夏場の暑熱ストレスによる搾乳量減少や受胎率の低下。
飼料高騰、白血病などの疾病、悪臭拡散による地域住民の苦情、作業の省力化など、畜産業はさまざまな課題に直面しています。
この中でも乳用牛は暑さによるストレスに弱いため、酪農経営では夏期の搾乳量減少が大きな問題となっています。
暑熱ストレスは搾乳量の減少だけでなく、受胎率の低下や廃用牛の増加など、大きな悪影響を与えています。地域によっては搾乳量が6月頃から低下し、残暑の影響から11月頃まで乳量が落ち込む生産者もあります。この夏場の乳量低下は10%を越えるともいわれており、酪農経営を圧迫する大きな要因となっています。
現在一般的に採用されている牛舎は、外部との間に壁のない開放型と呼ばれている形態が主流。多くの牛舎は換気と牛への暑熱対策として牛舎天井にファンを設置して送風していますが、開口部は多いものの、ファンの届かない部分では空気が滞留し、温度ムラや悪臭が発生。また、開口部が多いため野鳥が侵入して伝染病を媒介する可能性もあります。
富士山麓の牧場を父から継承するにあたり、宮島氏は老朽化した牛舎の建て替えを計画。安定した搾乳量が確保でき省力化が図れる、新しいスタイルの牛舎を探されていました。
「アメリカのホームページで、全体を壁で囲んで換気扇を横断型に配置している牛舎を見つけました。これなら牛の暑熱ストレスも軽減できるのではないかと考え、渡米して視察にも行きました」と宮島氏は語ります。