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大阪のビジネス・文化の中心、中之島に新たなランドマークとなる中之島フェスティバルタワーが竣工した。高さ200mの建物にはオフィス、商業施設、そして世界の音楽家から賞賛されたフェスティバルホールが入居する。四つ橋筋を代表する建築として親しまれてきた朝日新聞ビル、大阪朝日ビル、新朝日ビルの意匠を受け継ぎ、さらに進化させることがプロジェクトのテーマとなった。照明に関しても、旧フェスティバルホールの記憶を受け継ぎながら、これからの時代にふさわしいものを追求し、省エネでありながら豊かさを感じられる光環境とは何かを考えた。
照明デザインコンセプト
光が影の中に確かな存在感を示し、
訪れた人を「もてなす」
光は闇の部分があって、はじめて強い存在感を示す。明暗をつけることにより、訪れた人にときには期待感を高め、ときには光が動線を明示する等、光の効果を高める。
それは、音楽の中での静寂と音色の関係にも通じ、ホールのイメージにも合致する。
建築の素材を感じさせる光で、
建築空間がひとつの照明として存在
柱や壁面のレンガ、石などの建築素材を照明することにより、空間の質感を高める。光が建物と共鳴し、全体的なヴォリュームの中で壮大なイメージをつくりだす。
華やかさと落ち着きのある光で、深みを創出
オーケストラが高音から低音までのシンフォニーであるように、建築空間をきらめき感のある華やかな光とやわらかく落ち着いた光で演出することで、単調ではない深みのあるイメージを奏でる。
具体的照明手法
配光制御されたLEDにより明暗をつくる
LEDの指向性のある光で素材に適度な影をつくる
高輝度のLEDを見せる部分と建築を照明する部分を使い分け、輝度の高低差をつくる
光だまりを動線にしたがって計画し、人を意識させずに安全に導く
光のシークエンス
高輝度のLEDを見せる部分と建築を照明する部分を使い分け、輝度の高低差をつくる
エントランスホワイエのシャンデリア
デザインは継承し、新たにLEDの光で命を吹き込むために、段階的にモデルでの検討を行った。
メインホワイエのシャンデリア
吹き抜けの大空間が活きるように光の配置を検討。
江副 敏史氏
株式会社日建設計
フェロー役員
デザインフェロー
テーマは「継承と進化」です。敷地は中之島という大阪のビジネスの中心ですし、水都大阪を表すところでもあります。風格ある伝統的な建物もある中で、その中之島の雰囲気に合った建物にしなければならないと思いました。照明では、シャンデリアのように光そのものを見せることと、カーペットの赤色や煉瓦の凹凸など素材をしっかり見せることをうまく組み合わせたいと思ったのです。光の抑揚、そしてシークエンスには配慮し、エントランスは暗めに、そして階段の先にはシャンデリアが見える。エスカレーターでは明かりを抑えて、メインホワイエに出るとシャンデリアが空間に広がります。シャンデリアは光を際立たせたいので光る部分以外はシンプルにと考えました。ホワイエのシャンデリアは星空をイメージして、立体的、三次元的にバラバラに配置しています。吊る縦のラインをできるだけ細く、見えなくして、粒だけが光るようにしたいと思いました。制作の過程はなかなか大変でしたが、今回一緒につくって完成したものを見て、大変気に入っています。LEDは光源が小さく、器具も小さくすることが可能で、光だけを表現できるため、設計者にとってありがたい光源です。また、その光の輝度が高くてきれいだと思います。あまり熱も出ないというよさもある。寿命も長いので、お客様も受け入れやすい光源ですし、使いやすい光源だと思います。現時点では既存の器具の光源だけをLEDに替えることが多いようですが、LEDに合った器具ができればもっと細く小さく本当に光の粒だけが空間に広がるということが可能になるんじゃないかと思います。設計者としては、照明の「器具」は目立ってほしくない。光だけが見えるか、光源は見えずに照らしている部分だけが光るか、どちらかが理想です。建築家は照明の専門家ではありませんから、この辺りを明るくしてほしい、この辺りに光を当ててふわっと全体的に広げたいといった抽象的な要求をたくさん言ってしまいます。それを具体的にどうするかという段階で、パナソニックのような専門の方々の力を借りることになります。我々の頭の中にあるイメージだけではどうしようもない技術的な部分を助けていただきたいと思いますね。
山本 武志氏
株式会社日建設計
設計部 主管
照明に注目させるところと、器具の存在感を消して建築自体が照明器具になるように意識したところの使い分けがポイントです。プロジェクト初期から發田さんに協力してもらい、中でも特注照明は数々の実寸モックアップと、パナソニックの大規模な実験施設での確認がクライアントとの共通認識を得る上で大いに役立ちました。また、性能や安全性の問題も事前にすべて洗い出してくれるので、安心感がありますね。
發田 隆治
ソリューションライティング
デザイングループ
光の専門家である私たちは照明という楽器でこのプロジェクトの指揮者の想いをオーケストラのように美しく奏でたいと思い進めました。きらめきのある華やかな光から、やわらかく落ち着いた光までLED照明と建築空間が一体となって、さまざまな表情をつくり出すことができます。LEDは少ない電力でも今まで以上に豊かな光環境をつくることができ、装飾照明としても建築照明としても大きな可能性を持っています。