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SIA 豊洲プライムスクエア | LIGHTING STYLE Vol.6 | P.L.A.M. | 照明設計サポート製品を探す

LIGHTING STYLE Vol.6
06 SIA 豊洲プライムスクエア

Lighting Method(1階/基準階)

エントランスからワークプレイスまでの動線を、心地よい明るさ感の揺らぎで演出。

シークエンスに自然なグラデーションとメリハリを持たせた照明空間

「SIA豊洲プライムスクエア」は都心から程近い晴海通りに面しており、オフィスワークをサポートする諸機能と周辺に調和した環境を持つ、アメニティ型オフィステナントビル。外部の自然と一体となった開放的なエントランスホールからワークプレイスに至る動線においては、建築素材の変化や明るさ感の抑揚を感じながら、変化と連続による心地よい揺らぎが感じられる演出を試みた。

空間と照明の基本コンセプト

空間と照明の基本コンセプト
エントランスからワークプレイスまでの自然なつながり
●移動空間と溜まり空間のメリハリのあるつながり ●パブリックからパーソナルへのグラデーション


共用部は床面照度を抑えつつ、明るさ感を確保してリラックスできる空間に

センターコア方式をとった基準階共用部では、自然光が入らない環境の中、床面照度を抑えることでホテルのようなリラックスした雰囲気をつくり、同時にLED照明を使うことで省エネにも寄与することを意図した。照度を落としつつも心地よい空間にするために、色温度を3000Kに統一したほか、ダウンライトではなく壁や天井を照らすことでLEDのグレアを感じないような手法を採用した。
このような手法は日本の一般的なオフィスでは例がなく、クライアントへの説明には客観的な数値が必要であったため、パナソニック株式会社が提唱する「明るさ感指標Feu※」を採用した。
※Feuとは、人の空間観察時の視野に着目することで、人の感じる明るさ感を定量化したパナソニック株式会社独自の指標。

1階エレベータホール

1階エレベータホール
天井には蛍光灯ライン照明とダウンライトで直線的に照らし上げている。
左手エントランスホールからの通路は天井高を抑え、暗めにすることで空間にメリハリをつけている。写真提供:清水建設


明るさ感の体感とFeu値の実測により合意形成

Feuはパナソニック株式会社独自の新しい基準であるため、数値と実際の明るさが結びつきにくいので数値ごとの明るさを実感していただく必要があった。そこでパナソニック株式会社の「Feu体感ルーム」で様々な明るさ感を体験していただいたり、クライアントが入居するオフィス共用部のFeu値を実測することで、Feuをより深く理解いただき、今日の照明手法の実施に了解を得ることができた。

基準階エレベータホール

基準階エレベータホール ※2
天井を照らすことで効率的に明るさ感を得ている。

基準階エレベータホールと廊下の水平面照度分布図

基準階エレベータホールと廊下の水平面照度分布図
計算面高0m。反射率:天井50%、壁30%、床10%。

基準階廊下

基準階廊下 ※1
壁面に仕込まれたLED照明が天井と壁面を照らす。


自然光と人工照明が一体となるトイレ空間

唯一自然光が入るトイレ空間では、外からの光を効果的に使う配慮がなされている。夜の徐々に暗くなる外光や昼の明るい光など、自然の光に人工光が美しく混ざり合うように間接照明のみで構成している。他の空間との連続性をつくりながら、昼夜や天候で変化する光によりさまざまな表情の変化が感じられる空間となっている。

竣工後実写:基準階男性トイレ

竣工後実写:基準階男性トイレ ※1

LSR:Feu9.5

LSR:Feu9.5


Lighting Method(商業施設 エントランスホール・廊下)

LSRによる照明計画シミュレーション (商業施設 エントランスホール・廊下)

高さと奥行きを強調した商業施設エントランス照明

商業施設エントランスの吹抜け空間では、風除室の天井まで伸びる壁面間接照明が、象徴的な光のゲートを形成。内部は店舗サインと一体となった壁面照明と階段の手摺照明、天井からのウォールウォッシャなど鉛直面主体の照明が、奥に配置された店舗への誘引効果を高めている。
複合的な照明による演出効果や明るさ感は、LSRとFeuにより検証した。

竣工後実写:商業施設エントランスホール ※2

竣工後実写:商業施設エントランスホール ※2

LSR:Feu 14.0

LSR:Feu 14.0


ランダムに連続する2種類の仕上げ材と照明のラインが商業空間の華やかさを演出

2階商業施設の廊下は、天井から壁に内照パネルが配置された建築化照明によって構成されている。床面照度はそれほど高くない反面、天井や壁の仕上げには白い素材や反射する素材を使用しているため、視覚的な明るさが期待できた。そこでLSRにより視覚的な演出効果を確認しながらFeuと照度を併用した検証を行った結果、クライアントから提示された300ルクスという目標照度よりずっと明るく感じる空間となった。

