進化めざましいLED
技も駆使して魅力的な展示に
展示物も空間も引き立てるノウハウ
美術館・博物館の数だけ最適な照明はある――。パナソニックで美術館・博物館に特化して照明を手掛けるチームは、そう考える。全国の美術館・博物館でLEDの導入が進んでいるが、パナソニックは単なるLED化を超えた光環境を常に提案している。提案の実現に向けては、各種実験やシミュレーションなどによる設計の裏付けから、現場における入念な最終調整まで、一気通貫のオーダーメイドで対応する。

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美術館・博物館の数だけ最適な照明はある――。パナソニックで美術館・博物館に特化して照明を手掛けるチームは、そう考える。全国の美術館・博物館でLEDの導入が進んでいるが、パナソニックは単なるLED化を超えた光環境を常に提案している。提案の実現に向けては、各種実験やシミュレーションなどによる設計の裏付けから、現場における入念な最終調整まで、一気通貫のオーダーメイドで対応する。
京都・宇治市の平等院が所蔵する国宝「梵鐘」は、日本三大名鐘の一つに数えられる。照明リニューアルを機に、最新の照明技術を駆使することで、1000年の歴史を通じて照らし出されたことのない、美と祈りの本質に迫る表情を浮かび上がらせた。
国宝「鳳凰」 :鶏冠や肉垂、胴体の魚鱗紋など、全身に施された繊細な意匠を
鮮やかに浮かび上がらせた
国宝「雲中供養菩薩」 :26体の木造菩薩像の個々の表情を浮かび上がらせつつ、
それぞれが雲に浮くような浮遊感を出した
梵鐘の演出照明で採用した「美光色LED」は、素材本来の色を引き立て、より自然な色に見せる特性を持つ。美光色LEDを用いて、器具の配置、配光などを入念に検討することで、光と影のバランスが取れた立体感のある光の演出が可能になる。
美光色LEDを採用したことで、梵鐘の表情が一変した
くすんで見える原因となる波長を制御
展示物の照明でこだわったのは、「細部の表現」と「空間の演出」の両立だった。細部の表現は、陰影を利かせる照明で、文様の立体感を際立たせた。同時に、背景の輝度を抑えた照明で、建築空間のなかで梵鐘が浮かび上がるような演出をした。実現に向けては、設計段階で3次元シミュレーションソフトを用い、最終的には現場で器具の取り付け位置や照射角度などを細かく調整した。
パナソニック独自の3次元シミュレーションソフトを用いて、
梵鐘と背景の光のバランスを初期段階で検討した
国宝「梵鐘」:地下を進む展示室へのアプローチからも、
正面の格子越しに梵鐘を見せる
国宝「梵鐘」:現場で様々なパターンを試行して
最適な照明を追求した
2016年12月、東京・新橋の「パナソニック 汐留ミュージアム」の展示室の照明が一新された。2012年にLED化していたが、美術館用LEDはめざましい進化を見せていることから、最新のLED照明と、美術館・博物館用調光・調色システムを導入。異なる企画や展示物に応じて、様々な光環境を幅広く生み出せる照明環境に生まれ変わった。
2列の天井ライン照明を個別に調整することで、任意の位置に必要な光の分布状態をつくることができる。
従来の方法と比べて、より効果的に作品を魅力的に見せることができる。こちらもタブレット端末で展示物を確認しながら調整できる。
左は上部中心の光、右は目線高さ中心の光。展示物に応じて配光を自由に変化させ、組み合わせることで、上部から下部まで均斉度の高い照明状態をつくることができる
従来、美術館や博物館の照明は、企画や展示内容が変わるたびに照明の調整が必要となる。汐留ミュージアムでは、簡単な操作で光環境を調整できるように、タブレット端末を用いた「美術館・博物館用 調光・調色システム」を導入している。展示室に合わせて設定する専用画面上の操作で、調光・調色が可能。展示物や展示空間を見渡しながら調整できるので、最適な照明環境をつくり出しやすい。
照度や色温度のわずかな違いによる、展示物の見え方の違いを体感しながら操作可能。最適な照度、色温度を調整できる。
美術館・博物館専用アプリケーションを用いて、展示室の平面図に照明が配置された画面を作成。器具を個別にタブレットで操作できる。設定状態はシーンとして記憶させておくことが可能