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LIGHTING STYLE Vol.6
01 ヤマハ銀座ビル

Lighting Method(ファサード)

難易度の高い照明計画に最適なリアルCG 設計段階でイメージをリアルに具現化


ブランドショップがひしめく銀座の街でヤマハらしさを建築と光で表現

ブランドショップがひしめく銀座の街で、伝統と革新を融合させたヤマハらしさ、音と音楽のイメージをどの様に表現するか。
あわせて、周辺環境と建物の関係性、情報発信拠点としての機能をもたせることをテーマにプロジェクトは立ち上がった。
ホール、カルチャールーム、ショップの3つの機能を備え、「音楽と時の流れを広いファサード全体で表現し、街と面して響きあう」。そんなコンセプトのもと、計画は進められた(1)

(1)外壁図面

(1)外壁図面
ガラスカーテンウォールのパターン


長年親しまれてきたヤマハ銀座の"新しい顔"とは

ファサードはケーブルグリッドガラスカーテンウォールという最先端テクノロジーに、金箔という日本的な伝統素材を組み合わせた今までにない建築。内部の照明がカーテンウォールを通して豊かな表情を演出する照明計画となっている(2)
銀座中央通りに面したこのファサードは一辺が950mmの正方形のガラス約1500枚で覆われ、ランダムに配置された乳白色や透過性の異なる金箔合わせガラスが、音楽の要素であるリズム感や、揺らぎ、移ろいといった時間的な変化を表現、「伝統と革新の融合」と同時に、もう一つのコンセプトである「音・音楽」を視覚的にデザインしている。
照明は合わせガラスと壁面の間に光源を設置し、合わせガラスを透過した光と壁面の光が2重のレイヤーとなり奥行き感を生んでいる(3)

(2)グリッドガラス

(2)グリッドガラス
950mm角で約1500枚のガラスグリッドを使い、乳白色と濃淡の金箔ガラスパターンの
組み合わ せで、音の波を表現、豊かな表情を作り出している

(3)ダイアゴナルケーブルグリッドシステム

(3)ダイアゴナルケーブルグリッドシステム
ガラスカーテンウォールは躯体から600mm持ち出して支持し、
ガラスを固定する束材に照明を設置。吹抜部分はステンレスケーブルで支持し、
内部照明によって発光する


リアルCGとモックアップで照明計画を具体化

銀座中央通りに面した高さ66m、幅20mのファサードを光でどのように演出するか。そこで原寸大モックアップと、リアルCGによるシミュレーションで光効果を確認しながら照明設計を進めた(4)
特にリアルCGの完成予想シミュレーションは、緻密な照明用件においてその威力を発揮した。コンピュータには計算に必要な光源の情報はもちろん、全ての素材データ、ガラスの反射率や透過率など建築に関する情報も入力。設計条件にあわせて質の高い光空間を再現した。
こうした徹底したシミュレーションの結果、壁面に反射させた照射光が均一且つ奥行き感のある照明になることが事前に確認できた。

(4)原寸大モックアップとリアルCG

(4)原寸大モックアップとリアルCG
原寸大のモックアップで緻密な検証を行いながら、リアルCGを活用し、ファサードの照明の仕様を具体化していった

Lighting Method(ヤマハホール)

ヤマハホールの照明計画

間接照明を組み込んだホールの壁面も、リアルCGとモックアップを使用して検証(5)。空間全体の全点灯状態、調光状態など、何パターンものシーンをリアルCGで確認しながら、調整を行った(6)。またホールの高さにあわせた4m幅のモックアップ制作により、ウォールウォッシャの光の影響で微妙に影が生じた際の対策など、パナソニック株式会社のもつノウハウを最大限に活かしながら問題を解決していった(7)。言いかえればモックアップの結果だけにとどまらず、実際の環境の中で光の影響などを考慮し、豊富な知識と経験でリカバリしていった。

