日通勤に使う方なら「月曜の朝・出発直前に1週間分の充電が完了している状態」が最も電池への負担が少ない理想形です。

ただし実際には、毎日充電と週1回充電で劣化度の差は数%程度しかなく、過度にこだわる必要はありません。充電頻度よりも「いつ・どのくらいの充電量まで充電するか」の方が重要です。

「過度に意識しすぎない」がEVと長く付き合うコツ

スマホのように毎日充電する習慣が合っていれば毎日充電を、ガソリン車のように減ってきたら補充するスタイルが合っていれば週1回充電を、というように「自分のスタイルに合わせる」という姿勢で問題ありません。

専門家が言う「普通に使っていれば問題ない」というメッセージは、こうした柔軟なスタンスを後押しするものです。大切なのは正しい知識を持ちながら、無理なく続けられる充電習慣を作ることです。

「急速充電は電池に悪い」は本当か?専門家の見解

「急速充電は電池に悪い」は本当か?専門家の見解

急速充電を頻繁に繰り返すと劣化に差が出ることはEV業界でも認識されている事実です。しかし、旅先の高速サービスエリアでの急速充電や、充電を忘れたときに使う急速充電は「問題ない」ともいわれており、たまに使う程度であれば過剰に心配する必要はありません。

陸上競技で例えるなら「ダッシュの繰り返しはケガのリスクがあるが、ウォーキング程度なら全く問題ない」というイメージです。急速充電を一切使わないのが理想ではなく、使う頻度と場面をうまくコントロールすることが大切です。

普段はおうち充電(低速充電)を基本にする理由

急速充電はダッシュ走行のように電池に大きな負荷をかける充電方式であるため、日常的な繰り返し使用は避けることが望ましいです。一方、自宅でのゆっくりとした普通充電(低速充電)はウォーキングのように電池への負担が少なく、日常的に続けても問題ありません。

おうちEV充電サービスを利用した自宅での普通充電を日常の基本とし、急速充電は必要なときだけ利用するというメリハリのある使い方が理想的です。おうち充電を習慣化することが、電池の長寿命化への手軽で効果的なアプローチです。

急速充電を使わざるを得ない場面での心がけ

旅行や長距離ドライブの際に高速道路のサービスエリアで急速充電を使うことは、現実的かつ問題のない選択肢です。
頻度さえコントロールすれば、急速充電は快適なEVライフに欠かせないツールであり、「使ってはいけない」ものではありません。日常は普通充電、遠出のときは急速充電という使い分けを意識するだけで、電池を大切に使いながらEVライフを十分に楽しめます。

EV購入前の不安解消|「電池が劣化しそうで怖い」に専門家が答える

EV購入前の不安解消|「電池が劣化しそうで怖い」に専門家が答える

EV購入を検討している方が電池劣化を不安に感じる最大の理由は、「スマホと同じ電池だからそのうちダメになるのでは」というイメージに起因する部分が大きいでしょう。しかし実際には、EVの電池は8年・15〜30万km走行でSOH70%以上を保証していることが多く、スマホとは根本的に異なる長寿命な製品です。

「中古EVの価値はどうなるのか」という視点からも、電池の健康状態(SOH)が見える化・保証される取り組みが進んでおり、EVを資産として長く使う環境が整いつつあります。電池劣化への不安はEV購入をためらう理由にはなりません。

まとめ|おうちEV充電サービスで「電池にやさしい充電」を自動化しよう

まとめ|おうちEV充電サービスで「電池にやさしい充電」を自動化しよう

ここまで解説してきた内容をまとめると、EV電池を長持ちさせるために最も重要なポイントは「①積極的に乗る」「②満充電状態での長時間放置を避ける」「③出発直前に充電を完了させる」「④急速充電は必要なときだけ使う」「⑤長期保管時は充電量を適度に保つ」の5つです。

充電完了時間の設定・割安時間帯への自動シフト・充電スタンド検索など、電池にやさしい充電習慣をアプリひとつで実現できるのがパナソニックの「おうちEV充電サービス」です。IoT EVコンセントと組み合わせれば、充電タイミングや充電量をアプリで自動管理できるため、毎日意識して操作する手間なく「出発直前に充電完了」という理想の状態を日常的に維持できます。

「電池のことを考えなくてよいEVライフ」を実現する第一歩として、まずはアプリのダウンロードから始めてみましょう。

パナソニック おうちEV充電サービスの詳細はこちら

西川 慎哉

西川 慎哉
パナソニック エナジー株式会社
研究開発センター
要素開発4部

入社以来、蓄電・車載システムの電池制御の研究・開発に従事。 電池の科学的な知見と製品システムの運用までを含めた知見から、電池を使いこなす技術を提供。

小澤 瞳

おうちEVチャンネル MC 小澤 瞳
静岡県出身のフリーアナウンサー。

every.しずおかのキャスターなどを経て、おうちEVチャンネルのMCに就任。
趣味:ドライブ / 読書 / クラシック鑑賞 / 1人ディズニー
資格:普通自動車免許 / 茶道表千家習事

神谷 崇

おうちEVチャンネル編集長
神谷 崇
パナソニック エレクトリックワークス株式会社
配線システムコミュニケーションビジネスユニット

パナソニック株式会社にて、国内外のマーケティングコミュニケーション企画・制作の経験を経て、新規事業部門を兼務。

お役立ち情報一覧に戻る

EVを利用・検討するなら
“おうち電力プラン診断“で
電気料金を簡単見直し

プラン検索バナー
1分で電気料金をかんたん比較する

パナソニックの電気設備 SNSアカウント