
LEDの普及とともに車両や駅の照明で躍進
LEDならではの技術でレトロ車両や木造駅舎も
鉄道照明の分野でパナソニックが躍進している。とりわけLEDが普及してきた近年の実績の伸びはめざましい。利用者の安全確保が至上命題の鉄道には、各種の厳しい技術基準や規格などが定められている。当然、車両や駅施設などの照明も、それらをクリアしなければならない。そんな鉄道分野で、パナソニックの急成長を牽引するのは、鉄道の世界を熟知する少数精鋭チームだ。強みは高品質なLED製品だけではない。照明計画の提案、検証手法、リアルCGなど様々な技術とノウハウを駆使して、多様化するニーズにも応え、安全で魅力的な車両や駅施設の実現を後押しする。
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今年末に開業90年を迎える東京メトロ銀座線では、2012年以来、開通当時の旧1000形をモチーフにした1000系に車両を入れ替えてきた。計40編成のうち、最後に製造した2編成は、外装だけでなく、内装デザインも旧車両をイメージさせる特別仕様。照明では、かつて銀座線にあったポイント通過時の瞬間的な室内消灯を再現する機能や、その際に点灯していた予備灯も備え、室内灯は白色から電球色に。切り替え可能な調光・調色タイプとなっている。

銀座線に登場した特別仕様の車両は、照明にも趣向を凝らしている。旧1000形車両に設置されていた予備灯の外観を、実物の3Dスキャンなどで忠実に再現し、LED化した。室内照明は、一般車両と同じ意匠のまま調光・調色タイプに変更。通常運行時は色温度4000K、イベント運行時には、内装の真鍮色や木質感を引き立てる色温度2700Kに切り替えることができる。先頭車両の前灯も一般車両の2灯から、かつての1灯仕様で再現した。
照明ソフト技術
試験設置の検証でLED化による車両空間を最適化
銀座線1000系車両はLED化の先駆けだ。2010年の最初の導入検討時、「まぶしい、指向性が強い」というLEDのイメージを払拭するために、照明実験室における検証や、旧01系車両を用いた試験設置評価によって仕様を決定した。建築照明の評価で実績のある「官能評価」や、空間の明るさ感を可視化できる「輝度分布計測」などを取り入れて、照度以外の課題を解決し、蛍光灯以上の車両空間を実現した。
官能評価結果(7項目 被験者14名)。座位で評価した
車両空間の輝度分布計測(左が蛍光灯、右がLED)

2016年12月、一日に約2万人が利用する東急池上線の戸越銀座駅が、開業以来90年ぶりの全面リニューアルを終えた。建て替えたホーム屋根は、東京・多摩産の木材を使った個性的なデザイン。照明計画では、ホームの安全を確保しつつ、木質空間を演出する手法を、パナソニックのハードとソフトを駆使して考案した。

木材を組み上げたホーム屋根の独特の意匠を引き立てるため、一般的なライン全般照明ではなく投光照明を採用した。照明器具の存在が分かりにくく、かつ駅利用者がまぶしさを感じないように照明器具を木の架構間内に設置。ホーム主照明には、色温度3500Kの広角配光のスポットライトを、壁面広告用照明には、色温度4000Kの中角配光のスポットライトを配置した。2種類の色温度・配光を使い分けることで、木材ならではのぬくもりのある空間を演出しつつ、駅利用者の安全も確保している。
照明ソフト技術
イメージしにくい完成形をリアルCGで検証
木材でホーム屋根を架けた駅は珍しく、スポット照明もなじみが薄い。そこで、照明効果を具体的にイメージできるように、計画時からリアルなCGを作成して検証やプレゼンテーションに活用した。ほぼCGの通りに完成しており、その精度の高さが示された。
リアルCG
現場写真