(5)原寸大モックアップ

(5)原寸大モックアップ
ホールの実際の高さに合わせた巨大なモックアップを作成し検討を重ねた

(6)点灯パターンのシミュレーション

(6)点灯パターンのシミュレーション
何パターンもの光の出方を想定し、その度にコンピュータに計算させ、リアルCGで確認しながら調整した

(7)目地のスリットの影がでている

(7)目地のスリットの影がでている
ウォールウォッシャの光の影響でスリット部に影が生じたが、事前検証で問題を回避できた

Cross Talk

音楽を感じさせ、時間の流れを表現する光の効果を、建築と照明が一体となって追求していった。

白井 大之様

白井 大之様

株式会社 日建設計
設計部門
設計部長

鈴木 健悦様

鈴木 健悦様

株式会社 日建設計
設計部門
設計室主管

小林 和夫

小林 和夫

照明デザインEC

・照明計画の基本的な考え方は光で音楽的なイメージをどう表現するかということ

白井様: 「伝統と革新」というヤマハらしさ、音と音楽を空間的にどう表現するか。銀座の街と建物の関係性、情報発信拠点としての機能も欠かせません。「ホール、音楽教室、店舗の3つの機能を内包した吹抜けの大きな3つの空間が、街と響きあう建物」を目指し、具体化していきました。意匠的にはダイアゴナルケーブルグリッドのガラスカーテンウォールという最先端テクノロジーと、金箔という日本的な伝統を併せ持ち、さらに印象派の絵画のような時間的な光の変化がテーマでした。時とともに表情が変わっていくファサードが、音楽を感じさせる。そういう意味で、夜のライトアップの表情も重要となりました。

・ファサード照明の成功の鍵は金箔ガラスをきらめかせる光の出方を入念に検証

鈴木様: 銀座中央通りに面した立地で間口20m幅のファサードは、百貨店以外ではないでしょう。その立地環境を活かしてヤマハのブランド力を視覚的にアピールしたいと考え、照明は当初、斜め45度のグリッドになっているガラスの一つ一つに、ハロゲンランプを付けることを計画していました。
そこでパナソニック株式会社の協力を得て、実際にどう照らせばいいかをモックアップ実験で検証すると同時に、リアルCGで全体がどう見えるのかシミュレーションしました。光をよく拾うという金素材の性質を踏まえ、慎重に確認しながら進めましたが、非常に正確なシミュレーションで驚かされました。
小林: 計算に必要なすべての素材データ、ガラスの反射率などもコンピュータに入っているので、ほぼ忠実に反映することができます。竣工後、実際と比べるとリアルさがよく分かります。
白井様: ガラス面と躯体の間の600mm間隔に仕込んだ照明により、壁を照らしている光がガラス越しに外から見えるわけです。さらに乳白ガラスの部分は、その光を受けてガラス自体が光っているように見えます。奥の壁とガラスが2重のレイヤーとなって面白い光の効果が生まれ、奥行き感をだすことができたと思います。

・ホール照明の成功の鍵はリアルCGとモックアップ、ノウハウの結集で実現

鈴木様: ホール照明もリアルCGシミュレーションとともにモックアップを作って、パナソニック株式会社と一緒に検証を重ね、緻密な調整を行いました。
小林: シミュレーションのCG画像は、全点灯状態、調光して雰囲気を作った状態など、何パターンもの光の出方を想定し、その都度コンピュータに計算させて作成しています。
原寸大モックアップもホールと高さを合わせ、約4m幅のホール側壁を作りました。天井裏に照明を仕込む角度なども実際に光を当てて実験しています。角度によって微妙にできる影や隙間に光の筋が入らないようにするなど、細かい点まで事前に検証しました。
鈴木様: パナソニック株式会社には今までの経験やノウハウが豊富にあります。だから、モックアップではこういう結果がでたが、実際には他の環境光が入るので違うはずだというような、経験上から判断した的確なアドバイスが非常に役に立ちました。コンピュータによるシミュレーションと実際のモックアップ実験を同時に行えたことで、成功への道が開けました。