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鹿島KIビル6階オフィスの半分のエリアを設備改修するプロジェクトで、既存オフィスビル改修の分野でのZEB実現に向けて対照比較を行う。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「省エネルギー革新技術開発事業(電力需給緊急対策)」の実証研究としても採択されている。
空調・照明の改修を行った上、人の密度を検知する人感センサーによる空調照明制御システムや、太陽光発電パネルとリチウムイオンバッテリーを組み合わせた電力使用管理システムの運用などを実施。電力使用量を平均的なオフィスビルの半分に抑える。グリッドシステム天井としては初のFeuアップ照明器具を開発。器具のコンセプト設定から特注器具の検証、製作までパナソニックが一貫して携わった。
タスクアンビエント照明方式のため、照度を下げる一方、空間全体の明るさ感を上げるコンセプトで開発された。打合せコーナーには調光・調色可能なLED照明を設置し、目的に応じて色温度を最適化する。
改修後はFeuの実測も行い、改修の効果を数値で検証すると共に、さらなる省エネへ向けた取り組みも行っている。
1 スケッチ
光をパネルに当てることで、天井の高輝度な部分の面積が増え、空間の明るさ感がアップすることを狙った。
2 検証
実際の器具を使ってパネルの位置や角度を検討し、最適な位置に調整。パネル面に光のムラはないか、色温度変化はスムーズに行えるか、調色した場合の効果などを確認した。
3 図面・試作
安全性や施工性に配慮しながら図面を製作。
4 完成
改修後のFeuの実測を行うことで、明るさ感を具体的数値で確認。たとえば、改修前のFeuが12.7であったオフィス空間をLED+Feuアップ照明にすることでFeuが17.5まで上昇。必要な明るさ感を確保しながら、省エネが実現できた。
上村 健氏
鹿島建設株式会社
建築設計本部
設備設計統括グループ チーフエンジニア
当社は2020年に建物のZEB化一号を完成させるという目標があります。今後のマーケットを考えると新築ではなくストックの改修が非常に増えているので、ZEB化に向けた改修をやってみようということでスタートしました。また、この建物の6階は一般的なオフィスと基本的には同じ形状なので他にも展開しやすいのではないかという予想もありました。改修にあたってはいくつかのメーカーから提案をいただき、その中でパナソニックが一番私たちと方針が近く、今回使っている高度な照明制御でも確かな技術力を持っているのでお願いすることにしました。
空間の明るさ感を数値で表すFeuについては私たちも関心を持っており、その考え方を設計に生かすこともあります。今回は厳しいスケジュールの中、効果的にFeuをアップできる器具をつくっていただきました。打合せスペースでは、夜のフランクなミーティングの時は3000Kにするなど、人によってさまざまな使い方がされているようです。グリッドシステム天井とLEDのいずれも現在主流となっているものを使って明るさ感をアップさせているので、今後一般的なオフィスにも展開が可能だと思っています。
浅井 隆則
東京照明EC
改修によって照明に必要なエネルギーを減らすことと、省エネを行っても空間が暗くならないようにすることが求められました。Feuアップ用パネルをどこに付ければ最適な広がりを持って天井面が照射されるかを、実際の器具を使って検証しました。
こちらのオフィスは以前からタスクアンビエント照明を使われており、震災後はアンビエント照度を300lxというかなり低い数値に設定していました。今回もその数値を維持しながら空間の明るさ感はアップさせています。エネルギー消費量も3W/m2と、改修前の半分以下に抑えることができました。