竣工後実写:商業施設が面している2階廊下 ※2

竣工後実写:商業施設が面している2階廊下 ※2

変化がありつつも、他の空間との連続性がつくられている。

変化がありつつも、他の空間との連続性がつくられている。


Cross Talk

オフィス共用部は、水平面の照度だけでなく天井・壁・床の視覚的な明るさもコントロール。 魅力的な視環境をつくると同時に省エネルギ

牧住 敏幸様

牧住 敏幸様

清水建設株式会社
設計本部
プロジェクト設計部2部
グループ長

代田 哲也様

代田 哲也様

株式会社フィールドフォー・
デザインオフィス
グループリーダー

田中 稔

田中 稔

照明デザインEC

・基準階オフィス共用部における シークエンスのメリハリをFeuで検証

牧住様: このプロジェクトは専有部面積をできるだけ確保するために、共用部を建築のセンターに固めたセンターコア方式としました。自然光の採り入れができないという条件の中で、むしろ照度を落として節電をしつつ、ホテルのようにリラックスできる空間にしようと考えたのです。低照度でも陰気にならないよう色温度を3000Kに統一しつつ、さらに省エネ効果のあるLED光源を採用しました。LEDの輝度が高いこともあり、ダウンライトではなく光源を隠し天井や床を間接光で照明することで落ち着いた雰囲気をつくりました。
Feuを使うきっかけは、設計当時まだ光束が低かったLEDを効率よく使おうと思ったことでした。わずかな光でも、白い壁に照明を当てると効果的に明るさ感が得られることは経験的に知っていましたが、照度的に大変低い数値になってしまいます。クライアントに説明するためには、客観的な数値が必要になるため、パナソニック株式会社さんに検証を依頼しました。
田中: 特に間接照明を組み合わせた計画の検証ということで、3次元のビジュアルで照明効果をシミュレーションできる当社独自のソフトLSRを使用し、Feuの数値による検証と併用しました。またFeuの数値を実感していただくために、当社の「Feu体感ルーム」にて様々な明るさ感を体感していただきました。
さらに、クライアント様が入居されているオフィスビルのFeu値も実測しました。普段感じておられる明るさ感と設計段階の明るさ感をFeu値で比較していただくことで、設計への理解を深めていただきました。
牧住様: このFeuの考えに基づいた数値のバックデータは、クライアント側でも社内コンセンサスが取りやすかったと聞いています。結果的には数多くの場所を測定・比較して、安心していただくことができました。
予め多めの照明を配置しておいて、不要であれば後で消灯するケースもあるようですが、きちんとした検証をしておけば、必要最小限の照明計画が行えます。
また、外光が入るトイレでは、自然光を室内に取り入れ人工光とスムーズに混ざり合う空間を意識しました。その実現のためにトイレ内もすべてシームレスランプを使った間接光で構成し、不要な影が出ないマイルドな空間となっています。この照明効果の検証にも、LSRとFeuを活用しています。

・商業空間の賑わい創出にFeuを活用

代田様: 店舗廊下に関しては、天井から壁にかけてのL字型パネル照明を不規則なピッチで連続させています。天井には照明以外にも様々な設備が配置されるため、ランダムな配置によりそれらを避けながら、光の配置に変化を与えることで商業空間としての賑わいを演出しています。仕上げには反射率の高い素材を使ったので、見た目の明るさ感と床面照度の違いが出ることが予想されました。そこで照度とFeuを併用し、検証を行いました。その結果、照度以上に明るく感じられる空間となり、クライアントにも満足いただくことができました。Feuは内装材の色や反射率を反映するので、インテリアの色彩計画の参考にもなりました。
また、高さ9.1mの吹き抜け空間をもつ商業エントランスホールでは、壁面へのウォールウォッシャーや手すり照明、店舗サインを兼ねた壁面照明など、鉛直面の明るさを重視した照明計画を行いました。ここでもFeuを用いて明るさ感にメリハリを与えることで視線誘導効果の高い空間を実現することができました。

・内部との連続性をもつランドスケープの夜景

牧住様: 外構照明では、屋内と同様の明るさのメリハリを屋外にも展開し、集合体の夜景において連続性を感じる空間を意図しました。
田中: グリーンガーデンでは、特注によるポール型多灯スポットを採用していただき、芝生上にランダムな光だまりを演出することで、ランドスケープを生かした印象的な夜景となりました。
牧住様: 豊洲は「住む」「働く」「遊ぶ」人たちが混在するエリアでもあり、夜景の魅力づくりだけでなく隣接するマンションへの光害対策にも配慮しています。樹木へのライトアップにおいても幹の下部を中心に照らしたり、枝葉の上部を照らすなどして、エリア毎に照明手法を使い分けて演出効果と光害対策を両立しています。。