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環境省が推進するチャレンジ25地域づくり事業で採択された「スマートモデル自由が丘駅 あかりプロジェクト」の一環として、駅構内の照明をすべて次世代照明に一新、ホーム、コンコースやバックヤードには高効率 LED照明器具を、シースルー改札など2カ所に有機EL照明器具を設置した。 また、さらなる省エネを実現するために、ホームにはスケジュール制御と各種センサを組み合わせた高機能照明制御システムを導入。コンコース照明では、人間の生体リズム(サーカディアンリズム)をイメージし、LED照明の色温度・明るさを自動制御し、「快適とエコ」 を両立する。
タイムスケジュール制御による自動点灯・消灯・調光と明るさセンサによる自動照度一定制御を実施。荒天時など日中でも暗い場合は自動点灯が可能。また、人感センサによるホーム端の不在時減光制御も併用し、適切な明るさに自動制御しつつ、大幅な電力量削減を実現する。 まだ実施されていないが、列車接近信号を受け明るさを変化させることも可能となっている。 照明設計にはFeuを活用したシミュレーションを実施し、専用器具の開発も行った。
人感センサで調光制御(実施中)
利用者が不在の時は、少し調光して省エネ。
混雑時には、センサで混雑状況を検知し明るくする。
電車の進入に合わせて調光制御(機能あり 未実施)
電車がホームに不在の時は、少し調光して省エネ。
ホームへ進入前に信号を受けて明るくする。
Feuの活用
ホーム先端部を明るくすると共に、ホーム中央や後方の壁や時刻表、ポスターなど、鉛直面を照らす配光にして、建築の工夫により、ホーム空間の明るさ感が、改修前のFeu4からFeu7まで向上。
人間の生体リズムに合わせた
照明制御で快適とエコを両立
コンコース照明の明るさと色合いを自由にタイムスケジュール制御できる調色照明システムを導入。サーカディアンリズムと呼ばれる人間の生体リズムをイメージして、LED照明の照度・色温度を自動制御。朝はすっきりとした白を基調に、夕方以降は温かみと落ち着きを感じられる暖色系に。シーンに合わせた駅のあかりを演出することで、快適とエコの両立を目指した。
本件で実施している制御
?@ タイムスケジュール制御
年間ソーラーカレンダータイマーにより1日・1週間・月間・年間、特別日など、きめ細かいスケジュール点滅設定を実施。
?A 自動照度一定制御
明るさセンサにより、昼光の明るさに応じ調光制御、夜間は設定照度に自動調整を実施。初期照度補正により初期の余剰電力を削減。
?B 不在時減光制御
人感センサにより、不在時は下限設定照度に自動調光(減光)するよう実施。
?C スケジュール調光制御
コンコースの調色(色温度可変制御)をスケジュール調光制御により実施。不在時調光制御を併用し、各時間帯で色温度を保ったまま下限設定照度になるように設定。
駅施設の一般照明として実用的設置は日本初※といえる有機EL照明を設置。 有機EL照明は、非常に薄型で輝度の低い面発光光源のため、蛍光灯に代わる光源としても汎用化への期待が高まっている。現時点でLEDを上回る性能にはなっていないが、平成25年度には、さらに性能向上した有機ELに置き換える計画になっている。
照明電力50%削減の目標を達成
駅全体で照明全般の電力使用量は約50%を占めている。それを半減させることで、駅全体で25%の電力使用量削減を目指した。具体的には、今回のプロジェクトにより駅全体で40万kWh /年の電力量を削減、CO2排出量では約131t-CO2 /年※の削減を目標とした。
2012年2月に照明器具をLEDに全面リニューアル。4月からタイムスケジュール機能を稼働させ、6月からは各種センサ制御も稼働させて本格的な照明制御運用を開始した。2012年11月のデータと比較して6月より照明全般で約50%の削減を達成し、以降も順調に推移している。
今後蓄積したデータを基に制御の設定を調整し、さらなる省エネを目指している。
橋本 聡氏
東京急行電鉄株式会社
鉄道事業本部 電気部
電力課(設備担当) 課長補佐
阿部 穂嵩氏
東京急行電鉄株式会社
鉄道事業本部 電気部
電力課 主事
国が推進している環境政策と私たちの思いが一致し、地域の中心として影響力の大きな自由が丘駅を対象として、先進的な省エネ手法を導入することにしました。照明をLED化するのは今では当たり前です。さらにLEDで何ができるかが重要でした。そこで、これまで行われていなかった駅舎での照明制御の実証実験をすることにし、ホームではタイマーなどで一方的に制御するだけでなく、センサを使ってアクティブ制御も行うことにしました。 コンコースの調光・調色は蛍光灯でも可能でしたが、その場合色の違う2種類の照明が必要でした。LEDであればそれを1種類の照明で行うことができます。これまで難しかったことが、LEDによって無理なく快適に実現できることを実感しました。今後は今回の取り組みをモデルケースとして、他の駅への展開も進めていきたいと思っています。 また、有機ELについては、実用設置をすることで汎用化に向けた検証ができればと考えています。
森 司
エンジニアリング綜合センター
東京照明EC
計画段階で詳細にシミュレーションした結果、照明の消費電力量は約50%の削減が可能と想定していまして、これまではほぼ想定通りの結果が出ています。当社にとっても駅舎としては初の試みが多かったので、施主様と互いにアイデアを出し合いながら実現へ向けて進めました。 蛍光灯は、過度の点滅による寿命への影響や気温が低いと調光がうまくできないという課題がありましたが、光源がLEDに変わったことで、それらの問題がクリアできました。今回得られたデータによってLEDの可能性がますます広がっていくことを期待します。